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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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東の国1-染闇

 サクラは単独行動です。

 他の皆さんも動きます。


 フジがアメシスを呼び、アメシスがカルサイとドルマイを呼び、三神に依って、アオとサクラは浄化された。


サクラは、心の中で眠るアオの手を握った。


(カルサイ様、兄は今、心に大きな傷を負った過去まで、引き戻されております。

どうすれば目覚めさせる事が出来ますか?)


【自然に目覚める時を待つのが最善ですが……

そうは参りませんよね?】


(はい。体の方も闇化が進んでしまいますので、早急に奪還致したく存じます)


【きっかけだけは与えておきます。

あとは、安堵させるか……奮い立たせるか……

その心の傷を、アオ自身が塞ぎたいと思うよう、動かさねばなりませんが……】


(ありがとうございます、カルサイ様)


【アオの記憶よ、目覚めなさい。

その蓋を押し上げ、アオの心に戻りなさい】


アオの心を光が包む。


光がアオに吸い込まれ、アオが目を開けた。


(アオ兄? だいじょぶ?)


(あ……ああ、サクラか……ここは?)


(俺の中だよ)


(サクラの……中?)


(うん。ゆっくり思い出して、ね?)


(俺は――)




♯♯ 馬車 ♯♯


「では、アオとサクラは暫く戻らぬのか?」


「ああ、ちょっと上で、やらなきゃなんねぇ事が出来ちまったんだ」


「ならば、東の国へは、二人抜きで参ろうぞ。

こちらも早急に収めねばならぬからのぅ。

仁佳(ニカ)の軍を待機させるのも、限りがあろうからのぅ」


「だな。紫苑、珊瑚、慎玄、それでいいか?

三の姫様は、東で待てばいいんだな?

……よし! 馬車ごと向こうに運ぶぞ!」




 気を掴まずに曲空した先は――


東の国、都の南――地図で言うなら、かなり下の小さな町――近くの森の中だった。


「もぅ少し、都の近くには出られぬのか?」


「まぁまぁ、姫様。先に偵察に参りますので」

「馬車を進めてくださいませ」二人、にっこり。


紫苑と珊瑚は、空へと地を蹴った。


「私は、この近くに、存じております寺がございますので、話など伺って参ります」


慎玄は西へと歩いて行った。


「んじゃ、洞窟で飯作ってくるから、ゆるゆる進んでてくれ。

すぐ戻るからな」


「あい解った♪」




 ニャンと、ひとりになったニャ♪

 ニャらば~♪


幌の上に黒猫が現れ、ニヤリとすると、中にいる姫に向かって、するすると念の紐を下ろしていった。


紐の先が、姫の首筋に触れる。


姫がカクンと崩れ、紐が巻き付き、紐が引かれ、穿たれた闇の穴に呑まれた。


 代わりにコレでも置いとくかニャ♪

 影様の所に運ぶ間だけ時間稼げれば十分ニャ。

 さらばニャ~♪




「お~い、姫、飯だぞ~」「ニャ~ン」


「ふざけてねぇで、サッサと出て来いよ」


クロが幌の中を覗き込むと、姫はペタンと座って――


猫がするように、手で『毛繕い』していた。


「何やってんだ?」てか、この気は……


サッと乗り込み、掌を翳す。


 間違いねぇ。コイツは、ただの猫だ……


(姫! どこだ!? 返事してくれ!!)

「姫! 返事しろって!!」外に出て叫んだ。


光が、ひとつ、物凄い勢いで近付いて来た。

「クロ兄様、何かありましたか!?」


「フジ! いいトコにっ! 姫が消えた!!」


「えっ!?」辺りの気を探る。「確かに……」


フジは気を高め、探りの範囲を拡げていった。


「人界には、いないようです……

アメシス様、あれは姫様の御体でしょうか?」


【いいえ、ただの猫ですよ】


「何の為に……?」


【拐った事を主張しているのか、戯れか……】


「ただ、残してくださったので、この猫から辿る事が出来るかもしれませんね」

桜華が幌の中を覗き込んでいた。


「三の姫様、出来ますか?」


「試してみますので、フジ様、クロ様をお願いしますね」


「クロ兄様!? しっかりしてください!

呆けている暇はありませんよっ!」


「あ……だよなっ! 姫、探さねぇと!」


「アメシス様! これを如何に見ますか!?」

桜華の声に、皆、集まる。


【動いているようですね……曲空でしょうか?

あ、止まりましたね。

最後の曲空で、魔界から、

人界――魯茉丹(ロマニ)の南方辺りに現れたのではないでしょうか……】


「魯茉丹……掴んだ! 間違いない、姫だ!」

「クロ兄様を掴んで!!」




 姫の気に曲空すると――


アオ(魔王)が、ぐったりした姫を抱え、サクラと対峙していた。


【アオ、闇を受け入れ、私と同化せよ。

さすれば、この女を返そう】


「アオ兄に話しかけるな! 姫を返せっ!」


【黙れ、サクラ。アオと引き換えだ】


「どちらも渡さない!」ジリジリ詰める。


【ならば、この女を頂く】姫の額に掌を当てた。


姫が目を開け、嬉しそうに魔王の首に手を回し、しっかり抱きついた。


「姫! 何してるんだ!? オレはこっちだ!」


姫がクロを見て怯え、魔王にしがみついた。


【そうか……私がよいのか?】髪を撫でる。


【ならば、愛を確かめようぞ】目を合わせる。


うっとり微笑み、姫から顔を寄せた。


サクラが跳び、魔王の背に斬りつけようとしたが、見えない何かに弾かれた。


「フジ兄! 聖輝水を浴びせて!

闇を飲まされてる!!」


サクラが光を輝く槍に変え、放ち、魔王を包む結界に(かす)めるように当て、少し破った。


フジが、その穴を狙うが直ぐに塞がる。


「クロ兄! しっかりしてっ!!

供与お願いっ!!」

サクラは攻撃を続けながら叫んだ。


「姫がアオと……」


姫の体が透け始め、アオの体――魔王の中へと沈み込み始めた。


「違う! 魔王だよ! アオ兄じゃない!」

【そうだ、クロ。アオだ。アオを憎むのだ】


魔王が、半分重なった姫をクロの方に向かせ、抱きしめると、姫は嬉しそうに手を重ね、身を捩り、魔王に微笑み、また顔を寄せる。


クロから瘴気が立ち昇る。


「聞いちゃダメだ! クロ兄、しっかりして!」

【憎しみを燃やせ! 嫉妬を爆発させるのだ!】


姫の手が、アオの手と、ひとつになっていき、姫が背中からアオの体に沈み、見えなくなっていく。


「クロ兄、姫を出さなきゃ! 目を覚まして!」

【よく見よ。静香とアオが、ひとつとなるぞ!】


クロは立ち昇った瘴気を纏い、鱗から艶が失われていった。


「クロ兄ってば! あれは魔王なんだよ!」

【クロよ、闇に堕ちよ! 静香と共にな!】


パァァァーーン!!


書いていた御札を放った桜華が、クロの頬をひっぱたいた!

「自分の女なら護り抜きなさいっ!!」


御札が結界を塵と化し、魔王は大量の聖輝水を浴び、アオの体から、姫と共に弾き出された。


「三の姫様……ありがとうございます!!」

クロが領域供与を発動しながら突進した。

サクラも魔王に向かう。


魔王が姫を掴み、アオの体に戻ろうとした。


フジが水流で、アオの体を弾き飛ばす。


クロは曲空し、魔王の懐に入り、姫をもぎ取り、再び曲空、離れた所に現れた。


サクラが竜体になり、魔王の鳩尾に突っ込み、背中に抜けた。


刹那、闇の穴から巨大な手が伸び、アオの体を引き込んだ。


 またっ!? コイツだけでも消してやる!


咥えた見えない何かを掴み直し、聖輝水の中に突っ込んだ。


そして、掴んだままの手に、光の球を生み、何か――つまりは、小さな闇黒竜を包んだ。


耳障りな叫び声が尾を引く。


「フジ兄! あっちに放水!!」


サクラが指した先には――


今にも口づけようとしているクロと姫が居た。


大放水直撃!! クロが吹っ飛ぶ!


「何すんだよっ!!」


「闇、飲みたかったの? クロ兄。

姫を浄化するから貸してね」


振り返り、「フジ兄、アメシス様は?」


「馬車のようですね」



 曲空すると、馬車の横に、猫を抱いたアメシスが立っていた。


【黒い何かが飛びましたので、追いかけましたら、黒猫がこちらで、何やら小細工をしようとしておりました。

浄化すると、背中から煙を上げながら、逃げてしまいましたが……


それに致しましても、随分と派手に闇を付けましたね。

それでは、浄化を始めますね】


またまたまたまた呼ばれてしまったカルサイとドルマイは、神界に戻ったら、ヒスイとスミレの昇格を更に急ぐよう、お願いしようと心に決めた。




「サクラ、アオ兄様は?」


「眠らせてたんだ。

記憶 戻って混乱してたから」


「見ていなくて良かったですね……

それに、三の姫様がいらっしゃって助かりましたね」


「あの……そろそろ、その呼び名は……

仲間入りをお認め頂けましたのなら、名で呼んで頂きたいのですが……」

フジとサクラの背後に、桜華が立っていた。


「あ……」フジとサクラが顔を見合わせる。


「もしかして、私の事、年上だと思ってらっしゃるの?」


「え!?」


「サクラ様より少しだけ下ですのに」


「マジか!?」クロが来ていた。


「と申しましても、人換算しますと、フジ様より少し下くらいかしら?」


「じゃあ、紫苑、珊瑚と違わねぇのか?」


「あの子達、人として育ってきましたから……

そろそろ止めないと、追い越されるわね♪」


唖然とする竜達。


「あ♪ 嘉韶(ヨシアキラ)も止めてあげないと、ひとりだけ、お爺ちゃんになってしまうわね」ふふふ♪


「人も止められるのですか!?」


「嘉韶も、少しだけ狐の血が入っているの♪」


「そうですか……」


ころころと楽しげに笑っている桜華を見ながら、この一家に、やっと戻った幸せを 永きものにしなければ、と改めて思った天竜王子達だった。





桜「クロ兄、だいじょぶ?」


黒「ん? あ……まぁな」


桜「お腹イタイの?」掌を翳す。


黒「痛くは無ぇが……

  なんか、変な感じなんだ」


桜「ふぅん……

  姫、たぶん何も覚えてないから

  心配いらないよ」光を当てる。


黒「そっか……」


桜「姫、傷つけないよぉに、普通にしなきゃ」


黒「ん……そうだな……」


桜「元気なくなったらクロ兄じゃないからぁ」


黒「オレって……元気だけなのか?」


桜「う~ん……だけ、かも……」


黒「んなっ!?

  真剣な顔で、んなこと言うなよぉ」


桜「じゃあ~ねぇ~♪」


黒「なっ……やめっ!

  サクラ! あははっ!」


桜「こちょこちょこちょ~♪」


黒「ばっ! やめろって!! わはっ♪」


桜「やめな~い♪」


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