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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
189/429

闇の呪1-傷

 そういえば、黒猫は?


 翌朝――


王子達の控え室からアオとサクラを連れ出したギンは、王の控え室へと向かっていた。


「アオ、サクラ、長老の山に婚約者の方々をお送りするまで、しっかり護衛してくれよ」


「父上~、今日もですかぁ?」


「当然だろ? あ、妃冠も頼んだぞ♪」


「それもですか!?」


「二人の控え室は、ここだ。

では、よろしくなっ♪」


二人は渋々着替えに行った。

その後ろ姿を見送り、ギンは隣の部屋に入ろうとした。


「ギン、ミドリ殿が探していたぞ」

コハクが呼び止めた。


「朝っぱらから見たくないのだが……」苦笑。


「あなた~♪ ギン王様~♪」どたどたどたっ


「では、私は先に控え室に入っておくよ」


「待てっ、コハク! 置いて行くなっ!」


「あなた♪ あの妹さんの方は、お相手がいらっしゃるのかしら?♪」


「妹さん?」


「ルリさんの妹さんよ♪」


「アンズさんの事か?」


「アンズさんと仰るのね♪

可愛らしいお名前ね♪

アオにピッタリだわ♪

どちらにいらっしゃるのかしら?」


「今日も儀式が詰まっているのだ。

後にしなさい」


「後なんて! アオは、すぐに人界に戻ってしまうじゃないの!」


 今すぐにでも戻りたい……


扉の向こうで、そう思っているアオだった。


(そぉくるよね~、やっぱり)

アンズ(サクラ)が、着替えを終えて奥から出て来た。


(昨日、アッサリ退いたのが、不思議だとは思っていたんだ。

サクラ……諦めて俺の嫁になるか?)


(そこ、あきらめないでよぉ)


(なんか……もう疲れてきた……)


(アオ兄、しっかりしてぇ!)


(嫁なんて……誰でもいいよ……)

 ルリでないなら……


(俺、ずっと女でいるなんてイヤだぁぁぁ!)


(大切にするよ。アンズ♪)ふざけて抱きついた。


バンッッ!


「え?」「ん?」「あら♪」


「キャーーーーッ!!」



♯♯♯



にこにこにこにこにこにこ♪


(アオ兄がフザケるからぁ!)


(すまない……まさか……)


(たしかに『まさか』だよねぇ)ため息……


(普通、よそのお嬢さんが着替えているの分かってて開けないだろ?

しかもイキナリ!)


(だよね~、そこが母上だよね~)


「アオも一緒に、婚約の儀しましょ♪

ひと組増えても問題ないわ♪」


『父上、助けてっ!』の眼差し発射!


 あ……そっぽ向いた……


「いえ、母上、誤解ですから。

決して、そのような事は――」


「私が、よろけたのを受け止めてくださっただけですので、そのような間柄では……

あの……ご迷惑を……申し訳ございません」


「よろしいのよ♪

恥ずかしがらなくても♪」うふふふっ♪


「本当に! そのようなっ――」声が揃った。


「わかりましたわ♪

クロもまだですし、後日にしましょ♪

あなた、私達お邪魔ですわねっ♪」ほほほ♪


ミドリは上機嫌で、ギンを引っ張って出て行った。


「どぉしよ……」


「も~ホントに……ど~でもいい……」がっくし


「だからぁ! イヤだってば!」ゆさゆさゆさっ


「サクラなら申し分無いよ……」放心状態。


「アオ兄ってばぁ!」


「アンズ……」「サクラだよっ!!」


コンコンッ「お~い、入るぞ」カチャ。


「で、やっぱり、お前ら……そうなのか?」


「んなワケないでしょっ!」

「俺は、どっちでも……」「あきらめないで!」


「とにかく、もうすぐ時間だからな。

ルリとアンズで待機してくれよ」


返事が、ため息。



♯♯♯♯♯♯



 アカとワカナ、フジとリリスの婚約の儀、

そして、ワカナとリリスの戴冠式は、無事に終わった。




 そして、大広間での会食――


円舞曲が流れる前に、なんとか脱出したアオとサクラは、深蒼の祠に来ていた。


「アオ兄、ホント、だいじょぶ?」


「なんとかね……」


「アカ兄に、結界 張ってもらってるから、ゆっくりしててね。

長老の山に、みなさん送ったら、また来るね」


サクラは、そう言って消えた。


アオは、深い眠りに落ちていった――




 アオの鳩尾から、黒猫が、ぴょこっと顔を出した。

辺りの気を探り、ニヤッと笑みを浮かべる。


 ジュ~ブン闇を蓄えたニャ♪

 ずっと、この傷に隠れて、

 サクラに見つからニャイよ~に

 少しずつ~、少しずつ~は苦労したニャ。


 でも、王が闇に反応するニャニかを

 持ってて助かったニャ♪


 おかげで疲れも十分♪

 思考力も低下してるし~

 今ニャら無抵抗ニャ♪


 邪魔ニャ、サクラが戻るまでに~

 仕掛けるニャ♪


 結界の鍵~♪ 鍵~♪

 やっぱり持ってたニャ♪


黒猫は小躍りしながらアオを闇で包み、鳩尾の傷に戻ると、アオの体を浮かせ、結界の外へと運び出した。



♯♯♯♯♯♯



「サクラ、アオは?」


「休ませています。疲れが酷いので。

父上、本当に、母上を何とかしてください。

アオ兄、壊れてしまいますよ」


「ふむ……」


「連日、女性させられたのも、疲れの原因なんですからねっ!」


「サクラは大丈夫なのか?」


「俺は修練も大学も、この姿でしたから。

『アンズ』を出してきたのですから御存知でしょ?

でも、慣れている俺でも限界なのですっ!

皆さんを送ったら、休ませて頂きますっ!」


「そう怒るなよ。

可愛いから見たいだけなんだが……

無理させて、すまなかったな」


「母上を何とかして頂ければ許します」


「その目には逆らえんな……

何とかするから許してくれ」


「はい。お願い致します。

そろそろ行かないと。

送ったら、城には戻りませんので。

では、ごきげんよう」可愛くお辞儀。


すたすたすた……


「サクラ」


「はい?」振り返る。


「アオに、よろしくな」名残惜しくて仕方ない。


「はい。父上」睨んだまま、にこっ。



♯♯♯♯♯♯



【アオ……心の声に耳を傾けよ……アオ……】


(誰だ!?)


【……心の傷から、目を背けるな。アオ……】


(俺の心に傷など無い!)


【あるだろう? 深く大きな傷が……よく見よ】


(消え失せろ!!)


【私はアオ自身……私の声を聞け……アオ……】


(うるさいっ!! 言うなっ!!)


【耳を塞いでも無駄だ……内なる声だからな】


(お前は、一体、誰なんだ!?)


【私はアオだ……だから知っている……】


【ルリの事を、私は知っているのだよ】


(ルリの事……お前なんかに解るものか!)


【目を背けるな……耳を傾けよ……アオ……】


【思い出せ。心の傷を……ルリを思い出せ】


(ルリ……忘れようなど、あるものか……)


【そうだ。思い出せ……辛い傷を思い出せ】


【辛さ……悲しさ……負の感情の海に沈め】


(ルリ……)


【何故、自分だけが苦しまねばならぬ?】


【全てを恨め……憎しみを沸き立たせよ】


【アオ……苦しみ抜いて、闇に堕ちよ……】


【血の涙を流し、憎しみに溺れ、闇に呑まれよ】


【闇を受け入れ、闇と同化し、闇を支配せよ】


【アオ……お前は、闇となるのだ!】



♯♯♯♯♯♯



「アオ兄! どこ!? アオ兄!!」

(アオ兄!! お願い、返事してっ!!)


心に闇が染み込んで来るのを感じ、急いで深蒼の祠に来たサクラは、アオの気を探した。


 アオ兄の気が消えかかってる……

 どこ!? 掴めない!?


(アオ兄! しっかりしてっ!!)


 外に強い邪気が有る!


外に出たサクラは、宙に浮き、鳩尾から溢れ出る禍々しい闇黒色の邪気に包まれているアオの姿を見た。


 どうして!? 結界の外なんかに!?


「アオ兄!!」(返事してっ!!)





(融合する! お前が(しゅ)だ!)


【何だよっ!? 妖怪ジジイ!】


(その鎖も動かぬようにしてやる!

 アオを護れ! サクラもだ!)


【煩いっ! やめっ――】


(行くぞ! お前の孫も必要だ!)


【俺が主なんだろ!? おいっ!!】


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