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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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立太子5-ルリとアンズ

 前回まで:立太子と婚約の儀は、滞りなく

      進んでいますが、アオとサクラは

      疲れきっています。


 王族の女性達の華やいだ笑い声を聞きながら、アオはミドリの為にお茶を淹れ、菓子を選び、小皿に取っていた。


「あら? このお茶……

アオが淹れるのに似てるわ。

香りの立たせ方が私好みよ♪」上機嫌。


「お褒めに与り光栄にございます」

小皿を差し出す。


「私の好みをよく御存知ね♪

あなた……アオの事、どう思って?

個紋も有るし、申し分無いわ♪

弟達の方が、さっさと嫁を決めてしまって……

私、心配ですのよ。ねぇ、どうかしら?」


 俺が、俺の嫁?

 ま、一番 気楽でいいかもな……

 でも、実現は無理だから――


「アオ様は、しっかりとしたお考えをお持ちの御方ですので、婚姻に関しましても、きちんとお考えの事と存じます。

私のような至らない者など、滅相も御座いません」


「そうよ♪ アオは一番しっかりしているわ♪

あなた、おとなしそうなのに、ちゃんと見てるのね♪

一度 会って、お話しなさいな」


(サクラ、助けてっ!)


(ムリムリ~、アオ姉、がんばっ)


「ねっ♪ そうしましょう♪

明日なら、まだこちらに居る筈よね?

お義母様♪」


急に話を振られたモモが慌てる。

「儀式が終われば、すぐに人界に戻るのではないかしら?

三日も離れておりますから……」


「少しの間だけでも、時間 作らせなくちゃ♪

あ……そういえば……」


「いかがなさいましたか? 王妃様」恐る恐る。


「どちらかと踊ってはいませんでしたか?」

アオとサクラを交互に見る。


 あ……しまった……


「あの時は……妹と、外で休んでおりましたら、アオ様とサクラ様が通りかかられまして、お相手がいらっしゃらないと仰られまして……

それだけなのです」


「それで、あれだけ息を合わせられるのでしたら、これ以上は、きっと、ございませんわ♪

お義母様も、そう思われませんか?」


「まぁ……こればかりは、アオ自身が決める事。

話を持ちかけるまでになさってはいかがかしら?」


「そうね……あんまり押すと反発するわね……

あの子、頑固だから」意外と解っている。


「そうですよ。アオの良いように、させておあげなさいな」うふふ♪



 進行用の時告器が、終了間近な事を示す。

アオとサクラは笛を取り出し、終了が近い事を知らせる曲を奏でた。


曲が終わり、モモが儀式の終了を宣言した。



 退場、控え室へ。

「あなたとアオの二重奏も聴きたいわ♪

アオは、笛も得意なのよ♪」


ボタンとミカンが控え室に戻り、笑いを堪えている。


ミドリは扉を開けて出ようとして、振り返った。

「あなた、お名前は?」


「あ……えっと……ルリです」


「何家?」


「エレドラグーナ家です」


「あら? お義母様の?」


「ええ、親戚筋なの」モモが助け舟。


「そう」にっこり笑って、出て行った。



「モモお婆様、すみません!」


「私は何も……でも、明日、どうなさるの?」


「終わったら、即、逃げるか……

サクラに『ルリ=エレドラグーナ』をやってもらうか……」


「母上が狙ってるの、アオ兄だけだから、ソレできるよね~」


「俺が二人いるなら、俺の嫁は、俺でいいんだけどな……」ため息。


「アオ兄……」本心なんだ……それ……


扉が叩かれ、開いた。

「ボタン様、ミカン様、ルリ様、アンズ様、会議室へ御移動お願い致します」


(アンズって……)(サクラだろうね)


会議室では、王と王太子が署名をしていた。


キンとハクに呼ばれ、ボタンとミカンも署名を始める。


ボタンとミカンの両親が案内されて来た。

「ルリ殿、アンズ殿、御両親様に説明を頼む」

ギンが手を止め、そう言った。


(護衛、兼、説明役だね)


(なんか使われっぱなし~)


(この説明って、この姿じゃなくてもよさそうだよね)


(ただ、父上が楽しんでるだけみたいだよね~)


(ボタンさんとミカンさんに、ずっと付いてるって状況を定着させる為なんだろうか……)


(考えてあげ過ぎだよぉ。

あの目は、すっごく楽しんでるよぉ)


(娘が欲しかったのかなぁ……)


(男ばっかり七人だもんね~)


(でも、こっちを主にされないように釘を刺さないといけないね)


(ルリ姉、お願いねっ♪)


(他人事じゃないだろ? アンズ)


そんなこんな、ずっと話しながらも、滞りなく署名は終了した。


(そろそろ決界の効果が薄れそうだね)


(アカ兄、クロ兄、結界 補強する?)


(そうだな)(アカに集合なっ)



――ワカナの控え室。


「お前ら、まだ、その格好なのか?」


「次々言われて、戻れないんだよ」


「あんまり時間ないからぁ早くぅ」


「そんな目で見るなっ!」


「どんな目?」「さぁ……」


「行くぞ! 時間ねぇんだろっ!」頬が赤い。



♯♯♯



 結界を補強して、ボタンの控え室に戻ると、ギンに呼ばれた。


「アオ、ミドリが見合いさせると張り切っているのだが、どうしたい?」


「『どうしたい?』も何も、俺と俺が、どう見合うんですか?」


「ミドリと話すか?」


「それしか無さそうですね……」ため息。


「どっちで話すのだ?」


「当然、男ですよ!」


「そう怒るな。怒った顔も可愛いが……

そう、睨むな。まいったなぁ」あははは……


「母上の部屋に参りますので」踵を返す。

数歩進んで曲空した。


「アンズは護衛に戻ってくれ。

だから、睨むなってぇ」

嬉しくて仕方なさそうだ。



♯♯♯



――ミドリの部屋。


「母上、父上から伺いましたが――」

茶を淹れ、差し出す。


「そう♪ これよ、この香り♪

ルリさんも同じように香りを立たせるの♪」

瞳を輝かせる。


「先日も申しました通り、今、私は、この戦を終わらせる事しか考えておりません。

戦を終わらせ、天界に戻りましたら、見合いでも何でも致しますので――」


「でも、こんな良いお嬢さん、なかなか出会えないわよ?

お話しすれば、きっとアオも気に入るわ♪」


 そりゃ、俺ですから、会えるものなら、

 一番、気が合うでしょうね。


「ね♪ 明日、少しだけでも。

よろしいでしょ? 少しでしたら」


「明日は、終わり次第、人界に戻りますので――」


「でしたら、今、ここにお呼びしましょ♪」


執事を呼ぼうとしたミドリの両肩を掴む。


「母上は、そんなにも私を他の女性の元に追いやりたいのですか?」

真剣に見詰める。確かに必死だ。


「アオ……」


「もう暫く子供で居させて下さいませんか?

それとも、サクラさえ居ればよいのですか?」


「そんなにも私を……?」


「はい」


「そう……そうなの……

正直、寂しくもあったのよ……

みんな、母に何の相談も無く、勝手に決めてしまって……」涙ぐむ。


抱きしめて背中をとんとん。


「アオだけ……素振りも無くて、心配したのも本当なのよ。

だから……私が、お世話したくて……

あ、でもね♪ 本当に素敵なお嬢さんなの♪

それも本当なのよ♪」


 お嬢さんではなく、息子ですが……


「ありがとうございます、母上。

こんな世でなければ、素直にお受けするのですが、私は不器用ですので、両方考える事など出来ないのです。

戦を終わらせる事に、今は専念したいのです」


「全ては戦が終わってから、なのね……」


「はい」


「あ♪ そうだわ!」嫌な予感しかない……


「そうよ!

私、ルリさんと一緒にアオを待つわ!♪

一緒に暮らせば、ずっとアオは私の子でも居られるわ♪」


 どうしてそうなるっ!?

 それって最悪だろっ!?

 考えろ! 俺っ!!


「そんな素敵な方なら、既にお相手がいらっしゃるのでは?

確かめましたか?」


「そうね……確かめましょ♪」




 執事がルリ(サクラ)を連れて来た。


「ルリさん、あなた、決まった方がいらっしゃるの?」


「はい……

誠に申し訳ございません……

心に決めた方が居ります」


「そうなの……残念ですわ……

アオ、諦めてね?」


 何で俺が頼んだみたいになってるんだ!?


「今度、良いお嬢さんを見つけたら、戦中であろうが、手遅れにならないように、さっさとお見合いしましょうね♪」


 する気なんて毛頭ありませんからっ!!




 とにもかくにも――


サクラの一言で、一応この騒ぎは収まった。




 しかし――


アオの疲労は極限に達していた。


「アオ兄、だいじょぶ? 休も?」


「大丈夫だよ」薄く微笑む。


「ウソでしょ」

サクラはアオの手を引いて、自室に曲空した。



「せめて、座ってよ」

それ以上は何も言わず、颯竜丸を差し出し、治癒と回復の光を当てた。


 アオ兄、どぉしたんだろ。

 なにか、おかしい……

 気がするんだけど……見えない……


「ありがとう、サクラ……」項垂れる。


 ルリが生きていれば……


アオの心にチクリと痛みが過った。





桜「アオ兄、だいじょぶ?」


青「あ……アンズ……」


桜「サクラだよっ!」

 (兄貴達っ! 助けてっ!

  アオ兄が壊れちゃうよぉっ!)


青「アンズ……疲れたろう。

  俺も疲れたんだ。

  なんだかとても眠いんだ……

  パトラ○シュ……」


桜「何の話っ!?」


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