立太子4-御披露目祝列
『祝列』はパレード、
『高輝台』や『飛翔台』はバルコニー、
勝手に作ってしまいました。
「しっかし驚いたよなっ♪」
「まさか、妃冠 持って出て来るとはなっ♪」
「お前らが主役になって、どーすんだよっ♪」
クロとハクに小突かれる。
「しかし、心配したのは本当だ。
影武者を仕立てて、二人だけ、また戦っているのかと思ったぞ」
「そうですよ。
何も応えてくださらないし、本当に困りましたよ」
戴冠式が終わり、控え室に王子達は集まっていた。
「二人には妃冠の呪を祓って貰ったんだ」
「父上!?」一斉。
「あの部屋は男子禁制だからな。
で、可愛いから、そのまま来てもらった♪」
「父上~」ぶぅ~
「お♪ その表情も可愛いな♪」
「もう戻ってもいいですか?」
「いや、今日は、まだ晩餐会が有る。
ボタンさんとミカンさんを護衛して欲しい。
狙われているやもしれんからな」
「はい」ため息……
「キン、ハク、今日は、そのつもりでな。
出来るだけ行動を共にしろ。
クロ、アカ、フジ、お前らも婚約者から離れるな。
各々しっかり護れよ」
「はい!」
♯♯♯
キン、ハク、アオ、サクラは護衛の為、ボタンとミカンの控え室に移動した。
「アオ、サクラ、それは自由に出来るのか?」
「うん。キン兄もできると思うよ~」
「するつもりは毛頭無い!」
「ハク兄は出来ないからね~」
「要らねぇよっ!」
「できると、いいコトあるかもなのにね~っ」
「出来ないのと、しないのは違うのにね」
「そぉだよね~っ」
「本物の女性の前で、あんな否定しなくてもね」
「うんうん! そぉだよね~っ」
「そこの二人! うっせーぞっ!」
アオとサクラが振り向き、ハッとして光を放った!
光は、ハクの後ろに開きかけた闇の穴を消した。
(アカ兄、城の結界を強化してっ!)
(うむ)
(兄貴達、闇の穴 出たから気をつけてねっ!)
♯♯♯♯♯♯
クロはサクラの声を、王都の屋台が並ぶ通りで聞いた。
屋台で買った色とりどりの小さな飴を嬉しそうに眺めている姫に、
(姫、悪ぃ。城に戻らねぇと。
闇の穴が出たらしいんだ)
(うむ。ここに現れては迷惑じゃからのぅ)
二人は建物の陰に隠れ、曲空した。
♯♯♯
結局、全員、ボタンとミカンの控え室に集まり、晩餐会までを過ごした。
晩餐会の間は、アオとサクラが付きっきりで王太子と婚約者を護衛した。
♯♯♯♯♯♯
夜も更けて――
(アオ、サクラ、王都に結界を張る。手伝え。
クロ、供与頼む)
(アカ兄、三重いける?
御披露目用だから、雑多な思念に負けないよぉに、そのくらい必要だと思うんだけど~)
(五重するつもりだ。だから手伝え)
(うん♪)
四人は上昇し、クロを囲んだ。
クロが領域供与を発動し、アカが硬固の結界を張る。
アオとサクラが昇華で光明を強化しつつ、結界に光の護りを加え、双璧で結界を真似、拡げていった。
(御披露目が終わる迄は保てるだろう)
(うんっ♪)
(やっぱ、スゲーな。お前ら)
(クロ兄がいなきゃ、できないのっ)
(クロの力だ)
(クロ抜きでは出来ないんだよ)
(んな、いっぺんに……
何言ってんだかだけど、本当にオレなのか?)
三人、頷く。(自覚なさすぎ~)揃って笑う。
♯♯♯♯♯♯
翌日、荘厳に飾り付けられた竜宝小艇の天台に、キンとボタン、ハクとミカンは乗せられ、王都を回らされた。
その次の日に婚約の儀を控えているアカとワカナ、フジとリリス、そして、この際だからとクロと姫も、ギンに強引に天蓋無しの竜宝小艇に乗せられ、同行させられた。
沿道の娘達や、娘を持つ親達は、七人の王子のうち、既に五人までもが相手を決めている事を知り、衝撃と落胆を隠せないでいたが――
「アオ様とサクラ様がいらっしゃらないわ」
「お相手が、いらっしゃらないのかしら?」
「サクラ様は、まだお若いもの。当然よ」
「狙い所はアオ様ねっ!」
「私は前々からアオ様派なのよ! 今更何よ!」
「早く向かせた者勝ちよ♪」
「負けないわっ!」
「私は、じっくりサクラ様を狙うわ♪」
「百年待ち!?」
「育てる楽しみが有るのよ♪」
アオとサクラは、本人の知らない所で、思いもよらず標的にされていた。
そのアオとサクラは――
上空、結界の天井から警護していた。
しかし、流石に、この結界は破れないようで、偵察程度には魔物が現れたが、無事に御披露目祝列は終了し、艇は城の広場に到着した。
(だいじょぶそ~だね~♪
俺達も後ろに並ばなきゃダメ?)
(そうだね。行かないと、またうるさいね)
(んじゃ、控え室に、せ~のっ♪)
広場にも大勢の群衆が犇めき合っており、高輝台に王太子と婚約者、二組が現れると、響動めきと喝采が湧き上がった。
王達の挨拶に続き、主役四人が挨拶し、これも無事に終わった。
(今日は、これで終わりだよね~♪)
(でも、まだ用がありそうだよ)父を見る。
(イヤな予感~)(しかないね)
その予感は、的中で――
高輝台の後方に並んでいたアオとサクラは、屋内に入った所でギンに呼び止められた。
「この後、女性王族のみの儀式が有る。
着替えて護衛するように」
「え!? それも!?」「またぁ!?」
「お前らしか出来んだろ?」
ため息を廊下に残して、着替えに行った。
♯♯♯
アオとサクラが、ボタンとミカンの控え室に入ると、モモが説明していた。
そこでは、ボタンとミカンだけでなく、ワカナとリリスも説明を受けていた。
モモはアオとサクラを見て、花が咲くように微笑み、手招きした。
「本当にアオとサクラなの?」
「ええ、まぁ……」「そぉだよ~」
「この儀式は一度に纏めますからね。
明日は無いから安心してね」うふふ♪
「何度見ても、かわいいわ~♪」まじまじ
「ミカンさん、それを言われても、きっと嬉しくありませんわよ。ねぇ」苦笑。
「明日、代わりに出て欲しいです」ため息。
「何でも完璧なんですね……
どうなってるんですか?」
リリスが、そっとサクラの胸に触れた。
「……本物!?」後退る。
「付けてるんじゃないの!?」囲む。
「ぃや~ん」逃げるサクラ。
ミカンがサクラを追いかけ、残った三人がアオの胸をじっと見る。
「あの……恥ずかし過ぎるんですけど……」
「今、本当に『女性』なのかしら?」
「そういう技ですから……」たじたじ
「皆さん、妃冠を着けますから、こちらへ」
ワカナとリリスも、戴冠式と前後するが妃冠を着けてもらった。
「アオ、サクラも」手招き。
「これは王女の……」
「そうよ」にっこり
「モモお婆様、俺達、いったい誰って事にされているのでしょう?」
「そうね……まぁ、王族も大勢いますから、個紋さえ有れば納得されますよ」
そして、モモから儀式の流れと動き、物の受け渡しなどの説明を受け――
サクラがモモの、アオがミドリの手を取り、入場すると、見たこともない王族方々が居並んでいた。
(これなら、俺達の素性なんて気にしなくてもよさそうだね)
(そぉだね~♪)
(要するに、これは新たに王族入りする、お嫁さんの顔見せなんだね)
(女性は、女性だけで連携するんだね~)
(殆どが婚儀きっかけで入る事になるからね。
こういう儀式が大切になるんだろうね)
ボタンが代表で挨拶し、モモが祝し、大人数のお茶会が始まった。
アオとサクラは玉座後方に控え、誰も来ない事を祈り続けるのだった。
桜「アシ痛ぁいぃ~! 靴キライ~!」
青「女性って大変なんだね……」
桜「よく、こんなの履いて踊れるよねぇ」
青「それに、こんなに締め付けて……」
桜「うん、お菓子いっぱいあるのに
食べらんな~い!」
青「隠してあるから、後で食べようね」
桜「うんっ♪」




