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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
185/429

立太子2-立太子と婚約の儀

 またまた天界のお話です。


♯♯ 狐の社 ♯♯


「コギ……」


収容した魔人達に『癒し』を当てていたコギが、振り返り、控えた。

「御用でございますか? 一の姫様」


「少し……いいかしら?」庭に向かった。




 庭に出た梅華が、振り返り、俯いた。


「ご迷惑ですよね?

父上様が、あのように浮かれるなど、思いもよらず……」


「いえ、お気遣いくださり、ありがとうございます。

姫様が、本当に、私なんぞでよろしいのでしたら、私は、この上無く幸せでございます」


「父上様に言われては、そう仰るより他には、ありませんよね……」


「いえ、そうではなく、先程の言葉は、私の本心でございます」


「では、本当によろしいのですか?」


「はい。生涯、一の姫様にお仕え致します」


「私……従者ではなく、夫として……

コギが良いのです!」染まった頬を袖で隠す。


「姫様……」


「ですからっ! もうっ!」隙間から睨む。


「では、もう遠慮は致しません」

ふわっと優しく包み込んだ。

「梅華……」


「はい♪」嬉しさを咲かせ、見上げる。


「生涯、大切にします」


「私も……ずっと一緒に……」


「はい」溢れる幸せを口づけに込めた。




♯♯ 天竜王城 ♯♯


(アオ、いつの間に、リジュンさん達を救出したんだ?)


目の前では、立太子の儀が粛々と進行している。


(昨日、父上が暇をもて余して、長老の山に来ていて、なんかそういう流れになったんだよ。

闇黒竜にされていた皆さんの記憶を利用出来るうちにって、サクラが闇を使ってね)


(で、二人とも、闇使って大丈夫なのかよ)


(だいじょぶ~♪

カルサイ様に、闇使えるよぉにしてもらった~♪)


(クロは大婆様に何て言ったんだ?

また俺が動かなきゃならない事が有るのか?)


(大婆様にはウソは通用しねぇから、素直に思ってるまま言ったんだけど……

まぁ……結局、まだ考え中だ)


(ま、いいけど、姫に逃げられないようにね)


(機嫌良く待っててくれるって言ってたけど……

信じていいのかな……)


(そこは二人の事だから、俺は知らないよ)


(冷てぇなぁ……)


(って言われてもねぇ、アオ兄)


(うん。外野には、どうしようもないからね)


(俺達と喋ってないで、姫と話したらぁ?)


(う~ん……そうすっか)

(姫、退屈してねぇか?)


(大丈夫じゃ。珍しゅうて、面白いぞ♪)


(こういう儀式が、いろいろあるんだが……

その……姫は、どうしたい?)


(そぅ言われてものぅ……まだピンと来ぬのじゃ)


(オレも、そうなんだよな~

姫の方――中の国では、どんな儀式があるんだ?)


(結納と婚儀だけじゃ。

結婚は内々の事じゃからのぅ)


(結納って……婚約か?)


(そぅじゃな)


(それは急ぐのか?)


(う~む……わからぬ♪)


(へ?)


(将来的には、国を治めねばならぬし、世継も必要じゃが……今はまだ考えられぬ。

機が熟す迄ゆるりと待ってはくれぬか?)


(姫……もしかして、オレの気持ちを読んで、代わりに言ってくれてるのか?)


(何故わざわざ、そのよぅな事をせねばならぬのじゃ?

だいたい、そのよぅな事、ワラワに出来よぅ筈がなかろぅ?

ただワラワが、そぅ思ぅておるだけじゃ)


(じゃ……すっげー、気が合うって事でいいんだな?

オレ、全く同じ気持ちなんだよ)


(ならば、それで良いではないか♪)


(だなっ♪

この後、その結納に当たる婚約の儀だ。

午後は戴冠式がある。

それが終わったら、街を案内するよ)


(うむ♪ 楽しみじゃっ♪)



 王太子の初仕事――キンとハクからの挨拶が始まった。



(リリス、疲れてはいませんか?)


(平気よ。ありがとう、フジ)


(今後、儀式があっても、こんな感じで立っているだけですから、安心してください)


(はい♪)


(婚約すれば、立ち位置が後列ではなく、私の横になりますけど……それだけですので)


(はい♪

フジ、そんなに心配しないでね。

私、覚悟決めましたから、もう大丈夫よ♪)




(ハク兄、さすがに今日は、ちゃんとしてるね~)


(いつものは振りだから、こっちが本当だろ?

サクラの方が、よっぽど落差が激しいよ)


(そぉ?)




(ワカナ、急に、こんな事になったが大丈夫か?)


(立ってるだけなら……)


(それだけでいい。気分が悪くなったら言え)


(うん)アカ……優しい……


(心配は要らん。俺が全てやる)


(うん)どうしよう……私、幸せ過ぎるぅ。



 王達の宣言で、立太子の儀が終わった。

流れる曲が変わり、王太子達が入口近くまで下がり、婚約の儀が始まった。


 ここからは、しっかり見なきゃ!


と、前を向くリリスとワカナ。


ボタンとミカンが、呼ばれて入場し、キンとハクの横に立つ。

四人揃って礼をし、玉座の数歩前まで進んだ。


再度、四人揃って礼をし、キンとボタンが玉座に向かって進み、宣誓して署名。


続いてハクとミカン。


 お辞儀する所、返事する所――


必死でボタンとミカンを目で追うリリスとワカナだった。



(なぁ、アオ。オレの場合、どうなるんだ?)


(確かにな……形式としては有るんだけど、どう簡略化するか、だな……

うん。考えておくよ)


(そっか……ちゃんと形はあるんだ)


(もちろんだよ。

昔は魔竜との婚儀も多かったからね)


(ふ~ん……)


(クロ……本当に、もう少し勉強したらどうだ?)


(お前らが、賢過ぎんだよ!)


(クロ兄が、なまけ過ぎ~)


(姫に見限られない程度には勉強したら?

知識も武器だぞ)


(解ったよぉ)


婚約の儀も終わった。




 大広間に移って、昼食会となった。


 どぅやら、好きな料理を己で取ればよい

 よぅじゃが…


王子達は、たくさんの人々に囲まれていて話すどころではない。


爽蛇が飛んで来た。


「ミズチ♪ 会いたかったぞ♪」


「姫様、リリス様、ワカナ様。

私についていらして下さい」恭しく礼。


料理を選び、向かった卓では、桜華、紫苑、珊瑚、慎玄が座っていた。


少し離れた卓に、仁佳の皇族方も居る。


爽蛇が、空龍と雪希を連れて来た。




 やっと各々が場の雰囲気に慣れ、話が弾んできた時、静かに流れていた音楽が円舞曲に変わった。


立って話していた人々が中央を空ける。


キンとボタン、ハクとミカンが進み出、円舞が始まった。


「本物は、こぅなのか……」見惚れていると、


「姫様、御召替えを」爽蛇が耳打ちした。




 着替えて戻ると――


「姫、一曲お願い致します」クロが跪いた。


クロと姫、アカとワカナ、フジとリリスが加わり、五輪の華が美しく咲き誇った。


アオとサクラは、既に裏方として働いていたが、ギンに呼ばれた。


「お前らも入れ」


「相手が――」ギンに睨まれた。


(どぉする?)(ご令嬢とか面倒だしなぁ)

(あ♪ い~コト思いついたっ♪)


「支度致しますので、次の曲より参加致します」二人、揃って礼。


控え室に入る。

(サクラ、どうするんだい?)


(こ~するの♪)スッと、女の子になった。


「え!?」口を押さえる。

(自由に変えられるのかい?)


頷いて「着替えるからぁ」


アオは慌てて背を向けた。




 そして――


アオはサクラの手を取り、大広間に戻った。





珊「あれは……」


華「どうしたの? 珊瑚」


紫「アオ殿のお相手の女性は、

  サクラ殿なのです」


華「紫苑、どういう事なの?」


紫「異間平原で蒼月の影響を受けて、

  女性になった事は有るのですが……」


華「もしかして紫苑も?」


紫「はい……」


華「どんなだったの?♪」


珊「私と瓜二つで瞳だけが紫で――」


華「見たいわ~♪

  異間に行きましょ♪ 紫苑♪」


紫「い、いや、母様、それだけは――」


華「そうね……危険ですものねぇ。

  それなら、サクラ様に、あの術を

  かけて頂きましょ♪」


紫「嫌です!」


珊「紫苑……あの時は平然としていたわよね?」


紫「珊瑚っ、それとこれとは――」


華「慌ててる紫苑って可愛い~♪」


紫「母様!」


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