立太子1-リジュン救出
前回まで:仁佳は、ほぼ落着しました。
カルサイと共に天竜王国を祝福の光で包み、竜骨の祠で笛を吹いて、アオとサクラが大婆様の部屋に戻ると――
「二人共、明日から、裏方として駆け回るつもりなのじゃろ?
無理は せぬよぅにのぅ」
「ありがとうございます、大婆様」
「ところで――」
「はい?」
「クロは、如何な事になっておるのじゃ?」
「あ……」顔を見合わせる。
「クロは、ゆっくり進めたいと申しておりましたし、婿入りですので、先方優先かと――」
「二人共、近くに居りますので連れて参ります」
サクラは、そう言うと消え、姫とクロの手を取って現れた。
「えっ!? サクラ、ここは――」
「ご挨拶まだでしょ?」
「う……」
アオとサクラは二人に手を振って、退室した。
「クロ、よぅ来たのぅ」にこにこにこ
「大婆様、ご無沙汰して申し訳ございません」
「静香様、はじめまして。
竜の国に、ようこそお出でくださいました」
「お初にお目にかかり申し上げまする。
大婆様」ぺこり
「今回、二人は儀式を共にせぬのじゃな?」
「はい。まだ、そこまでは考えておりませんでしたので、また、日を改めまして行おうと考えております。
私だけは……その……婿入りですので……」
(クロ……考えてくれておったのか?
それより、まこと、それで良いのか?)
(まぁな。でも、もう少し考えさせてくれよ。
オレは、なんとかして両立させたいんだ)
(うむ。よかろぅぞ♪)
「ふむ……そうじゃのぅ。同じとは、ゆかぬのぅ。
じゃが、後にも楽しみが残るのは、これまた良き事じゃ」
「婿入りしても……よいのでしょうか?」
「何も留め立てする事は無いからのぅ。
それぞれ幸せになればよいのじゃ」にこにこ
「では、静香様の御国について、お聞かせ頂けましょうか?」
姫とクロは、中の国について話し始めた。
♯♯♯♯♯♯
アオとサクラが中庭に出ると、翁亀が居る大池に、シロと神竜達が見えた。
近寄ってみると、馬頭鬼族長でギン王の執事であるマーさんが描いた魔界の地図を広げ、新たに何やら描き込んでいた。
しかも、そこには――
「父上!? 明日のお支度は!?」
「そんなもの、皆がやってしまって、かえって暇で仕方ないのだ」笑う。
「それで、何か判ったのですか?」
「リジュン殿の居場所が、この五つに絞れそうなのだ」
「ただ……私達も、この半年は仁佳に居りましたので、これ以上は絞りきれず……
申し訳ございません」
「ねぇ、神竜さん。
俺の肩に手を当てて探ってみて」にこっ
(サクラ、また闇を――)
(ごめん、アオ兄。今しかないと思うんだ)
(最低限だぞ)(もっちろ~ん♪)
神竜達がサクラの肩に手を置き、サクラは地図の上を掌で擦った。
「そこです!」神竜達が一斉に声を発した。
「で、どう行けばよいのだ?」
「ここからですと、ハザマの森を抜け、地下界の奥に向かわねばなりません。
遥かに遠い所です」
「闇の穴は?」「サクラ!」
「アオ兄にも迷惑かけちゃうけど、リジュンさん、早く助けないと、この先もっと大変になっちゃうよ」
「そうだけど……」
「アオ兄、お願いっ」拝む。
「的確に、リジュンさんの、すぐ傍に開けてくれよ」
「神竜の皆さん、宜しくお願いします!」
神竜達が、もう一度サクラの肩に手を置く。
サクラが闇を纏い、両手を前に出し、闇の穴を開いた。
アオが、その向こうを確かめる。
穴の向こうの魔物達が殺気立つ!
刹那、アオが放った光が、魔物達を塵と化した。
ギンとアオは、寝台に横たえられていた人物を穴から引き出した。
サクラが闇の穴を閉じる。
ほんの一瞬の出来事だった。
アオはサクラを抱え、深蒼の祠に曲空した。
急ぎ、自身の浄化を行い、サクラを浄化台に横たえ、浄化と回復の光を当てた。
【何故また無茶を?】
「カルサイ様、何度も、すみません!」
【ああ、魔人を救ったのですね?】
カルサイはサクラの闇を消し去った。
【己が欲の為に使った訳ではありませんので、それならば、何度でも参りますよ。
でも……もう少し使い易くせねば、いずれ、闇に堕ちてしまいますね……
アオ、私にサクラをお預け願えますか?】
「はい。宜しくお願い致します。
私はリジュンさんの方へ参ります!」
アオが中庭に戻ると、神竜達がリジュンの竜血環を破壊し、中で成長した闇を消す為の術を唱えていた。
そこに女神が現れた。
【貴方がアオ?】
「はい。貴女様は……?」
【ドルマイと申します。
カルサイに頼まれました。
この方ですね? 確かに酷い状態です。
そしてアオ、貴方も……
先ずは貴方から浄化します】
ドルマイがアオを浄化するのが終わるのと、神竜達がリジュンに出来る限りの事を成し終えたのは、ほぼ同時だった。
【続きは、私が行います。
アオ、お手伝いくださいますか?】
「もちろんです!」
ドルマイが浄化を始め、暫くして、ネイカとホウが駆けて来た。
「兄さん!」
アオが微笑み、頷く。
ウェイミンも走って来た。
そして、サクラとカルサイが浄化に加わり、沢山の闇の塊が取り出され、内に生まれていた魔物を滅した時、リジュンが目を開けた。
「兄さん!」「ジュン!」
抱き合い、喜び合っている四人を見ながら――
「アオ兄、もう、ひと仕事あるんだけど……」
「ご家族だね? でも、大丈夫なのかい?」
「だいじょぶ~♪
神竜さん、リジュンさんのご家族は、どこ?」
リジュンの時と同様に、牢からリジュンの家族を引き出した。
そして、呪などは無かったが、付着していた闇を滅した。
「サクラ、今度は闇に負けなかったね」
「うん♪ カルサイ様に残りの封印、解いてもらったら使い易くなった~♪」
【それでも一応、浄化しますね。
浄化が終わったら、私にも笛を聞かせてくださいね】
「はい♪」
♯♯ 人界 ♯♯
その頃、馬車では――
あ~~っ! 腹立つニャッ!
せっかく、みんニャ揃って天界に行ったから
馬車に細工しておこうと思ったのにニャ~
ニャんで神が留守番してるのサ!
ぷんぷんっ!
両軍、全部隊にイカツイ結界なんか
張っちゃって~
どこにも手出し出来ニャイニャン!
せっかくサクラの者見玉作ったのに、
光の結界の中に行ったら見えニャイし!
闇使ってる事しか、わかんニャイ!
サクラのバカーーッ!
せいぜい、闇を使いまくればいいニャッ!
フンッ!!
【フジ、今度は、どうしたのですか?】
「姫様が晴れ着を望まれまして。
アメシス様、それでは行って参ります」
【フジ、こちらの事は気になさらず、生涯一度きりの大切な事です。
存分に楽しんでくださいね】
アメシスはフジを祝福の光で包んだ。
凜「『祝福の光』って?」
青「神の光だよ。
今回は、それで結界を張ったんだ」
凜「そういう事かぁ。『幸福の種』は?」
青「それも神の光。少し運気が上がるかな?
まぁ、浄化だね」
凜「アオ達は、どうやって手伝ったの?」
青「神以鏡の光も似たようなものだからね。
カルサイ様の御力が強いから、
俺達でも手伝えたんだと思うよ」
凜「カルサイ様って……」
青「たぶん、凄い神様だね」
凜「ドルマイ様って……」
青「カルサイ様の奥様なんじゃないかな?
とても似た気をお持ちだったよ。
同じくらい凄い女神様だよ」
凜「で、リジュンさん、アッサリ奪還って……」
青「アッサリって言うけど、サクラは
かなり無茶したんだよ」
凜「だろうけど……」書く私には……
青「まだまだネタは、たくさん提供するから
今回は、勘弁してよ」
凜「よーし! 約束だよっ!♪」るんっ♪
青「あ……」




