仁佳城6-解呪
この先、解呪は何度も出ます。
その度に、こんなん書けませんので、省略して、光で包んでとか輝きを放ってとかで、チャチャッと終わらせます。
アオとサクラが連れて来た、仁佳の皇族の為に、神竜達が中央を空け、申し訳なさそうに俯いた。
(アオ兄、手を貸して。
神竜さん達に伝えたいんだ)アオの手を取る。
(神竜さん達、皇族さん達は、たぶん気付かないから、堂々としてていいと思うよ)にこっ
突然の声に、神竜達が驚いて顔を上げた。
(やったのは魔王なんだから、みなさんには罪なんてありませんよ~
それより、解呪お願いします)ごく小さく礼。
(あ……貴殿方は、一体……?
先程の光と言い……神なのですか?)
(俺達は、ただの竜ですよ)(ね~っ)
「神竜の皆様、皇子、皇女様方の解呪をお願い出来ましょうか?」
「あっ、はい。お任せください。
そちらに魔法円を描きましょうか」
神竜達が少し離れ、光で魔法円を描き始めた。
アオは皇子達と皇女を誘導した。
「神竜様方、必要な竜宝は御座いますか?」
「呪を受けた方が多いので、対象を明確にしたいのですが、至冀の璧は有りますか?」
「御座います」サクラが答えた。
「それと浄禍器をお願いします」
「畏まりました」アオとサクラが消え、
魔法円が描き上がる前に、璧と器を持って現れた。
「こちらで間違い御座いませんか?」
「はい。確かに……ありがとうございます」
「こんなに早く……驚きました」
「では、おひと方ずつ参ります。
中央へお願いします」
進み出た皇太子に至冀の璧を渡し、解呪が始まった。
「桜華姫様、皇后様の解呪をお願い出来ましょうか?」
桜華は皇后に手を翳し、頷くと、
「畏まりました」空いている場所に移動した。
桜華は床に紙片を置き、少し離れると、
「紫苑、珊瑚、よく見ていてね」
術を唱えながら紙片に光を当てた。
紙片が拡がり、広い紙になった。
筆で滑らかに、流れるように宙をなぞると、光の文字が紙面に浮かび上がってきた。
「皇后様、こちらへ」紙を示す。
皇后が紙の中央に立つ。
光の文字が皇后の周りに螺旋状に浮かび、小さな星屑を撒きながら回り始めた。
そして、するすると皇后の眉間に吸い込まれ――
皇后の口から闇黒色の小さな竜が、すぅーっと出ると――
桜華は掌大の二枚貝で、その闇黒竜を捕らえ、封印した。
「皇后様、もう大丈夫でございます」
神竜の方は、皇女に至冀の璧を持たせて、魔法円の中央に立たせ、
五人で囲み、順に術を唱え、出て来た闇黒色の塊を浄禍器に捕らえていた。
「さて……前皇帝陛下、皇帝陛下。
貴殿方の呪は、神の御力を以てしか解く事が出来ません。
アオ、サクラ、フジを――おやまぁ」
【私が解呪いたしましょう】
「カルサイ様……」介入は?
【ここは天界。私も自由です】にっこり
「ありがとうございます!」アオとサクラ。
【見守りの最後の仕事です】満面の笑み。
カルサイが杖を振ると、魔法円が現れた。
(サクラ、笛の飾りが光っているよ)
(グリッターローズ様のだね~)
(カルサイ様と絆を結んでるのは――)
(きっと、そぉだね~♪)
(後で笛を吹きに行こう)(うんっ♪)
【神竜の方々、そちらは終わりましたね?】
「はい。後は滅するだけでございます」
【それは後程、私が致しましょう。
周りに、お立ち頂けますか?】
神竜達が魔法円の周りに立つ。
【アオとサクラも】
(なら――)(そだね~)
二人は一瞬、姿を消し、神以鏡を各々の手にして現れ、新たな浄禍器を神竜に渡した。
【流石、竜宝の王達】にっこり
「凄い方々だらけの中で、その呼び方は恥ずかし過ぎますよぉ」
サクラが俯く。
【まぁまぁ、始めましょう】ふふふ♪
皇帝を魔法円の中央に立たせ、カルサイが術を唱え始めた。
アオとサクラの中で大器が発動され、合致する術の文言が、目の前を横切っていく。
カルサイがアオを見た。
続く節をアオが唱える。
カルサイに戻す。
カルサイがサクラを見た。
続く節をサクラが唱えた。
またカルサイに戻すと――
皇帝が持つ至冀の璧に、闇黒色の邪気が浮かび上がった。
カルサイの掌と、アオとサクラが持つ神以鏡から、光の竜が同時に放たれ――
闇黒色の邪気を捕らえ、神竜が持つ浄禍器へと運んだ。
【続けます】
光の竜達が浄禍器から抜け出、皇帝の周りを飛び交う。
カルサイが術を唱えながら両手を挙げるのに合わせて、アオとサクラは神以鏡を掲げた。
三方からの光を受け、皇帝の身体から闇黒色の靄が、焔の如く湧き立った。
光の竜達が、靄を喰らう。
アオとサクラが声を重ねると、靄を喰らい尽くした光の竜達は、一旦離れ――皇帝の胸へと勢いよく突入した。
そして、勢いそのまま、一緒に禍々しい塊を咥えて、頭頂から抜けて出た。
塊を浄禍器に収めると、光の竜達は天へと昇っていった。
カルサイが皇帝を光で包んだ。
【悪しきものは、全て取り去りました。
国に平和をもたらしてください】
前皇帝も同様に解呪し、カルサイは、浄禍器に収めた全ての呪を滅した。
カルサイは、アオとサクラに向かい、
【解呪で疲れてはおりませんか?】微笑んだ。
「何とも御座いません。
カルサイ様、ありがとうございました」
【いえいえ、見守ってきました御縁です。
それでは、もう少し、お手伝い願います】
「はい。何なりと」
【ご兄弟のお祝い事が有るのですよね?】
「はい♪」
【幸福の種を蒔き、祝福の光で包みましょう】
アオとサクラは、カルサイに続いて飛んだ。
「それでは、皆様、これよりは、ごゆるりとなさってくださいませ。
シロ、モモ、ムラサキ、案内よろしゅうのぅ」
♯♯ 神界 ♯♯
【ここに居たのか。話せない筈だ】
【あら、お祖父様。如何なさいましたか?】
【アメシス様自身が必要らしい。
呼ばれているのだが、最高神は行けないようだ。
人界に行かせられるか?】
【そうね。そろそろいいかしら】
女神は、背を合わせている二人の肩に触れた。
【アメシス様、フジが呼んでいるそうよ。
一旦、休憩ね】
【あ、はい。それでは失礼致します】礼。
【こちらを出る方法を伝えておりませんでしたね……お祖父様――】
【ヒスイは預かってやろう。
王子達が神竜を助けた。
お前は、そちらの様子を見て来てくれ】
【畏まりました、お祖父様。
では、アメシス様、天界までお連れしますね】
【ありがとうございます】
女神とアメシスは姿を消した。
【では、ヒスイ、力を引き出してやろう】
【ありがとうございます!】
【サクラの行動に追い付かねばならぬ。
闇使いの天竜を失う訳にはゆかぬのだ。
少々無理をさせるが、耐えよ】
【はい!】
男神はヒスイの額に掌を翳した。
【ふむ。やはり、よく伸ばせているな。
気を極大まで高めよ】
【はい!】
♯♯♯
【ヒスイ、お前らの父親は生きている。
今は会わせる事は出来ぬが……
王子達と共に、闇の神を滅したならば、希望の光も見えよう。
私も協力する。頑張れ】
【父が……はい!】
【母親の魂は、父親が持っている。
つまり、いずれ、両親に会える】
【だから竜骨の祠には居ないのですね】
【会いに行っていたのか?】
【スミレが行ったと話していました】
【そうか】
【あの……】
【何だ?】
【アメシス様は――】
【ヒスイが想像している通りだが、王子達には話すな】
【はい】
大婆様の部屋で解呪が行われていた頃――
姫「クロ、何処に向こぅておるのじゃ?」
黒「サクラに頼まれたんだ」
姫「何をじゃ?」
黒「アレだよ。翁亀様だ」
姫「ほぉ! 天の亀様か♪」
二人、大池へと駆けて行く。
姫「まこと、大きいのぅ♪
桜が咲いておるのぅ♪」
黒「だろっ♪
翁亀様、こんにちは」
翁「ほぉ、クロ、愛らしい娘御を連れて
どぉしたのじゃ?」
小鳥達が、しきりに囀ずる。
翁「そぉかそぉか、クロは婿入りするのか。
中の国の姫様とな。
ふむ。真、目出度き事じゃのぉ」
姫「何故、知っておるのじゃ!?」
黒「翁亀様は小鳥達とも話せるんだ」
姫「天の亀様は凄いのじゃな♪」
黒「だろ♪」
翁「凄いとな」ほっほっほっ♪
「では、クロ、馴初めなど話してくれるかの」
黒「あ? い、いや……それは、また今度~っ!」
姫「クロ! 何をするっ! 引っ張るでない!」
翁「仲良き事は、この上無き事じゃ♪」
ほっほっほっ♪




