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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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仁佳城5-桜華も

 前回まで:仁佳城を奪還しました。


 仁佳城にて皇帝を救出したアオ達は、皇帝の呪を解く為、天界に行く事にした。


「闇黒竜達も連れて行きたいけど……」


「たぶん、境界 越えらんないねぇ。

でも、父上に預けたいよね……」


「だからと言って、もう、闇を使ってはならないよ、サクラ」


「ハザマの森経由では如何でしょう?」

背後から声がした。


「珊瑚殿、三の姫様の御力をお借り出来るのですか?」振り返る。


「私も、共に戦う事に致しましたので」にっこり


「三の姫様!?」


「あの……仲間に加えて頂けませんか?」


「えっ!?」驚きの後から喜びが湧き上がった。


「砂漠で紫苑と珊瑚に会った時とは、随分と流れが変わりましたので、共に戦いながら二人の力を導きたくなったのです」にっこり


「母様、魔人の治療は――」


「もちろん、これまで通り、そちらもしますよ。

では、闇黒竜を運びますので、天界のハザマの森の口で、お迎えくださいね」


にっこり微笑むと、妖狐に戻り、闇黒竜を背に乗せた大狐達を従えて跳び去った。

紫苑と珊瑚も付いて行った。



「皇帝陛下、一先ず戦線には、防戦のみと、お伝え願えませんでしょうか?」


暖徳(ハルナル)よ、先ずは重鎮達を集め、朕の言とし、その旨、伝えよ」



 皇太子が近衛兵に召集を伝えると、重鎮達がビクビクしながら集まった。

皇帝と皇太子が姿を見せると、皆、一様に驚き、皇太子が、この半年、城に居たのは偽者だった事を告げると、安堵のため息が湧いた。


前皇帝も存命であると告げると、皆、複雑な表情をしていたが、戦を起こしたのは偽者であると重ねると、これまた安堵のため息の合唱を起こした。


前、現皇帝共に呪を受けてしまっている為、竜の国にて解呪しなければならず、数日、城を空ける事を伝えると――


皇太子としては、もっと驚くかと思っていたようだが、重鎮達は巷の噂を聞いており、真偽を確かめようとしていた矢先だったので、然程も驚きもせず、むしろ、自分達も後日、視察に伺いたいと言い出す状態であった。


もちろん、中庭に隠れて聞いていたアオ達は、嬉しさで飛び跳ねそうになっていた。


東の国との戦も終わらせたいが、相手が首を縦に振るまでは退却が出来ぬ為、戦線を維持し、防戦のみ行う事とした。

その伝令は、その場で出立した。


「では、我々は解呪を急ぐ為、これより、竜の国へ参る故、皆様方、国の事、宜しくお願い致す」


皇帝と皇太子は中庭に向かった。


中庭には、黒輝の竜(クロ)が居た。


「竜の背にいらっしゃるのは、中の国の静香姫様。

私達を救出してくださったのです。

今後、良き国交が叶えばと思っております」

皇太子は重鎮達に、そう言って竜に乗った。




 アオとサクラは、城門前に移動し、睦月に馬車を頼み、忍頭に礼を言い、と細々した事をしていると――


黒輝の竜(クロ)が北に向かって飛んで行った。


「俺達も行こう」「うん♪」曲空。




 アオとサクラは、天界のハザマの森の口で三の姫を待ち、皆を連れて長老の山へと曲空した。


魔王の影達の前でサクラは小首を傾げた。

「浄化したら死んじゃう?」


「分かりません……

やってみて欲しいのですが……」


「じゃあ、髪の先で試すね」当ててみた。


光を当てた毛先だけが、闇黒色から金色に変わった。


少しずつ範囲を拡げる。


鱗にも当ててみると、闇黒色の硝子膜が剥がれて弾けるように、粉微塵になって消え、その下から淡い黄色の鱗が現れた。


また範囲を拡げてみる。


アオとサクラは頷き合うと、紅守閃鉱の欠片を各々に持たせ、光で包んだ。


淡い色合いの神竜達が現れた。


桜華が念網を解く。


「急いで大婆様に呪が残ってないか見てもらお~♪

みんな掴まって~♪」

「三の姫様も」(せ~のっ♪)



――大婆様の部屋。


「大婆様、突然で申し訳ありません。

この方々を御覧になって頂きたいのです」


「おお♪ サクラ、アオ、よぅ来たの♪

どれどれ、もぅちぃと近ぅ……ふむ、大丈夫じゃ。

もぅ、魔王の欠片は残っておらぬわ」


「ありがとうございます、大婆様」


「まだ、おるのじゃろ? 迎えに行くのか?」


「はい。船が着き次第、また参ります」

アオとサクラは深く礼をし、退室した。


「神竜の方々、暫し、こちらで、ごゆるりとお待ち頂けましょうか?」


「私達は、もう、龍神帝王を恐れなくてもよいのでしょうか?」

「話しても大丈夫なのでしょうか?」


「もぅ大丈夫な筈じゃ」にこにこにこ


「助かったのですね……」一斉に安堵のため息。


「もし、よろしければ、何があったのか、お話し頂けましょうか?」


「はい。術の名などは分からないのですが、私達は闇の欠片と龍神帝王の因子を込められ、支配されておりました」


「龍神帝王の因子は、脱ぐ事の出来ない鎧。

まるで、この身に融合しているかのように、離れない鎧となって私達を闇黒色に染め、やがて内へ内へと浸透し、心までも闇黒色に染めました」


「何かに乗っ取られたのではない、という事ですか?」


「はい。私自身が龍神帝王の一部として……

その事に誇りを持って行動していたのです」


「『影』である事が、この上無き名誉だと信じて疑わず……すっかり陶酔していました」


「私は、まだ色が戻っていなかった時に、心だけは自分を取り戻しましたが……

皆様も、そうですか?」


「そうですね……あの光る網に包まれた時、あの時だと思います。

何かが……心を覆っていた『闇の殻』とでも表現すればよいでしょうか……そんなものが弾けて消えたような感じでした」


「私達、よく、ここまで滅されず来れたなと思いましたが……もしや、あの網は、私達を護ってくださったのではありませんか?」


「そうですね。

すぐに龍神帝王に消されなかったのは、皆、あの網で包まれていたから。

そう考えると納得出来ますね」


「これまでの『影』達は、失態あらば、即、滅されていたのです。

あの網は一体……?」


「それは桜華姫様、説明は――なさるか否かも含めて、お任せ致します」


桜華が進み出た。


「お初にお目にかかりまして光栄至極にございます、天竜尊貴嫗(ソキウ)様」恭しく礼。


「あらあら、久方振りに、その名を……

気恥ずかしゅうございます」丁寧に礼。


「神竜の方々とは存ぜず、手荒な仕打ち、どうか御許しくださいませ」

桜華は神竜達に深く礼をした。


「いえ、あれは『影』ですので、当然であると存じます。

あの網が護ってくださったとしか考えられませんので、感謝しかございません」


「あの念網は、狐の妖力を具現化したもの。

魔力を打ち消し、拒絶しますので、魔王の力も及ばなかったのではないでしょうか」


神竜達が確定と、口々に礼を言っている時、アオとサクラが仁佳の皇族方を連れて来た。


「割り込みまして申し訳ございません。

こちらの方々の呪をお確かめ頂けますか?」




♯♯ 狐の社 ♯♯


「コギ、また増えたのだな」


「はい。申し訳ございません」


「いや、構わぬ。社を拡げるだけだ。

ここはハザマの森なのだからな。

空間を自在に変えられる点は気に入っている。

それに、これしき、大した事では無い。

昔、竜の子らを預かった時よりはマシだ」


「そのような事があったのですか。

魔竜でございますか?」


「いや、天竜だ」


「天界――親元に帰せなかったのでございますか?」


「呪を受けていたからな。

しかも解きようの無い呪をな。

家族には会わせられず、育て、鍛え、天竜王軍の学校に行かせた。

天竜王には事情を話してな」


妖狐王は遠い目をし、フッと笑った。


「竜の子は、すぐに大きくなる。力も強い。

嵩高いし、賑やかだし、あれは流石に儂もマイッタわ」わははは


 今日は上機嫌でございますね。

 余程、良い事がお有りだったのですね。


「ああ、そうだ。

コギ、梅華の事、如何に思うておる?」


「は!?」

にこにこと妖狐王の話を聞いていたコギが頬を染め、固まった。


「桜華も夫を連れて来ると言うておる。

もう、付いておらずとも、落ち着くであろうよ。

コギもそろそろ落ち着け」


「いえ、しかし、一の姫様のお気持ちが――」


「梅華が許しを得たいと言ってきたのだ。

幼き頃より慕っておったそうでな」


「しかし……私なんぞ――」


「決めた女が居るのか?」


「いえ……居りません。考えた事も無く……」


「代々、王の補佐をしてきた血を絶やすな」


「……はい」


「長く桜華のお守りをさせて、すまなかったな」


「は? いえ、そのような。

私の務めでございますので」


「臣下の心も知らぬとでも思っていたのか?

それとも、娘を押し付ける愚かな親か?」


「まさか、そのようなっ」いつから!?


「だから、娘達を任せたのだ」わははは♪

「まぁ、戯言は、このくらいにしておこう」


妖狐王は上機嫌な笑い声を残し、姿を消した。





凜「桜華様、大婆様の事を漢字いっぱいで

  呼んでましたけど、あれは?」


華「父が付けたらしいの。

  だから、妖狐は、そうお呼びしているわ」


凜「意味は?」


華「聞いていないけど、

  字からも尊敬しているのは確かよね。

  ずっと前に、お助け頂いたらしいわ」


凜「妖狐王様が助けられるなんてねぇ……」


華「気のせいかもだけど、アオ様にも、

  お助け頂いたんじゃないかしら?」

  言えないから、ちょっと有耶無耶に~


凜「アオが助けられたって話しか

  聞こえてこないんだけど……」


華「そうらしいんだけどね~

  でも、助けている理由は、

  それしか考えられないのよ」


凜「言われてみれば……確かに……

  それも調べなきゃ。

  あ、仲間入りしたのは、

  妖狐王様の御指示ですか?」


華「違うわよ」


凜「まさか、復讐……」


華「やぁねぇ♪ しないわよ~♪

  子供達を近くで見ていたくなっただけよ♪」


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