仁佳城2-桜華の手紙
沢山の物やら者やらの名前が出てきますが、
覚えようと頑張らないでください。
すみません。m(__)m
アオは忍頭に、治癒と回復を当て続けていた。
(サクラ、術にも詳しいよね?
偽者が作れないって、どういう事だい?)
(ん~とね、いくつか あるんだけど……
たぶん皇帝さんは、既に何かの呪に、かかってたんだと思うんだ)
(呪? どんな?)
(それは、会ってみないと わかんない。
ただ……
戦を止めたかったのに止められなかった。
そこに絡んでると思うんだ。
勝手な想像だけどね)
(ああ、そうか。
偽者を作るのも、一種の呪なんだね?
だから重ねて掛ける事が出来ない)
(そ。どの呪って限定はできないけど、たぶん本物が死ぬと、偽者も消滅しちゃうんじゃないかなぁ。
だから、だれも殺されなかった)
(皇帝は……生きているんだろうか……)
(わからない……とにかく見つけ出さなきゃね)
♯♯ 仁佳 北部 ♯♯
東の国の軍では――
主軍に届いた帝からの賜り物の環を、皆が着けた事を見届け、睦月達は馬車へと向かった。
主軍の者達が着けた環は、当然 偽物で、輸送中に竜達が すり替え、本物は、とっくに護竜宝で消してしまっていた。
主軍は、こうして士気が上がっていたが、先陣の両翼が、片や人だけが消え、片や負傷者を多数抱えており、身動きがとれない有様だった。
その、負傷者を抱えた片翼では――
軍師が恐る恐る桐箱を開けていた。
「これは……陰陽師の装束……桜華は、これを……」
白を基調とした淡い色合いの、織り模様と刺繍の美しい、たおやかな装束を手に取ると、手紙が はらりと落ちた。
手紙を拾い上げ、開く。
――――――
嘉韶様
この手紙をお読みくださっていらっしゃるという事は、貴方に装束が届いたのですね。
この装束は、あの時、私が織っておりました物。
妖狐の力を込めておりますので、力や刃からだけではなく、術からも貴方をお護りする物でございます。
私は人界を去る時、子供達を連れて行くべきか迷いましたが、
妖力の弱い狐として生きるより、貴方と共に、強き陰陽師として、人の世で生きる方が幸せに違いないと考え、人界に残して去ってしまいました。
私が子供達を連れて行っておれば、貴方が いつまでも縛られる事など無かったでしょうに。
子供達を不遇になど、せずに済みましたのに。
人界での事を耳にする度、己の浅はかさを悔やむばかりでございました。
しかし、子供達は、そんな不遇など、ものともせず、真っ直ぐ清らかに育っておりました。
義父母様には、ただただ感謝するばかりでございます。
妖力も、私の懸念など無意味とばかりに、並の妖狐など、遥かに凌ぐ大きな力を持っており、
まだ、更なる上を目指して、修行に励んでおります。
もはや、子供達は、護られる存在ではなく、人界を護ろうとしておりますので、
貴方の御親族との約束も、これまでと区切り、
これからは、私も共に、三界の平和に向けて戦っていく所存にございます。
貴方の御親族は、魔物によって誑かされただけ。
全く恨みなどございません。
それぞれの道とはなりましたが、
与えられた生を悔いなきよう全うしたく存じます。
いつかまた貴方と笑い合える日を夢見て――
桜華
――――――
会いたい……
そうだな。
もう、縛られる事など無いのだな……
家など弐彌に継がせてしまおう。
仁佳との戦を終わらせ、都に戻らなければ……
♯♯ 馬車 ♯♯
いつものように、コギ達が魔人を連れて行き、
フジが天界から戻り、忍頭に薬を渡した。
仁佳の兵は忍屋敷へ、東の兵は嘉韶が居る軍へ運んだ。
「皇族の方々には、安全な場所に避難して頂きたいのですが、よろしいですか?」
キンの言葉に、皇族達は躊躇いながらも頷いたが、皇太子だけは、どうしても見届けたいと同行を望んだ。
「御命の保証は致し兼ねますが、それでも?」
「私が死する事あろうが、皇子は、まだ二人もおります。
しかと見届けねば、気持ちが収まりません!」
(どぉしよ、ついて来るなら、めーいっぱい護るけどぉ。
キン兄、決めてね~)
(俺も、キン兄さんに従います)
(ふむ……護ってくれるか?)
(勿論、死なせる訳にはいきませんよ)
(ならば、頼んだぞ)
(はい)(うん)
「分かりました。
皇太子様のみ、御同行ください」
キンは皇族達を乗せて、船の発着場に向かった。
「キン兄、頻繁に上に行ってるな……」
「そりゃ、もぉすぐ婚約だもん」
「決まったのか?」
「とっくに~」
「いつ!?」
「あさって~♪」
「え……聞いてねぇぞ!」
「クロも、その場に居た筈だけど……
これからの予定は、
明後日、立太子と婚約と戴冠式。
次の日、御披露目祝列。
その次、アカとフジの婚約式だよ」
「アカも!?」
「昨日、大婆様には、一緒に挨拶しましたよ。
クロ兄様も一緒になさったら如何ですか?
今なら、まだ間に合いますよね? アオ兄様」
「まぁ、ひと組 増えても、儀式は同じだからね。
大丈夫だと思うよ」
「いや……まだ、そこまでじゃ……」
「クロ兄は婿入りだから、姫に決めてもらうんだよね~」くすくす♪
「サクラ! っせーぞ!」
「クロがいい時にすればいいよ。
まだサクラもいるから、ゆっくりでかまわないよ」
アオこそ、どうなんだよ!
と、クロは思ったが、口には出せなかった。
それはフジもサクラも同じで、皆、それは言ってはいけない事だと感じていた。
「クロ~、そろそろ夕食の支度を――
何故、皆 揃って、神妙なのじゃ?」
「いや、明後日から儀式が続くからな。
明日、仁佳城に乗り込むぞ!」
「おぅよ!
して、儀式とは?」
「キン兄さん、ハク兄さんの立太子と婚約。
アカとフジの婚約が続くんだよ」
「立太子……では、貴殿方は――」
姫の後ろに皇太子が居た。
「竜の国の王子達じゃ」
「では、先程、母と弟妹が乗って行ったのは――」
「王太子になるそうじゃ」
「とんだ失礼をっ!」
「気にせずともよい。
竜は人を乗せるのが好きじゃからのぅ」
「いや、しかし――」
「その通りですので、お気になさらず」にこっ
「姫は、いっ――もがっ」「何でもねえっ!」
サクラの口を押さえて、クロは曲空した。
「何じゃ? クロは如何したのじゃ?」
「姫も見に来るかい?」上を指す。
「行ってもよいのか?♪」
「何も問題無いよ。
リリスさんも喜ぶと思うよ」
「ならば、参ろうかの♪
その前に、仁佳城奪還じゃがの!」
♯♯ 神界 ♯♯
【貴女がスミレね?】
【はい……あの、貴女様は……?】
【最高神様から、貴女の指導を依頼されたの。
セレンテよ。よろしくね】
【よろしくお願い致します、セレンテ様】
【あ、あのっ、私も御指導お願い致します!
セレンテ様!】
【いいわよ。ただし、厳しくするわよ】
【はいっ! 宜しくお願い致します!】
【やる気の有る娘は好きよ。
二人共、ついておいでなさい】
【はいっ!】
桜「ねぇねぇ、姫♪ いつクロ兄と――」
黒「サクラ!」連れて曲空!
姫「何なのじゃ? あの二人は」
桜「姫♪」曲空して現れ、即、連れ去られた。
姫「クロ! いい加減にせよっ!」
桜「クロ兄、姫に嫌われちゃうよ~」
黒「えっ……オレが悪いのか!?」
桜「姫♪ 結婚いつ?」
黒「あっ! サクラ!」
姫「ワラワに聞かれてものぅ」
桜「じゃ、クロ兄♪ いつ?」
黒「うっ……」曲空で逃げた。
桜「姫、クロ兄でホントにいいの?」
姫「そぅじゃのぅ~
サクラ♪ 婿に来てくれるか?」
桜「ほえ?」後退り……曲空!
姫「サクラには、こぅすればよいのじゃ♪」
わはははは♪
青「姫……それでいいのかい?
逃げられたんだよ?」




