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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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仁佳城1-皇族救出

 前回まで:アカは天界に引っ越し、

      東の軍の最前線は留まり、

      アオ達は馬車で進んでいます。


 翌日、馬車は仁佳の帝都の外れに着いた。


「あの岩山、何やら妙な気配じゃぞ」


「だな。不自然極まりねぇな」


「調べてみよぅぞ」


ぐるりと回ってみたが、出入口や継目など全く無い。


「怪しいのじゃがのぅ……」


アオは爽蛇の道具袋から、砂漠で活躍した板のような鍵・五彩(ゴサイ)を取り出し、

岩肌に当てがい、高さを変えながら、ぐるぐると回った。


「アオ、ここに当ててみてはくれぬか?」


姫が指す地面に当てると、カチリと音がし、丸く持ち上がった。


「姫、よく分かったなっ♪」


「なんとのぅじゃ♪」



 地下独特の湿り気に出迎えられながら、掌の球の光を頼りに下りて行くと、

案の定、魔物が現れた。


サクラが掌の光を大きくして魔物を覆い、アオが続けて光の球をその内に込めた。


「何したんだ?」


「相殺で動き止めて~」「浄化したんだ」


アオとサクラは、再び掌に光の球を作った。



 その後も魔物は現れたが、難無く進み――


「ここは、重要拠点じゃなさそうだな」


「そうだね。それを探さないといけないね」



――最奥。


「何にもねぇぞ」


「また隠し扉かのぅ」


再び五彩で撫で回る。


カチリ。


床の中央が、丸く浮き上がった。


更に下り、奥へと進むと――


当然、魔物も抵抗したが、クロにあっさり倒され、

その間に、アオが牢の錠を開けた。


「私は仁佳の第二皇子・優徳(ヒロナル)です。

どうか、お助けください!」奥から声がした。


手枷足枷に五彩を当て外し、アオとサクラが両脇を支え、牢の外に出ると――


「ひっ!」優徳は恐怖で顔をひきつらせた。


「如何なさいましたか?」


「龍神帝王……」優徳の視線は、慎玄に向いていた。


「それは貴方様を捕らえた者ですか?

彼は私共の仲間で、慎玄と申す僧侶でございます」


「言われてみれば、少し違うような……

人違いを……申し訳ございません」


「いえ、お分かり頂ければ十分でございます」


「とりあえず、ここから出ようぜ」


クロが馬車へと曲空しようとした時、魔物が一匹だけ現れた。


「生捕り、お願いっ」

サクラは優徳、慎玄と共に、皆に背を向け、こそこそ話していた。


「サクラ、捕まえたぞ」


「は~い♪」

小さな光の球を魔物の眉間に押し込め、慎玄を魔物の前に立たせた。


「龍神帝王様!」平伏!


「ここは襲撃を受けた故、皇子は他の場所に移す。

他の皇族は如何しておる?」慎玄なりきる。


「私は第三皇子の居場所しか存じませんが……」


案内(あない)せよ」


「はっ!」



 魔物の先導で移動している間に、クロは優徳と魔物にされていた者達を馬車に運び、洞窟からキンを連れて来て、回復を頼んだ。



 次は、岩山ではなく、大木の下に地下道が有った。


アオとサクラが、穴に向かって光を放つ。


慎玄を先頭にし、平伏する魔物達に見送られて進み、第三皇子・智徳(トモナル)を救出し、魔物達を眠らせた。



 次は、廃寺の地下から、皇太子と皇女、

その次は、橋桁が入口で、皇后を救出した。


しかし、皇帝の居場所を知る者は無く、魔物達を元の姿に戻し、一旦、全員 馬車に戻った。


「それぞれの入口が帝都の東西南北の外れだから~、皇帝さんだけは別の場所かもね~」


「そうだね」(サクラ、見えない?)


(う~ん……地下界か異空間かなぁ……

だから、入口は、お城の中じゃないかなぁ)


 皇族達は、それぞれ深夜に自室で捕らえられた為、互いの安否など知る由もなく、ただ牢に繋がれていた、との事だった。


「しかし、仁佳の皇族の方々が不明になったなどとは、聞いた事も無いのじゃが……

と、いう事は、じゃ……」う~む……


「あ……貴女様は――」「中の国の――」


「如何にもじゃ。

されど、それはさておきじゃ、城に行ってみなければのぅ」


「だな。ここに いらっしゃる皆様の偽者が闊歩してるだろうからな」


「先ずは偵察かのぅ」立ち上がった時、


「ならば私共が参ります」顔を覗かせた。


「紫苑、珊瑚、お父上の方はよいのか?」


「暫く、あの場にて留まり、回復を優先するとの事ですので」にっこり


「姿を消す事が出来ますので、私共にお任せください」にっこり


「そのよぅな事が出来るよぅになっておったのか……」


二人は頷き、光の矢となって城に向かった。


「狐……」


「如何にもじゃ♪」


「あの……私共をお救いくださったという事は、中の国は、東ではなく仁佳をご支援くださるのですか?」


「どちらにも支援などせぬわ」


「えっ……では、何故……」


「一国のみの味方などと小さき事で、我等は動いてはおらぬのじゃ。

強いて申せば人、皆の味方じゃ」

のぅ、とクロを見る。


「そうだな。天人も魔人も人も、皆が平穏に暮らせる世界にしたいよな」


「ですので、まずは仁佳と東の国の戦を終わらせたいのですが、何故、二国は争っているのですか?」


「先代皇帝が起こした戦ですので、詳しくは……

ただ、父は戦を好んではおらず、先方さえ調印してくだされば、終わらせたいと申しておりました。

私自身も、このような無益な戦など、早急に終わらせたいと願っております」

皇太子が答えた。


「安心致しました。

戦の終結に向け、力を合わせましょう」


(アオ兄、上)(アオ、襲撃だ)


(うん。見つかってしまったみたいだね)

(キン兄さん、クロ、ここを頼みます)


三人、外に出て竜体になり、クロは幌の上に留まり、領域供与を発動した。

アオとサクラは上昇すると、馬車と、魔物にされていた者達を包んだ光の球を半球にした牆壁で覆い、


更に上昇して、魔物達に光を浴びせた。


アオとサクラは牆壁を拡げ、たった今、元に戻った人々を包んだ光の球をも覆うと、

「姫、聖輝水を頼むね」

光の球に掌を当て、治癒と回復の光を注いだ。


姫とクロが聖輝水を配り始める。

慎玄は顔を隠し、回復に加わった。


皇族達が出て来た。

「竜……」「人を助けている……?」


皇女が光の球に駆け寄った。

「あの……私にも、お手伝い出来ますか?」


(かたじけ)ない。

この水を飲ませて欲しいのじゃ。

両軍混ざっておるが、今は分け隔てのぅお願い致す」


「分かりました」


皇后と皇子達も入って来た。

「この方々は……?」


「格好からして、戦場より拐われ、魔物にされておったのじゃろぅな。

戦場ならば、少々の不明者など気にも留められぬからのぅ。

じゃから戦など、早く終わらせねばならぬのじゃ」


「竜は?」


「我等、人の友達じゃ♪

竜は居らぬ、などと信じさせられておったが、竜は、人の世をずっと護ってくれておったのじゃ。

妖狐も(しか)りじゃ。人を化かしたりなどせぬ」


「騙されていた、と?」


「目の前で、この者達を助ける為、全力で光を当てておる竜を見れば解るであろぅ?」


帝都の方角から光が迫っていた。


青竜が掌を離し、牆壁を少し開けた。

そこに疾風の如く駆けて来た妖狐が入った。

妖狐(紫苑)の背では、珊瑚が人に光を当てている。


「忍頭殿、すぐ治しますから!」


青竜(アオ)は人姿になり、治癒の光を当てながら並走し、

「あの光の中へ!」

妖狐と共に、光の球に駆け込んだ。


「クロ、供与頼む!」


「えっ!?」


「なに考えてんの?

クロ兄、領域供与だよ~

発散させずに、光の中だけに集中してねっ」


「あ……そっか。よしっ!」


供与を受け、アオとサクラの治癒の光が強まる。


霧影(キリカゲ)殿!?」皇太子が駆け寄った。


肩を貫通した傷が、見る間に塞がっていく。


「如何なされたのですか?」


「私は……貴方様の槍にて貫かれたのですが……」


「私の!?」


「今は、あまりお話しなどなさらない方がよろしいかと。

代わりに、私共が見ました事をお話し致します」

紫苑も人姿になる。


「忍頭殿は、当方の くノ一との約束通り、進言をなさりに、お城へと入りました所、偽の皇太子に襲われたのでございます」


「咄嗟に避けた為、肩で済みましたが、あれは本当に殺そうとしておりました」


「ですので、二撃目を突き出す間に、お連れした次第にございます」


「もう一度、城に潜入致しますが、おそらく皆様の偽者が、この国を動かしているのでしょう」


「ならば、これだけは……

この半年、皇帝様の御姿を拝見致しておりませぬ。

皇族方の御様子が変わられたのも、同じ頃。

皆、偽者だと分かり、合点がいきました。

どうか、本物の皇帝様をお救い下さいますよう、お願い申し上げまする」


「大丈夫、最初(はな)っから、そのつもりだっ」


「紫苑さん、珊瑚さん、たぶん皇帝さんの偽者は作れなかったんだと思うんだ。

たま~に、そゆヒトいるから」


「いらっしゃれば御本人」

「という事ですね?」


「うん♪」





凜「あれ? 慎玄さ~ん」


闇「其は誰ぞ」


凜「もしや……龍神帝王様?」


闇「何故その名を?」ギロッ!


凜「小耳に……いえ、それより、この御名、

  少々恥ずかしくは御座いませんか?」


闇「其方も、そう思うか……

  配下が勝手に、そう呼ぶのだ」ため息……


凜「然様でしたか。

  ご自身で名乗ったりは?」


闇「必要無かろう。

  いずれ全てを統べる私に名など」


凜:いや、まだ統べてないし~

  だいたい、不便だから配下が勝手に

  呼ぶんでしょ?

 「王子達は『魔王』と呼んでいますが、

  それは?」


闇「何とでも呼ぶがいい。

  いずれ『神』と言えば、

  私の事となるのだからな」


凜「では『龍神帝王』も、お認めに?」


闇:ため息……


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