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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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島の夜10-アカとサクラ②

 前回まで:アカが引っ越しの片付けをしつつ、

      島での事を思い出しています。


 こうして、キンとアカだけは、サクラから話を聞く事となった。


アオとサクラが、人界の任に就く迄に調べていた事、初降下の日にアオに何があったのか、

アオとサクラの封印について、など、話せる限り、サクラはキンとアカに話した。


キンも初耳な内容も多く、キンもアカも、動き回る三人には、話す事が出来ないと、口止めの要を成さない程に、強く感じていた。

同時にアカは、これまで己を護る必要など微塵も感じられず、放置していた天性・堅固が、己の為ではなく、アオとサクラを護る為のものである事も理解した。



「キン兄、アカ兄、いろいろ隠していて、すみませんでした」


「いや、アオと二人で、そこまで調べていたとは思いも寄らなかった。

全てを任せてしまって、すまなかった」


「いえ、頼りもせず、勝手に動いてしまったのは、俺達ですから」

もう一度、頭を下げる。


「それは、危険過ぎるからなのだろう?

アオの考えそうな事だ」


「アカ兄……」


「怒っているわけではない。

呆れる程に優しくなったものだと思っただけだ」


「俺が生まれる前のアオ兄って……

噂は聞くけど、想像できなくて……」


「だろうな」


「アオは……

幼い頃から、三界に平和を齎すべく必死に生きてきた。

それ故、冷徹、非情であると誤解されていたのだ」


「それが、どうして……

もしかして、俺が生まれたから……ですか?」


「何故、そのような事に繋がるのだ?

全く関係無い。

むしろ、サクラが生まれたから、アオは救われたのだ」


「だが、何が有ったのかは、話せないのだろう?

俺が席を外せば、サクラには話せるのか?」


「いや……アオが話す気になる迄は話せない」


「ふむ。

まぁ、アオは生き急ぎ過ぎていたのだから、今暫く、立ち止まろうが問題無いだろう。

その原因となった事すらも忘れている今は、ある意味、幸せではないか?」


「確かに、そうだな」


「今は、アオの過去より、未来だ。

力を戻させねば進めぬ。

俺達が、戻せるだけの力をつけねばならん。

キン兄、三人を導いてくれ」


「ふむ。それは確かに、私の役目であるな。

サクラ、皆の天性は知っているのか?」


「知っています。

ただ、キン兄、アカ兄と違って、開くための土台作りから、しないといけないので――」


「その導き方を教えて欲しい。

サクラはアオを護らねばならないのだからな」


「はい。では――

フジ兄は、どんどん薬を作る事と新しい技を覚えていけばいいと思います」


「適した技は有るのか?」


「何でもいいです。

あ、豪速(ゴウソク)とか極烈火(ゴクレッカ)紅蓮撃(グレンゲキ)なら、属性も難易度も、ちょうどいいと思います」


「先に、俺が覚えよう」


「アカ兄なら、すぐできますよ」

サクラはアカの額に掌を翳した。


「ふむ。上空に連れて行け」


「はい」アカの肩に掌を当て、曲空。




 二人は、すぐに戻った。


「では、フジの技は、アカに任せる」


「ふむ」


「サクラ、雷でも同様の技が有るのだろう?」


「はい。

極迅雷(ゴクジンライ)裂空撃(レックウゲキ)です。

キン兄、知ってますよね?」


「そうか。ハクに教えればいいのか?」


「はい。

ハク兄には、キン兄の真似をしてもらうのが、一番いいです」


「ふむ。ならば、ハクは任せろ。

クロは、どうすればいいのだ?」


「はい……問題は、クロ兄なんです。

天性が、とても大きい上に、未開の力が多過ぎて、手の着け所が分からないんです」


「それでも考えている事が有るのだろう?」


「一応は……でも、どうすればいいのかは……」


「言ってみろ」


「はい……そうですね。

俺では導けませんから、キン兄、アカ兄、お願いしますね。

クロ兄には、護りたいと思える方が必要だと思うんです」


「む!?」「それは……」


「はい。

大切にしたい、護りたい……そういう気持ちが必要なんです。

ハク兄では、先を行き過ぎているので、キン兄とアカ兄なら、ちょうどいいと――」


「まさか……知っているのか?」


「はい。

結界が確かな長老の山にお住まい頂きたく、お話しさせて頂きましたよ」


「いつの間に……」


「試練の山の後、そんなこんなしていて、試しに人界に行く事もできなかったんです。

俺達が魔界に近づけば、狙われるのは目に見えていますので」


「そうか……」

「もしや、アオの指示なのか?」


「はい。

アオ兄は、他の事で動いていましたから。

俺は動いただけなんです」


「アオも知っているのか?」


「どうでしょう……

アオ兄は『可能性が有るから調べて』と言っていたので、何方が、までは知らないのかもしれません」


「ふむ。アオならば、納得だ」


「しかし、こればかりは、本人の気持ちだ」


「サクラならば、クロの近くに居てもおかしくはない。

導いてやれないのか?」


「無理ですよ。俺はアオ兄を護りたいので。

それに、そういうのは平和になってから、と決めていますので。

それ以上に、あのフリをしている俺では、そんな話なんて、できませんよ」


「それは……そうだな」


「しかし、俺も向かぬ」


「それは、私もだ」顔を見合せ、ため息。


「俺、そろそろ行かないと。

ヒスイだけだから。

それでは、お願い致します」礼。そして曲空。




「どうする?」


「アカの方が、クロに近いではないか」


「ロクに話した事も無い」


「同じくだ」


再び、ため息をつく二人だった。



――――――



 どうやら、あれは杞憂に過ぎず、

 クロにも護りたい者ができたようだな。


 しかし、時に任せられる程に

 猶予が有るのか……

 今度は、それが問題だな。


「だいじょぶ~」


 ん? いや、今度こそ寝言か?


「クロ兄、止まれないヒトだから~」


 確かにな。


「単純なトコがぁ、いっちば~んイイトコ~♪」


 本当に寝言なのか?


「知らな~い」


(サクラ、まだ起きているのか?)


「クロ兄、おかわり~♪」


(サクラ?)


「なんで、ヒトデなのぉ?」


 どんな夢だ?


「アカ兄も食べるぅ?」


 ヒトデなら要らぬが……


「おいしいよ♪」


 ヒトデがか!?


「ごちそうさま~♪」


(サクラ、ヒトデ……)いや、寝言だな。


アカも目を閉じた。



――――――



 アカは片付けの手を止めた。

炉の内を神眼と掌握で確かめる。


 流石、ここの炉は効率が良い。


満足げに微笑み、片付けを再開した。


 あの、寝言のサクラが、

 本当のサクラならば、

 振りのサクラも、あながち、

 振りのみではないのだろうな。


 ただ……笑顔だけは……


 アオにも、サクラにも、本当の笑顔を――


 などと、烏滸(おこ)がましいにも程が有るな。

 俺なんぞに何処まで成せるのか……

 しかし、成さねばならぬ。


 先ずは何を目指す?


 アオとサクラからの依頼は最優先だ。

 他には……

 あの二人には竜宝の力を得る能力が有る。

 だから、高位竜宝を持つ事は重要だろう。


 ならば、ガ剣を全て復元しよう。


 砕け散ったと聞いた蒼牙と朱牙をも、だ。


 蒼牙はアオの剣。

 朱牙はアオの相棒の剣と聞いた。

 この二剣が甦れば、アオの心も甦る筈だ。


 欠片から再生した蒼牙に、

 他の欠片を重ねていけば、

 いずれ、蒼牙は本物になる。


 アオには、特級修練の頃、相棒が居た。

 あのアオを副長にしていた第一班長だ。


 相棒に朱牙を与えたのは、アオだろう。

 その強さに一目置き、

 強い信頼を持っていた事の現れだ。


 当面の目標は決まった。

 高位竜宝を復元出来るだけの力を、

 俺自身を鍛え、得なければならぬ。





凜「アオの相棒の話は、どこから?」


赤「俺は修練が遅かった。

  アオが特級の頃、俺は上級だった。

  二人の活躍は軍内に轟いていた」


凜「それじゃあ、もしかして……」


赤「噂は、色々聞こえていた。

  だから、無言で姿を消したアオを

  心配したのだ」


凜「噂?」


赤「話す気は無い」


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