表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
174/429

仁佳北4-赤虎

 前回まで:紫苑と珊瑚は、両親の幸せを

      願い、踏み出しました。


♯♯ 天界 ♯♯


 アオは、紫苑、珊瑚と共に魔物と戦った後、ひとりで長老の山を訪れていた。


「大婆様、現在、竜宝の再現はアカにしか出来ませんが、人界では、発揮出来ます力は七割が良い所で御座います。

その為、再現の作業にも限界が御座います。

人界の任の最中では御座いますが、魔王との戦を終焉に向かわせる為、アカの作業を天界で行う事が出来ますよう、お力添え頂きたく、お願いに参りました」


「アオも、そのように考えておったか……

私も同じ事を思ぅておったのじゃ。

して、この話……

どこまで持ち掛けておるのじゃ?」


「大婆様にお話しするのが初めてで御座います。

まだ、アカ本人にも話しておりません」


「ならば、ここと城には、私から話そう。

アカの戦力を預かってしまう事になるからのぅ。

兄弟には、しかと話せよ」


「ありがとうございます、大婆様」


「アオ、今日は、サクラは居らぬのじゃな」


「サクラも、こちらでしたら安全と考えているのでしょう。

ご用でしたら、参らせますが――」


「よいよい。

会ぅた時にでも、また遊びにおいで、と伝えてくれるかのぅ」にこにこ


「はい」にっこり


「話を戻すがの、アカの件じゃが――」



♯♯♯♯♯♯



 その頃、当のアカは――


サクラと共に忍屋敷を訪れていた。


「お頭さ~ん、剣 持って来たよ~♪」


「各々、持つ者の名を刻んでいる。

渡して欲しい」


「名乗ってもおらぬのに……何故、名を?」


「容易い事だ。

これらは、持つ者の力に合わせて作っている。

己が命を護る時を除き、人を殺めぬ、と誓える者にのみ渡せ」


「もしも殺めてしまったら……?」


「それなりの剣だ。

人の血を吸わせたなら……どうなるか、想像出来るだろう?」ニヤリ


「……解りました。誓わせます」


「うむ」


「あの……ひとつ、伺っても……?」


「何だ?」


「赤虎様の御師匠様は、金虎という人ですか?」


「師匠は銀虎と申す竜だ。

初代・銀虎の師匠が、金虎だ」


「伝説は真であったか……」


「サクラ、行くぞ」「お頭さん、またね~♪」



――馬車。


「何故、ここに?」「キン兄に呼ばれた~」


「揃ったな。

アカ、暫く、長老の山で作業して欲しい。

皆の了解も、王や長老の許可も得ている」


「うむ」立ち上がる。「アオ、頼む」

「俺も行く~♪」(せ~のっ)

サクラも一緒に、引っ越しに行った。



――工房。


荷物を纏めながら、

「アカ兄、あの剣、人の血を吸わせたら、どぉなるの?」


「何か起こると思うか?」


「思わな~い」


「その通りだ」


「そっか~♪」


「アオ、お前なんだろ? 仕掛人」


「必要だと思っただけだよ」


「何でも持って来い」フッ


「ありがとう、アカ」にこっ




♯♯ 長老の山 ♯♯


 工作室の前に荷物を積み上げ、アオとサクラは蔵に行った。

アカが工作室に入ると、祖父(シロ)が待っていた。


「新たな工房を建てるからの。

それまで、ここを好きに使えばええ」


そう言うと、シロは開いている隣室の扉に向かって手招きした。


「ワカナ……」


「今日から『赤虎』を 正式に名乗ってよいそうじゃ。

王と師匠からは、許可を貰ぅとる。

それと……これに署名してくれるかの?」


「ん?」……!!

赤いので、よく判らないが、赤面。


「何じゃ? 嫌なのか?」


「全て、アオか?」慌て気味に署名する。


「リリスさんと一緒の方が、ええのじゃないかと言うてな」


「ワカナ、それでいいのか?」


ワカナが大きく頷く。

「ひとりでなんて、不安過ぎるわ……」


「なら、大婆様に挨拶に行こうかの」

シロが先に立ち、工作室を出た。


アカとワカナが付いて行くと――


大婆様の部屋の前では、モモ、フジ、リリスが待っていた。




♯♯ 仁佳 北部 ♯♯


 東の国の軍では――


「軍師殿、兄上の軍を収容した為、一旦 下がり、態勢を立て直そうと思うが、如何か?」


「善き御考えと存じます」


「何処に移るのを最善とする?」


「現地点の北に御座います山地を盾とし、主軍より少し前の、こちらでしたら、最前線も保て、立て直しも可能かと存じます」

地図を差しながら、意見を述べる。


「ふむ……それならば面目も保てような……

よし! 速やかに移動せよ!」




 子供達に、その事を伝えていると、黒い竜だけが再び現れた。


「ふぅん、なら、このまま運ぶか。

紫苑、珊瑚、念網 掛けといてくれ」


黒竜が光の塊ごと消え、黒竜だけが再び現れた。


子供達が軍全体に掛けた光る網を、黒竜が掴んだと思ったら、眼前に山が迫る森の中に居た。


皆、呆然としている。


「クロ! やり過ぎじゃっ!!

皆が腰を抜かしておろぅ!!」光の中から声。


「仁佳の人達は、もう、竜なんて見慣れてんじゃねぇか。

こないだ、アオとサクラが運びまくってたし」


「此は、東の国の軍じゃっ!!」


「あ……やっちまった……」


大きな竜が、人の娘に叱られている。


呆然としていた兵達から、笑い声が漏れる。


「頼むっ! 説明しといてくれっ!」

拝んで、逃げようとする。


「逃がすかっ!」竜に飛び乗る。


「わっ! やめろっ!!」竜が落ちた。


「参ったか♪」ふふん♪


「ってぇなぁ……」弱々しい声。


笑いが湧く。


 竜とは……

 厳つい身体と、強大な力を持ちながら、

 優しく、愛嬌のある者達なのだな……



桜色の髪の若者と、同じ顔をした金の髪の若者が現れた。


「あ……また、じゃれてる……」

「治癒を補充したら、放っといて戻ろう」

「だね~♪」


二人は、光の塊に両掌を当てた。

暫く、そうしていたが、私に手を振り、消えた。




♯♯ 神界 ♯♯


【あら? ヒスイ、どこに行くの?】


【最高神殿だよ】


【何しちゃったの?】


【何もしていないよ。

そんな事で呼ばれるのはスミレだけだよ】


【ひどぉい】


【急ぐからね。

スミレ、早く神に成ってよ】


【ちょっと! ヒスイってば!】



♯♯♯



【ヒスイ、こちらで、あちらの神と共に修行してください。

きっと、その方が早く神に成れますよ】


【ありがとうございます、最高神様】


【背中合わせで、同じように、この湧気鈴(ユウキリン)を鳴らし続けてください】


【はい!】


【アメシス様、高めた気を、彼と合わせるよう努めてください】


【はい、最高神様】



 ヒスイとアメシスは、背を合わせ、各々額の前に湧気鈴を浮かせ、気を高めた。

二つの鈴の音が調和し、美しく響く。


【確かに、これならヒスイの覚醒は早くなるわね】


見守りの女神が、最高神だけに話しかけた。


【一日も早く、サクラの助けをしなければなりませんからね】


【スミレは、早めないの?】


【彼女は、もうすぐ覚醒しますよ】


【お母様にお願いしましょうか?】


【そうですね。鍛えて頂きましょう。

私が見守りますので、お願いします】


女神は頷き、姿を消した。





凜「伝説の金虎さんって――」


金【儂が、どうした?】


凜「うわわっ! 出たーーっ!!」


金【騒ぐでない。儂が三代金虎じゃ】


凜「って事は幽霊ですよね?」


金【話すだけじゃ。問題無かろう?】


凜「まぁ、そうですね……

  どうやって、天界に行ったんですか?」


金【儂が生きておった頃は、竜なんぞ

  そこいらじゅうに飛んでおったからの。

  連れて行けと言うたら、運んでくれたわ。

  竜達も鍛冶をし、刀剣も作っておったから

  教える事にしたんじゃ】


凜「で、竜のお弟子さんが銀虎?」


金【金虎は人に継いだからの】


凜「あ、そっか。じゃあ、今も『金虎』は

  続いてるんですか?」


金【いいや。途絶えてしもうた】


凜「金虎さんが、また教えればいいんじゃ

  ないですか?」


金【考えておる。

  だが、平和になってからじゃ。

  期待しておるぞ、赤虎】


 金虎は、ニヤリとして消えた。


凜「アカ……期待してるって……」


赤「ふむ」ニヤリ


凜「『受けて立つ!』ってか?」


 もう一度、アカは不敵な笑みを浮かべた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ