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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
170/429

婚約へ7-アオとミドリ

 前回まで:フジの婚約までのステップは

      完了しました。


予告なしに遅くなり申し訳ございません。

 アオが扉を開けると、ミドリが満面の笑顔で飛んで来た。


「アオ♪ 来てくれて嬉しいわ♪

本当に無事だったのね……心配したのよ」泣く。


「母上、何もお泣きになるような事はございませんから」

肩を抱き、椅子に向かう。


茶を淹れながら、

「将校達が見えた時、私は別行動していただけなんです。

私だけが一度も会えず……ですから、ただの勘違いなんですよ」

やわらかな笑顔を向けた。


「そうなの? 勘違いなのね……良かった……」


茶を置く。

「ご心配をおかけした事を知り、すぐにでも参りたかったのですが、如何せん、人界の任の最中ですので、お会いする事が儘成らず、遅くなりました事、申し訳ございませんでした」


「そう……母を想っていてくれたのね……

それが わかったから……もう、いいわ。

頭を下げていないで、顔を見せてちょうだい」


顔を上げて微笑む。

「このような戦など無ければ、望む時にお会いする事が叶いますのに……」


「そうよね。戦など無ければ……

可愛い あなた達と離される事などありませんものね」


「はい。ですから私は、一刻も早く、この戦を終焉に向かわせたいのです」


「終われば、みんな帰って来ますわよね?」


「勿論です。揃って戻りますよ」


「早く終わっていただきたいわ」


「私達兄弟は七人もおります。

母上がお産み下さいました私達なら、この戦、終わらせる事が叶う筈です。

長い歴史上、誰も成し得なかった事でも、母上の子なのですから、成し得る筈です」


「ええ、私が産みましたもの。

みんな素晴らしい子供達ですわよ」にこにこ♪


「七人で力を合わせ、この戦を終わらせ、母上の元に戻る日が一日も早く参るよう、努める所存にございますので、今は、天界に参る事は難しいのですが――」


「早く任が解かれる為でしたら、私も耐えますわよ。

可愛い あなた達の為ですもの」うるうる


「ありがとうございます、母上」抱きしめる。


「聡明な母上にお産み頂けた事、大変、幸せにございます。

私達は、この任が解かれる日が早く参るよう、儀式などでの帰城も控え、耐える所存です」


「そう……会える機会が減るのね……

でも、終われば、いつでも会えますものね」


「はい。終わりさえすれば、いつでもです」


「耐えますわよ、私」


「母上……」暫しの我慢で、ぎゅっ!




「私の想いをご理解頂けるのは母上だけ……

ですので、打ち明けるのですが……」


「なぁに? 何でも母に聞かせて?」


「近々、兄上方の立太子の儀がございますが、その際、出来る限り儀式を纏める事は叶いますでしょうか?」


「簡単な事よ♪

私から王にお話しすれば、すぐに叶いますわ」


「母上にご相談して良かった……」にこっ


「もっと ないかしら?」


「サクラを除き、兄弟皆、適齢期ですので、今後、婚儀などもあるかと存じますが――」


「そうよね……結婚してしまうわよね……

でも、しないのも心配ですし……」


「その儀式が多く、

何度も帰城しておりますと――」


「任が解かれる日が遠ざかるのよね?」


「母上の聡明さには感服致します」


「わかりましたわ♪

小さな頃から、おねだりなどしなかったアオからの相談ですもの。

母として、力を尽くして、王を説き伏せてみせますわ!」


「ありがとうございます、母上」


「儀式全てに関して、纏めて、簡単に、できる限り無くせばよろしいのね♪」


「はい♪ 母上♪」極上にっこり。


「あ、今夜はお城に泊まるの?」


「いえ……戻らなければ――」


「そう……ね……今は耐える時ですものね。

また会えますわね?」


「戦さえ終われば、いつでも」にこっ


「そうですわね。

その為に、母も戦いますわよ!」立つ。


ミドリが勇ましく出て行こうとして、振り返った。


アオは内心ギクリとしたが――


「良い知らせを待っていてね♪」バタン♪


足音が遠ざかる……


アオは椅子に崩れるように座った。



 子供の頃は、論破する事しか

 考えていなかったけど……


 演技力はサクラの足元にも及ばないけど……


 懐柔……成功かな……?


 疲れた……



 でも……母上も……


 もしかしたら……俺は、母上の事を

 誤解しているのかもしれないな。


 調べてみるべきだな……



♯♯♯



 アオが深蒼の祠で疲れを癒していると――


「やっぱり、ここだったか」


「父上……どうしたんですか?

何か問題でも――」


「いや、問題など全く無い。

これを見せたくてな」紙を出す。


「これは……議事録……」


「正式に可決したよ。

財政的にも大歓迎でな」


目を通しながら「王太子も、ですか……」


「ミドリの押しが効いてな。

やけに張り切っていたが、どうやって味方につけたんだ?」


「一応、息子ですから」にこっ


「一応、夫なんだが、どうにもならんぞ」笑う。


「提案者は俺と母上……連名ですか。

俺の名など出して欲しくは無いのに……」


「それもミドリが譲れないと言ってな」


紙を返そうとすると――


「それは写しだ。皆に見せてくれ」


「解りました」


「アオ、お前は……どうするんだ?」


「今は、魔王との戦しか考えていません」


「そうか。まぁ、アオの道だ。

思うがまま生きろ」


「はい。ありがとうございます、父上」



♯♯♯



 馬車に戻ると、また家賽の小屋が有り――


兄弟達の顔が窓に有った。


窓越しに紙を広げると、


窓が開き、紙が奪われた。


(キン兄さん、千里眼を貸してください)


母に、皆の喜ぶ声を聞かせた。



♯♯♯♯♯♯



 その夜――


「アオ、サクラ、工房に連れて行け」


「何か できてるの?」(せ~のっ)



――工房。


菩銅鏡(ホドウキョウ)は出来ている」

小さな鏡を二つ持って来た。

ルリがアカの頭に乗っている。


解空鏡(ゲクウキョウ)の魂、こちらに頼む」水晶玉を指す。




 大きな鏡が有る暗室を閉めきり、サクラが水晶玉、アオがルリを持ち、向かい合った。


二人が術を唱える。

(解空鏡、移って)


【はい】光が移った。




 アカに水晶玉を返すと、

「次から、魂を持ち込んだら、そうしてくれ。

アオを恋しがって可哀想だ」

アオにルリを渡し、優しく撫で、微笑んだ。


「アカ……ありがとう」ルリをなでなで。


「忍達の剣は、明日の夕刻だ。

解空鏡は時間が掛かるかもしれん」


「たくさん頼んで、すまない」


「それは気にするな。楽しんでいる」


「そうか、ありがとう」


「うむ」(アオ、大丈夫か?)


(俺は大丈夫だよ)


(その名、変えるべきだと思うが――)


(皆は知らないから。このままでいいよ)


(しかし――)ルリと遊び始めたサクラを見る。

(あまり、サクラに心配を掛けるな)


(うん。気をつけるよ)


(一日も早く、神と結べるよう、俺も努める。

まだ、諦めるには早い)


(妖狐王様にも、そう言われたよ)


(妖狐王様に? ならば、尚更だ。諦めるな)


(うん。ありがとう、アカ)



(アカ兄、アオ兄の事、知ってるよね?)


(話す気は無い)


(うん。それは解ってる。

キン兄も何も言わないから、話せない事なんだって解ってる。

だから……俺は知らなくていい。

ただ、俺……どうしたらいいのか教えてよ)


(サクラはサクラのままでいい)


(でも――)


(傍に居るだけでいい)


(俺じゃダメなんだよ)


(誰にも……その代わりは出来ぬ。

しかし、サクラにしか支えられぬ)


(……うん)





凜「なんだか、アオって薄情?

  親を大切にしてないような?

  いや、馬鹿にしてる?」


桃「アオには、まだ、親という者が

  解らないのですよ」


凜「育てたのが蛟達だから?」


桃「それもあるでしょうね。

  それに、竜は卵生ですし、温めなくても

  孵化しますからね」


凜「だから、本能的に、ぬくもりを知らない

  ままなのかなぁ……

  でも、兄弟は仲良しですよね?」


桃「そうねぇ。アオは、兄弟を繋ぐ事には

  熱心だったわね」


凜「どうして、親には冷たいのかしら……」


桃「それでも、何か気づいたようですから

  様子をご覧になって頂けるかしら?」


凜「はい♪ それは、お任せください♪」


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