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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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婚約へ6-家族の輪

 フジも浮かれたり、嫉妬したり、表情豊かになりました。


♯♯ フジの屋敷 ♯♯


 王と王子達が会食の場に入り、席に着くと、空龍、雪希、リリスも、魁蛇に案内されて来た。

卓上が料理で華やぐ。


(あの二人……)(うん……)

アオとサクラが、給仕している二人を目で追う。


髪の色が普段と違うし、顔の殆んどを白い布で覆っているが――


(なぁ、あれ、クロだろ?

あっちはアカか?)


(だね~♪ ハク兄も気づいた?)

(アカ兄まで、なにしてるのぉ?)


(クロに掴まれた)曲空されたようだ。


(髪は?)


(クロが煩い)仕方なく変えたらしい。


(大変だねぇ)


(まぁ、いいさ)


(一緒に食べよ~♪)


(いや、フジの顔は見た。すぐ戻る)


(連れてってあげるから~、ねっ)

身を低くして、ススッとアカの傍に行き、前掛けの裾を引いた。

(ほら、父上も気づいたし~)


(む……)


「リリスさん。

フジを受け入れてくださって、ありがとう。


空龍様、雪希様、

この料理は、フジの兄達が、二人を祝福して作ったものです。

どうぞ、お楽しみください。


クロ、アカ、ありがとう。

着替えて来なさい」



 親達は和やかに語り合い、兄弟達はフジをひやかしつつ、祝福しまくった。



「ん?」「あれ?」「なんか外が――」

「騒がしいな」「はい」「叫び声か?」

「もしかして――」全王子、立つ。


「お前ら! 逃げろっ!!」王、先に逃げる!


王子達が、王を追って窓から飛んだ。


「フジ! 説明と挨拶は任せた!」

窓の外から王の声。


「ここに居らしてくださいね」にこっ

フジは、ひとりだけで隣の部屋に入った。


騒々しい足音が迫る!


フジは機を計り、扉を開けた。

「母上様、いかがなさいましたか?」平然。


「こちらに、王が いらっしゃるのでしょ!?」


「いえ、お見えになっておりませんが……

本日は確か、天兎の国では?


それより、母上様、私と会った事が知れたら、お咎めを受けてしまいます。

屋敷の者に見つからぬうちに、城へお戻り下さい」


「あ……そうね……

王は天兎の国でしたか……そう……


フジ、見ないうちに逞しくなりましたね。

人界の任、無茶しないでね」うるうる


「はい、母上様」にっこり

そっと抱きしめ、

「母上様も、お身体にはお気をつけ下さい」

背を擦った。


(サクラ、もう十分、離れましたか?)


(うん♪

天界の門に曲空したから、もぉだいじょぶ~♪

ありがとね、フジ兄♪)


母から体を離し、

「それでは、お急ぎ下さい。

私は気づかなかった事に致しますので。

お見送りは、こちらで失礼致します」恭しく礼。




 フジが会食の場に戻ると、蛟達が片付けていた。


「お騒がせして、すみません。

お恥ずかしい所をお見せしてしまいました。

こんなですが、本当に王家なんです」ははは……


「親しみが持てて安心致しました」空龍が微笑む。


「母は、全ての儀式を完璧にしないと気が済まない方ですので、まだ、内密に進めているのです。


私達は今、人界の任に就いております。

その任の間は、王子は城にも立ち入れず、王と王妃に会う事も許されておりません。


ただ、特級儀式の時だけは別ですので、王と王子が同席していれば、そういう事となってしまいます。


婚儀関係も特級儀式なのです。

ですから、父も兄弟達も、慌てて逃げてしまったのです。


今日の書面で、十ほどの儀式を省略しました。

残りは母も同席しなければなりませんので、上二人の兄達が儀式を終えるのを追うように、こなしていくつもりです」


「キン様とハク様も、ご結婚されるのですね?

おめでとうございます」


「はい♪ ありがとうございます。

兄達の儀式は、公開されるものも多いので、ご覧になってくださいね。


今日は、お疲れになられたでしょう。

お部屋にご案内致します」


「こちらのお屋敷に、ですか?

よろしいのですか?」


「私の家ですので、もう、皆様の家です」


「フジって……本当に、王子様なのね……」


「この子ったら、今頃なの?」雪希が笑う。


「まだ、実感なんてないわよ」ため息。

「今日一日、夢の中みたいよ……」


「すみません。

盛り沢山になってしまって……」


「フジ様、お立場故に致し方ない事は承知しておりますから、この子の言う事は、お気になさらないで下さい」

雪希が困り顔。


「一晩、眠れば大丈夫でしょう。

フジ様もお疲れになられたでしょう?」


「私は慣れておりますから大丈夫ですが……

あの……『様』は、なんだか恥ずかしいです」

頬を染めて俯く。


「ね?

だから王子様だって実感、まだ持てないのよ。

腰が低過ぎるんですもの」両親を見る。


雪希が楽しそうにクスクス笑い出した。

リリスも一緒に笑った。


フジは、そんな二人を見て、嬉しくなって笑い――


空龍は申し訳なさそうに堪えていたが、とうとう笑ってしまった。


「私を家族の輪に、入れて頂けますか?」


リリスが、両親の間にフジを押し込んで、三人をぎゅっと抱きしめた。


「私の大切な家族……」


「リリス……」三人も抱き返した。




♯♯ 天界の門 ♯♯


「アオ、これから婚儀関連は、どうなるんだ?」


「クロの好きなようにすればいいよ」


「皆の分、交渉してくれたんじゃねぇのか?」


「ハク兄さんは王太子なんですから、省略なんて出来ませんよ」


「アオ! オレもフジみたく省略したいっ!」


「って、俺に言わず、父上に言ったらどうだ?

そこにいるんだから。アカみたく――」


「あーっ! アカ、抜け駆けっ!」


クロが、父と話しているアカに向かって飛ぶ。


「父上っ、オレも略式でお願いします!!」


「アオ、二人が焦っているのだが、皆には、どう伝えたのだ?」父が笑う。


「いえ、まだキン兄さんにしか伝えていません。

基本、各々好きな形ですればいいと思っているので」クスクス♪


「ひっでーなっ! アオ!!」クロが戻った。


「王太子は少しだけ省略。

他は、これからのフジを参考に考えていけばいいって話になっているよ」にこっ♪


「母上も納得したのか?」


「これからだけど、説得するよ」


「御披露目祝列は?」


「婚約は無し、成婚のみだよ。

でも、クロは、こっちより人界の方が大変なんじゃないのか?」


「うっ……」

「で、一回だけでいいのか?」


「ハク兄さん、王太子は別ですよ。

でも、立太子と婚約を同時にすれば、そこは一回で済みますよね? 父上」


「そうだな。纏めればいい」


「午前中に立太子と婚約式、午後、戴冠式。

翌日、御披露目という事でどうですか?」

アオがキンとハクを見る。


「そこまで纏められれば十分だ。

ありがとう、アオ」


「明るい話題提供も、王族の務めなんだろ?

しゃーねぇよなぁ……

で、いつ母上と対決するんだ?」


「対決って……いつでも構いませんが――」


「ミドリなら、いつでも空いてるぞ。

これから対決するか?」


「城に入ってもいいのですか?

それとも他の場所で?」


「外に出すと迷惑必至だからな。城に来い」


「解りました。では」父の手を取り、消えた。


「アオは、やっぱスゲーな……

平然と行っちまった……」


「クロも少しは見習え」ハクが笑う。


「でも……アオ兄、結婚する気あるのかなぁ……」


サクラの言葉で、考え込んでしまった王子達だった。




♯♯ 神界 ♯♯


【スミレ♪ 私も今日から、ここよ♪】


【追いつかれちゃったぁ】


【一緒に頑張りましょ♪】


【張り切ってるわね~】


【だって、アメシス様が天竜王子様と絆を結ばれたって聞いたから、私も早く神に成りたいの♪

私、助けてくださった王子様と絆を結びたいのよ】


【助けて? 誰かと会ったの?】


【私ね、魔物に捕まってしまって……

黒い鱗の天竜王子様が助けてくださったの】


【クロだわ……】


【あ♪ やっぱり知ってたのね?♪】


【私の絆竜の弟なのよ】


【良かったぁ~

スミレの名前 言っちゃったから、どうしようって思ってたのよぉ】


【つい、言っちゃうわよね~】





孤「天尊、儂は間違っておったのであろうか?」


桔「いいえ、『越えるべき』その御判断は

  間違っていようとは存じませぬ。

  三界の光は、そうそう容易く

  消されたりなど致しませんよ」


孤「そうか……

  ならば、もう暫し見ていよう。

  過去のようには封じなかった事が

  正しかったと信じて、な」


桔「はい。では、こちらも、そのように」


孤「時流は、儂の封印を揺さぶる方向に

  動いておる。

  しかし、未だ、その時ではない。

  頼む、護ってくれ」


桔「はい。仰せの通りに」


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