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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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婚約へ5-フジの屋敷

 前回まで:リリス達は白い竜(リリィホワイト)と話しました。


♯♯ 竜骨の祠 ♯♯


 アオ、フジ、サクラは、竜骨の祠の前で、笛を奏でていた。

三曲終わった時、サクラが笛を下ろし、微笑んだ。


「フジ兄、父上がフジ兄の屋敷で待ってるみたいだよ~」


「えっ!? まだ、約束の時間には――」


「待ちきれなかったみたいだね」

アオも微笑んだ。


「掴まって~♪」

「サクラでも、俺でも構いません」


「んじゃ、父上に♪ せ~のっ♪」



――フジの屋敷。


「お♪ 来たか。

なら、アオとサクラも、このまま立会人だ」


(人の姿の父上って、なんだか新鮮だね)

(だね~♪)


(ん? さっき父上は『も』って言ったね)


二人、気を探る。


(皆、来ているね)

(キン兄だけじゃなかったね~♪)


(皆、気を消しているから、俺達の態度でフジに気づかれないようにしないとね)

(うん♪)


「せっかく早く揃ったんだ。

会食の前に署名だけ済ませたいんだが、いいだろうか?」


フジが頷いた。



♯♯♯



 隣室ではキンとハクが、王と前王の署名が既に入っている沢山の書面に、王太子として署名をしていた。


「アオ、サクラ、リリス殿と御両親様に説明を頼む。

フジは全てに署名しなければならぬからな」

キンが手を止めて言った。


(昨日は束だったけど、広げると、こんなに た~くさん あるんだね~)

(名前が長いから大変だね)


 書面も改善しよう。

 名前の長さも――


 そうだな。活動再開の手始めとしては、

 内々の事も、いいかもしれないな。


(俺、ちゃんとしたらリリスさん驚かせるし、いつものだと不安にさせちゃうから、空龍さんと雪希さんに説明するね)

(解った)


 各々の書面に添えている、人界の文字に訳した紙を見たリリスが、

「これ……全部、フジ様の字よね……」呟いた。


「そうですね。

内容は、この紙を読んでください。

署名欄は、ここです」指す。


「難しい言葉もありますから、何でも聞いてくださいね」にこっ


「ひと言目から……すみません」俯く。


「あ……人界には無い言葉ですから。

一緒に読みましょう」にこにこ

(フジ、お願いだから睨まないで)


(あ……つい……すみません)皆には謎の赤面。


兄弟の署名が済んだ書面が、次々と回ってくる。


(フジ、リリスさんを焦らせて、どうするんだい?

リリスさんを盗ったりしないから落ち着いて。

せめて、見えない所に積んでくれないかい?)


(はい……すみません)更に赤面。


「どうしたんだ? フジ」

ハクが小声で言い、ニヤニヤ。


「べっ、別に何もっ」


(ハク兄さん! 大事な時ですからっ!)

(そぉだよ~。フジ兄で遊ばないでよぉ)


キンが立ち上がり、リリスの署名が必要なものと、そうではないものに分け始めた。


(ハク兄さん、終わったらサクラを手伝ってくださいね)


(はいはい)


(『はい』は、一回!)アオとサクラ。


(は~い)アオとサクラがキッと睨む。


(はい……フザケません)


ハクが最後の一枚を書き終え、立ち上がった。


(ハク兄♪ 『真面目なお医者さん』なんだよねっ)

「お願いします」にこにこにこっ♪


(あ……ああ)

雪希への説明を引き継いだ。


各々、真面目に説明しつつ――

(だいたいねぇ、俺の真似して戦力外のフリしようとしても遅いって。

ハク兄は、とっくに標的なんだからさぁ)


(やっぱ分かるか?)


(バレバレ~

ニワカ仕込みで騙せる相手じゃないんだから、普通にしてていいんじゃない?)


(そっか……ま、そうだろなっ)


(それで、護竜槍 見つかった?)


(ああ、場所だけは、な。

翁亀様が仰った通りだったから、すぐに判った。

あとは、どうやって手に入れるか――つーか、まずは、どうやって入るか、だ)


(やっぱり深神界(フカシンカイ)なんだね?)


(ああ、そうだ。

境界で小願璧(コガンヘキ)を翳したら、光ったよ)


(入るのも、命の保証なんて無い大変さだけど、そこに住んでる神の持ち物だとしたら――)


(厄介極まりねぇだろうな)


(ん~ 、頼んでみよかな……)


(何か、いい手があるのか?)


(まぁね。ウンと言ってくれればいいけど……)


(サクラにしては自信無さげだな)


(俺、自信あった事なんて無いよぉ)


(そうは見えねぇけどな)


(買い被り過ぎだよ)


(ま、そういう事にしといてやる)


アオが部屋から出ようとしていた。


(アオ兄、リリスさん終わっ――てないねぇ。

追い出された?)


(そんな所だよ)


(暑苦しいヤツらだなぁ)


(ハク兄だって、ミカンさんと一緒だと おんなじでしょ)


(っせーなっ!)


「サクラ、代わろう」


「ありがと、キン兄♪」

(アオ兄、父上トコ行こっ♪)



♯♯♯



「おっ♪ 王様達、竜宝の国はどうだった?」


「父上に、そんな呼び方されるのって、すっごく変な感じだからぁ~

その呼び方やめてぇ~」


「そうか。残念だな。

さっき聞いて、嬉しくて仕方ないんだがな。

それで、コハクに話していたんだ」

携行用千里眼を仕舞う。


アオは苦笑して、

「形を失った竜宝の多さに圧倒されました」


「た~くさん、ついて来てくれたよね♪

今回は時間が限られてたけど、今、アカ兄にお願いしてる物が再現できたら、いつでも好きなだけ いられるから、欲しいものあったら言ってね♪」


「考えておく」にこにこ


「竜宝薬も沢山ありましたので、その製法などを、フジの大器まで運ぶ方法を模索しています」


「わわわっ!」

「竜宝薬が、どうしたのですか!?」

フジが突進して来て、サクラに覆い被さった。


「あとで、ちゃんと話すから~」きゃは♪

(フジ兄に、こんなのされるの初めて~♪)


「母上に見つかる前に終わらせないとね」

(嬉しくて仕方ないんだね♪)


「あ……そうでした」赤面。


フジとサクラの塊を見て、キンとハクが笑う。


皆で笑っていると、扉が叩かれた。

王子達が素早く身を隠す。


魁蛇(カイダ)が現れた。

「会食の準備が整いました」


安堵の吐息と共に王子達が現れる。


王の笑い声に連れられて移動した。




♯♯ 神界 ♯♯


【アメシス様、次は、この鈴の音を絶やさず鳴らし続けてください。

この鈴――湧気鈴(ユウキリン)は、振動や風では鳴りません。

高めた気の力のみが音の源です。

この静寂の祠は、外界の音のみならず、気をも遮断します。

こちらで、修行を続けてください】


【はい。最高神様】


【この修行を成し得るまで、私がアメシス様の代わりを致します。

心置きなく、集中してくださいね】


【ありがとうございます】深々と礼。


最高神はアメシスに微笑むと、女神の方を向いた。

【それでは、見守りをお願いしますね】


【お任せください】にっこり



♯♯♯



【最高神様!】


最高神殿に戻るなり、筋肉質な風貌の男神に呼び止められた。


【天竜が深神界近くに来ておりましたが――】


【構いませんよ】にこっ


【いえ、そうではなく、絆を結んでもよろしいでしょうか?】


【おや、珍しい事を……

何も許可など、既に中位の神ならば、自由に結べますよ】


【個紋の有る天竜でしたが……】


【ああ、それで。

その言い伝えには、何の根拠も有りません。

ただの迷信ですよ】


【では――】


【あ……

王子達は、結心(ユウジン)の弓矢を再現しようとしております。

それが成し得たならば、絆を結んでよいですよ】


【試練……という事ですか?】


【はい。必ずや成し得るでしょうからね】


【解りました】

【ならば、儂も、そのように致そう】

初老の風貌の男神が現れた。


【おや……

はい。そのように、お願い致します】


【天界で、見込みの有る孫弟子を見付けたのでな。

絆を結ぼうかと思うたのじゃが、物作りに与える試練、ふむ、良い考えじゃ】


大神が嬉しそうに去って行った。


【あれほどの大神様が……】


【王子達は、闇の神を滅する事を目指しております。

絆を結ぶのでしたら、修行なさいますか?】


【はい! よろしくお願い致します!】





凜「シャルディドラグーナって長いね~」


桜「昔は、長い名前が偉いヒトの証だったんだ」


凜「だから御先祖様のお名前も長いの?」


桜「そゆこと~

  竜は鱗色で名付けるから、

  名前が偏るでしょ。だから個人を特定

  し易くする為にも、長くなるんだ」


凜「でも、王子達は短いよね?」


桜「うん。ここまで単純な名前って

  かえって珍しくなっちゃってたみたい~

  王族では付けてなくて重複しないから

  だいじょぶって、付けたみたいだね~」


凜「アオは? 何してるの?」


桜「考え事~」


凜「改革?」


桜「そぉみたい~」


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