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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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婚約へ3-リリィホワイト

 前回まで:フジは婚約申し込みをしました。


♯♯ 竜骨の祠 ♯♯


 フジが拝聴の間で祈りを捧げると、虹の煌きを纏った真っ白な竜が現れ、人姿になった。


「リリィホワイト様、矢太さんの御子孫、空龍さんと奥様の雪希さん、そして私の婚約者となりますリリスさんです」


【お会いする事が叶い、喜びが満ちております】

にこやかに会釈した。


「本物……」リリスが言葉を失う。


「はい、あのお話の白い竜です」フジが説明。


「お綺麗な方ね……」雪希も嬉しそう。


「ありがとうございます」にっこり


「ああ……失礼致しました。

あまりに驚いてしまいまして……

お会い出来て光栄です。リリィホワイト様」

空龍が、やっと言葉を発した。


【ふふふっ♪ 驚きますよね♪

幽霊ですものね♪】楽しんでいるようだ。


【私、ずっと人とお話ししたくて、たくさん待ったわ】にこにこ♪


【語り継いで下さって、ありがとう。

あのお話から、お嬢さんに私の名を?】


「はい。あのお話が大好きで、お名前を頂いてしまいました」


【嬉しい!】瞳をキラキラさせる。

【空龍さんのお名前も、あのお話から?】


「はい。

母も、あのお話が大好きで、『リュウ』という音を入れたかったそうです。

それと、妹はタツという名前なんです」


【素敵! 本当に嬉しいわ!

私……人の心から竜は完全に失われてしまった……そう思っていました。

ですから、今、とてもとても嬉しいのです】

涙が流れる。


「あのお話……本にするんです。

……構いませんか?」

リリスが恐る恐る尋ねた。


【そうなの!? なんて素敵な事でしょう!】


「王子様方から原稿を頂いた時は、本当に驚きましたけど……

自分達の名前なんかで、世に出していいものか、迷いましたけど……」

リリスは顔を上げた。


「おとぎ話でもいい。

最初の一歩として、竜を人の心に甦らせて、いつか人界の空を竜が自由に飛べたらいいな、って……そう思って、出す事に決めたんです」


リリィホワイトは何度も大きく頷いた。

【ありがとう、リリスさん。

人界の空を自由に――夢のようです!

私が矢太さんを乗せて飛んだように、また、人を乗せて 飛べたなら……

ああ……生き返りたくなりました】うふふ♪


「先日、王子様方が、沢山の人を助けた後、背に乗せて運んだんですよ!」


【まぁ! そんな事が!?

乗った方々は、どんな様子でしたの?】


「皆さん、とても楽しそうでした!」


「送った方からの話を耳にした御友人が集まり、竜に乗りたいと仰って下さって、とても楽しく飛んだ事も御座いました」


【現王子達は、私が諦めた世界を取り戻しつつあるのですね……】また涙ぐむ。


その時、深い緑の竜が現れた。


【失礼致します。

フジ王子、先日の広間にて、貴方をお待ちの方がいらっしゃいます】


リリィホワイトは、フジと緑竜に微笑んだ。

【私はリリスさん達とお話しておりますので、また後程ね】


「ありがとうございます。

では、御言葉に甘えさせて頂きます」礼。



♯♯♯



 紫水晶の広間には、フジの事を気に入ったと言ってくれた魂が居た。


【日々精進しておるようだな。

もう少しだ。もうすぐ開く】


「お招きに与り、ありがとうございます。

私には大器の他にも、開く何かが有るのですか?」


【ある。もうひとつも大きいぞ。

今の大器をどんどん使え。

さすれば、自ずと開く】


「はい! ありがとうございます!」


【開いたならば また来るがいい。

ん……?】


「如何なさいましたか?」


【その笛……まさか、お前、あの偏屈爺さんから笛を貰ったのか?】


「これは、兄弟が授かった物なのですが……」


【だが、フジの分なのだろう?】


「はい。兄から、そう聞いております」


【フジの顔も見ずに、くれたというのか?

珍しいどころか、有り得ない話だ】


「私は同じ時、こちらに居りましたので、事情は存じ上げないのですが……」


【ああ、あの時か。ならば、気を拾ったな。

納得だ。そうか、その笛の飾り、爺さんの骨が込められているのだな?

よし! ならば、そこに、これも付けておけ。

私が、いつでも力になろう。手を出せ】


掌に、笛の飾りに よく似た飾りが現れた。


【爺さんと一緒ってのはナンだが……

竜宝薬の事ならば、いつでも呼べ】


「ありがとうございます!

あの……

始祖様をお爺様とお呼びという事は、貴方様は、もしや、グレイスモーブ様でございますか?」


【如何にも!

そうか、私の名を知っておったか!

こんなにも嬉しい事は無い!】


「当然でございますので」


【その、笛を受け取った兄弟は医師か?】


「はい。二人共、医師です」


【ならば、二人には、これを】


掌に飾りが二つ現れた。


【私の妹の骨だ】


「グリッターローズ様の……」

偉大なる太古の薬師に続いて、偉大なる太古の医師の名に圧倒され、フジは言葉が続かなかった。


【妹の名も知っておったか!

ならば――】


グレイスモーブの魂が明滅すると、もう おひと方、太古の魂が現れた。


【兄上、お呼びですか?】


【ローズ、先日 話したフジだ。

兄弟に医師が居るそうだ】


【我が骨を持つ者に、協力すればよろしいのですね?】


【ああ、頼んだぞ】


【後程、その飾りを通じて会いに行く。

そう伝えてくれるか? フジ】


「はい!」


【婚約者の所に戻っていいぞ。邪魔したな】


「いえ、ありがとうございます!

これから宜しくお願い致します!」


偉大なる太古の薬師と医師――三代王と女王は、若き王子達への期待に胸を膨らませながら、愉しげな笑い声を響かせて消えていった。


【ああ、そうだ。また三人の笛が聴きたい】

飾りから声がした。


「はいっ♪ また参ります♪」


【うむ。頼んだぞ。

その飾りからも聴こえるが、やはり、直接 聴きたいからな】


「お気に召して頂けて光栄に存じます。

こちらも精進を重ねます!」


【楽しみにしておるぞ】




♯♯ 馬車 ♯♯


「クロ、フジが婚約申し込みをしたそうだ。

近いうちに婚約の儀を行う。

クロはどうするのだ?」


「どう……って……

オレはまだ……そこまでは……」


「しかし、心は決まったのであろう?」


「そうだけど……」


「婿入りだからか?」


「それも、確かに……

でも、そうじゃなくて、まだ……もっと、ゆっくり進めちゃダメか?」


「構わぬが、静香殿は、どう考えておるのだ?

前にも言ったが、人の生涯は短い。

竜の感覚で、ゆっくりなどと言ってはおられぬぞ」


「解ってる。けど……」


「曖昧にせず、一度きちんと話しておけ」


「……そうする」


「アオの事が気になるのか?」


「それも……うん。確かに気になってる。

けど、それと、ゆっくりしたいのとは別だよ」


「そうか。ならば、よく考えるのだな」


「うん。

あ、それで、フジは今どうしてるんだ?」


「今、何をしているのかは知らぬが、午後は署名と会食だ」


「どこで!?」


「フジの屋敷だ。

父上とアオとサクラも来る」


「なんでサクラも?」


「アオと共に書面を持ち回っている」


「ハク兄は?」


「私と共に、王太子として行く」


「そっか」


「クロも見て学ぶか?」


「あ、オレは……ちょい考える!」曲空。



「クロ~♪ およ? キン殿だけか?」


「クロは曲空した」


「さよぅか……」


「静香殿は、クロでよいのか?」


「え……」真っ赤っか!


「国を担わせてよいのか?」


「それは……ワラワが、しかと治める故、ご心配召されるな」


「ふむ。ならば、末長く頼む」深く頭を下げる。


「キン殿!? 唐突に如何したのじゃ!?

いや、とにかく、(おもて)をお上げくだされ!」


キンは慌てる姫を見て、フッと微笑んだ。


 クロは、人界で殿に成るか……

 寂しくも有るが、

 クロが幸せになるのならば、

 祝う他は無い……





 アオとサクラは前王達に書面を渡した。


桜「アオ兄、だいじょぶ?」


青「サクラは妖狐王様を知っているの?」


桜「会ったコトは、あるよ」


青「そう……」


桜「あの方には悪意は無いよ。

  アオ兄の事、心配してるし、

  支えるって決意が凄く伝わるんだ。

  だから、信じようよ。

  希望を捨てるな、って言葉」


青「うん……そうだね。

  サクラの言う通り、悪意は感じなかった」


桜「俺、何も知らないけど、でも、

  アオ兄が元気になるなら何でもするから。

  諦めないで。希望を捨てないで!」


青「ありがとう、サクラ。

  うん。いつか、また会えると信じるよ」


桜「うんっ♪」


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