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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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仁佳東14-集縮の水筒

 くノ一の皆さん、王子達に恋してましたよね。


 森に降下して来た色とりどりの美しい竜達は、若者達を乗せ、飛び立った。


「この者達は?」

金竜(キン)の背に乗っていた忍頭が、睦月に尋ねた。


「魔物にされていた者と、その友に御座います」


「竜と親しげに……」


「はい。以前もお会い致しましたので」


「巷では既に、このような事になっておったのか……」


「まだまだ、ごく一部に御座いまするが」


(兄貴達! ヤバいよ!)

(人をアカとクロに移して!)

「くノ一さん達! 人を移してっ!」


くノ一達の動きを見た忍達も手伝い、赤竜(アカ)黒竜(クロ)紅竜(ボタン)橙竜(ミカン)の背に人を集めた。


その間に、複数の闇の穴が開く。


赤竜(アカ)が結界を張る。


(クロ兄! 領域供与!)


サクラに促され、クロが供与を発動した。


(フジ、聖輝水を拡散してくれ!)


治癒を持つ四竜が降下し、桜竜(サクラ)が作った光の球に、治癒と浄化の光を注ぎながら拡げる。


藤竜(フジ)が紫炎に乗せて拡散した聖輝水に当たった獣化兵が、人や魔人に戻り、拡げた光の座布団の中に受け止められる。


「代わります!」

藤竜(フジ)が降下し、光の座布団の中に、聖輝水を散布し始めた。


四竜は、光を縮めながら結界の上へと移動し、藤竜に託して飛んだ。


藤竜が大きな光の球を結界の上に乗せると、更に、その外に結界が生じ、元の結界と光の球の雪達磨を包んだ。


「アカ殿! クロ!

ワラワと くノ一達を、あの中へお願い致す!」


くノ一達が黒竜(クロ)に移り、黒竜が光の球との接点へと上昇すると、接点の結界が開き、四人は球の中へと跳んだ。


光の球に当てている藤竜の掌から、聖輝水の瓶が幾つも現れ、漂う。

姫と くノ一達は、その瓶を抱え、中の人達に配り、飲ませていった。



♯♯♯



 宙の四竜は、背中を合わせ待機し、魔物達を引き付けていた。

(兄貴達、全開で浄癒閃輝(ジョウユセンキ)いくよっ!)


辺りが真っ白に輝き、色が戻った時には、魔物達は消え失せていた。


「あれは本物の魔物だから、救えねぇんだ」

供与を解いた黒竜(クロ)が、悔しさを滲ませて呟いた。


その微かな声は、忍達にだけ届いていた。




 竜達が降下し、大きな光の球を地面に置くと、若者達も、忍達も、その光の球に入り、聖輝水を配り始めた。


赤竜(アカ)は、より大きな結界を張り直し、黒竜(クロ)と共に次の襲撃に備え、上昇した。


「アカ、あの結界は?」


「天性……堅固(ケンコ)だ」


「自分で見つけたのか?」


「勿論だ」


「他にも有るのか?」


「神眼と掌握」


「何が出来るんだ?」


「見えないモノが 見え、実体の無いモノを掴む事が出来る。

だから恍恒鏡(コウゴウキョウ)を使って、竜宝を再現しようと考えた」


「ってことは……もしかして……」


「それで職能を決めた」


「そんな前から!?」


「俺の天性など、小さなモノだ。

クロ、もっと真剣に自分と向き合え。

お前の天性は、遥かに大きいのだからな」弟。


「アカ……ありがとう……」兄。



♯♯♯



 紅竜(ボタン)橙竜(ミカン)も、別の所に上昇していた。


「王子様方、慣れていらしたわね……」


「これが人界の現状なのね……」


「私達も出来る事を探しましょう」


「そうよ!

護られているばかりではいられないわ!」


「帰りましたら、大婆様と翁亀様に御相談致しましょう」



♯♯♯



 忍頭は睦月を見付け、近付いた。

「我等の認識の甘さ、痛感致しました。

戦を終焉に向かわせる為、努める事を約束し、この方々は、回復するまでお預かり致します」


「ありがとうございます」にっこり


「あ……」目を逸らす。「いや……何でも……」



♯♯♯



(帝都の森に戻る?)光の球に掌を当てる。


(アオ、サクラ、頼む)


(クロ兄、アカ兄、森に戻るよ~)

(アオ兄、せ~のっ♪)



――森。


「何とっ!?」


「これも、竜の力に御座います」


黒竜(クロ)――の塊が現れた。


「このように」


「然様ですか……」


人姿のハクとフジが、黒竜(クロ)から降り、近付く。


黒竜が消え、再び現れると、樽と瓶を置いた。


「皆をどこに運べばいい?」


「その声――」


ハクが口の前に指を立てる。


「町外れの我等の屋敷に」


「って、判るか?」振り返る。


ハクが向いた先には、人姿のアオとサクラが立っていた。


「見つけた~♪ お庭でいい?」


「はい……」



「参列者の皆さ~ん♪

ご協力ありがとうございました。

空の旅の続きをしましょ♪」


人姿のミカンに連れられて、若者達は再び竜に乗った。


竜が飛び立ち、木々の向こうに見えなくなった。



 紫苑、珊瑚、コギが現れた。


「魔人をお救い下さいまして、ありがとうございます」丁寧に礼。


コギの配下が現れては、魔人達を連れて消える。

あれよあれよという間に、それは終わり、妖狐達は去って行った。


「じゃ、お頭さん、入って~♪」


が、忍頭は呆然として動かないので、ハクが連れ込んだ。


(せ~のっ)



――忍屋敷の庭。


「何故……この場所が……」


「もぉ~、いちいち驚かないで~♪

どこに運んだらいいの?」


「ならば、道場へ……」


ひょい♪ とっとこと~♪




 フジが樽を置き、鏡を入れ、聖輝水を注いだ。

「薬は、この樽に湧きますので、ご自由にお使いください。

飲み水代わりにもどうぞ」にこっ♪


「お頭さんよぉ、ちょっと味見してくれ♪」

ハクは、フジが持っていた空瓶を貰い、瓢箪から何かを注いだ。


忍頭が恐る恐る舐めた。

「美味い……」


「だろっ♪ 竜喜って酒だ♪

どこに置いたらいい?」大きな瓶を指す。




 忍頭の部屋に瓶を置き、鏡を入れ、瓢箪の酒を注いだ。


「協力の礼だ。好きなだけ飲んでくれ」


瓶の中では、酒が見る間に増え、なみなみになった。


「ありがとう……ございます……

あの……貴方様は、本当に竜なのですよねぇ?」


「疑り深いオッサンだなぁ。

あ、ちょうどいい♪ 庭に出ろよ」手招き。



 庭では、綺桜(サクラ)瑠璃(アオ)の竜が、人姿になろうと光っていた。

「あっ!」


「いいから、人になるトコ見せてやれ」


「いいの?」「ああ」


二竜が人姿になる。


「な♪」


「お頭さん、コレど~ぞ♪」

竹筒のような焼物の筒が、たくさん入った箱を差し出した。


「水筒です。

たくさん入りますけど、重くはなりませんので、お使いください」


「何だ?」ハクが一本 手に取る。


集縮(シュウシュク)~♪」


「そっか♪」瓶に向かい「見てろ」入れる。


水筒が沈み、酒を吸い込んでいく。

空になる程迄ぐんぐん吸い込み、湧き出す酒を飲み込み続ける。


「まぁ、だいたい分かったろ?

まだ入るんだが――」取り出した。


酒は再び、瓶になみなみに戻る。


「遠出するのに便利だろっ♪」渡す。


「軽い……」おもいっきり傾け――


「あっ!!」「やめっ!!」「馬鹿っ!!」


どぶぁーーーっ!!


アオは竜になり、サクラを掴んで飛び、

サクラが笑いながら酒の海に一本 投げ入れた。


「ずぶ濡れだろーがっ! 勿体ねぇっ!」


「いや……まさか……申し訳ござらぬ」


「よく解ったろ? そういうモンだ」


「賑やかじゃのぅ♪」


「あ……姫様、終わったのか?」


「終わったぞ♪」


「ずっと気になっておったのですが……

貴女様は、もしや、中の国の静香姫様では?」


「如何にもじゃ♪」


「では、中の国は、既に竜と……?」


「ワラワの婿は竜と決めておるぞ♪」


「もう……そこまで……

仁佳は先進国と驕り、中の国を侮っておりました。

甚だしい失礼を、今 猛省致しております!

どうか……どうか平にお許し下さいませ。

我等に、力を尽くす機会をお与え下さいませ!」


「中は小国じゃからの、致し方無いわ。

御主らの今後に期待致すぞ♪」わはははは♪


(姫って、よその人いると大きくなるよね~)

(だな。ま、頼もしい限りだけどな♪)

(あ、婿殿が来たよ。後は任せよう)

(だね~♪ 馬車に戻ろっ♪)(フジ、戻るよ)

(連れてけよ)(うん♪ せ~のっ♪)


「姫~、どこだぁ? あ、いた」


「次の殿じゃ♪」ぐいっ

「え!? 待てっ! おいっ!」


「ははぁ~っ」平伏。





桜「睦月さ~ん♪

  アカ兄が、くノ一さん達の剣は

  だいじょぶ? って聞いてたよ~♪

  あれ? お頭さんと何してるの?」


睦「次なる打合せにて――

  あのっ! サクラ様!?」


桜「姫~♪ 来て来て~♪」ぴょんぴょん♪


姫「如何したのじゃ? サクラ――

  睦月……と忍頭……うむ♪ 任せおけ♪」


睦「姫様っ!? 何を!?」


姫「まこと喜ばしき事じゃ♪」わはははは♪


睦「お待ちくださいませっ!

  姫様っ! サクラ様っ!」


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