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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
162/429

仁佳東13-忍頭

 前回まで:闇の黒猫が馬車の周りを

      うろちょろしています。

      が、今回は、先行している

      くノ一達のお話です。


♯♯ 仁佳(ニカ) 帝都南部 ♯♯


 睦月、如月、弥生は、仁佳の忍頭(シノビガシラ)を追尾していた。

建物や人が(まば)らになった為、距離を空け、追っていると――


「ヌシら、何奴だ?」

忍頭は背を向けたまま低い声で言った。


「中の国の者に御座います。

忍頭様、私共の話を お聞き下さいませぬか?」


「話とな?」


「はい。私共は、天の竜から聞いた話を伝えております。

人の世を、人の力で魔物から護るため、どうか、お聞き下さいませ」


「近頃、竜が人を助けたなどという噂をよく耳にするが……そのような、まやかしなど信じられる筈が無かろう。

立ち去られよ!」

忍達が現れ、頭の周りを固め、控える。


「いえ、まやかしなどでは御座いませぬ!」


「ならば、竜とやら見せてみよ」


「今直ぐには無理で御座いますが、呼びますので、お待ち頂けましょうか?」


「フン、やはりな。

竜など居らぬのであろう? 目障りだ!」


周りに控えていた忍達が斬りつけて来た!


くノ一達は剣を抜かず避けていたが、相手が多く、躱しきれず、とうとう抜いて剣を合わせた――


――ら、


相手の剣が根元から折れ、弾け飛んだ。


くノ一達が風となり、次々と折れた刃が飛ぶ。


最後に、忍頭の剣を睦月が弾き、

「話だけ、どうかお聞き下さい!」

剣を収め、身を低くし、頭を下げた。


「……その名刀の話ならば聞こう」


(かたじけ)のう御座います!」


「銘を見せて頂けるかな?

……『赤虎』とな……聞いた事も無いが……」


「竜から頂きました剣に御座います」


「またしても竜か……」


「呼びますれば」

睦月はカラクリ竜に「ハク様へ」と囁き、飛ばした。


「伝説では、三代・金虎が、竜の国なる所に行き、天の竜に、その技を伝えた、とされておる。

それが真ならば、その赤虎とやら、弟子という事なのか?」


「詳しい素性などは伺ってはおりませぬ故……

ただ、確かなる剣、それしか知り得ておりませぬ」


 その時、天から鮮やかな彩橙色の竜が降りて来た。


「このコは貴女のかしら?

ハク様は、お呼びしたから、すぐいらっしゃるわ」


睦月がカラクリ竜を受け取る。


「竜……」忍頭、固まる。

「喋っ……た……」顎が落ちそうな程、愕然。


「どうしたんだ? ミカン――あ、睦月」

白銀の竜が現れた。


忍頭が、へたり込む。


「誰だ?」ハクが忍頭を指す。


「仁佳の忍頭様に御座います」


「乗せたらいいのか?」


「そうして頂けますか?」


ハクが忍頭の襟首に爪を掛け、ひょいっと背に乗せた。


「皆、乗れよ。空で話したらいい」


くノ一達も、剣を折られた忍達も、ハクとミカンに分かれて乗り、飛び立った。


「忍頭殿よぉ、剣は、何本 折られちまったんだ?」

忍達が折れた刃を拾っていた事に気付いていたハクが尋ねた。


「十四本に御座います」

まだ話すどころではない忍頭に代わり、睦月が答えた。


「たくさん折っちまったな♪

アカに頼みに行くか」あはははっ♪


「赤虎の剣……我等も頂けるのですか?」


「やっと口が利けたなっ♪

折っちまった代わりだ。すまなかったな」




 馬車に降下すると、深紅の竜(アカ)が飛び立とうとしているところだった。


「アカ、この男達の剣、作ってくれ。

お前の剣が折っちまったんだよ」


赤竜(アカ)が忍達ひとりひとりをじっと見る。

「解った。だが、人を殺めたら赦さんぞ」

飛び立った。


「ならば、いつ使うのだ……?」忍頭、首捻る。


「魔物と戦う時、で御座います」睦月、微笑む。


睦月に目を向けた忍頭が頬を染め、視線を漂わせた。




 ハクとミカンは、再び天に舞い上がった。

船の発着場にしている荒野に向かいながら、天界と魔界の事を話し、東の国との戦を終わらせて欲しいと求めた。


荒野に近付いた時、天から船が降りて来た。


「船が……飛んで……」またまた唖然。


「あの船には、人が乗ってるんだ。

魔王によって魔物にされちまって、天界を襲撃した人々を、元に戻して、回復したら、こっちに送っているんだよ」


「貴殿方は……襲撃されたというのに、その人達を助けたのですか?」


「当然だ。

捕らえられて魔物にされちまった、あの人達には、何の罪も無ぇからな」


「当然……と……?」


「信じられぬとは存じますが、竜の皆様にとりましては、それが『当然』なので御座います」


「ほとんどが仁佳の人だ。

戦をしているアンタらの国からなら、多少、人が消えちまっても気にも留められないだろ?

だから、戦を早く終わらせて欲しいんだよ」


着地した船に降下した。


「あら、ハク様♪ その方々は?」


「見学者だ。ボタンさん、案内してるのか?」


「ええ。楽しんでおりますわ♪

方々も、ご案内すればよろしいのですね?」


「頼んでいいか?」


「ええ♪ 勿論ですわ♪」


金華の竜(キン)が現れた。


「兄貴、仁佳の忍達だ。案内、頼んでいいか?

ちょっと行きたい所があるんだよ」


「解った。ああ、あの招待状か?」


「そうだ。じゃ、後よろしくなっ」




 ハクとミカンは船を見送り、仁佳の帝都に戻った。

森に降り、人になって歩き始めた時、人の声が聞こえた。


(ミカン、隠れろ)木の陰に隠した。



「絶対、来るって~」

「本当かよ?」

「竜なんて――あ、人がいる」


若者が数人、ハクとミカンの方に向かって来ている。

そのうちの ひとりが走って来た。


「やっぱ、お前かぁ」


「隠密さん、やっぱり来てくれたんだな♪」


「まぁな」


「竜は?」


「今、飛んだとこだが……」


「後で、また来るのか?」


「呼ぼうか?」(ミカン、竜に戻ってくれ)


彩橙色の竜が、木々を抜けて飛んで来た。


(喋るなよ)(うん♪)


ミカンが若者達に囲まれる。


「で、結婚式は?」


「まだ時間があるから世間話してたら、竜の話になっちまって……」


「時間があるのなら乗るか?」


「いいのか?」


「間に合うように知らせてくれよ」


「そりゃ、もちろんだよぉ。

皆で遅刻するじゃないか~」


「だなっ」

(悪りぃな、ミカン。ちょっと飛んでくれ)


(何が悪いの? 楽しいじゃないの♪)




 若者達に「綺麗だ」を連呼されながら、ミカンは上機嫌で飛び、ハクと共に結婚式に参列した。


「ハク先生、ありがとうございます!

来て頂けて、本当に嬉しいですっ!」


「幸せにしてやれよ~

さんざん泣かせたんだからなっ」


「なんか違う意味に聞こえますけどぉ」


二人で大笑い。


「そちらは?」


「婚約者だ」ミカンが、にこやかに会釈する。


「そうですか♪ 先生もお幸せに!」


「もちろん、その点は誰にも負けねぇよ♪」


「流石、ハク先生だ!

でも、俺も負けねぇ、です」


「だなっ♪ お互い頑張ろうなっ♪」




 そして、再び森へ――


わいのわいのと賑やかに若者達が付いて来る。


(どうしたもんだかな~)


(もう、竜になっちゃう?)


(それは流石に――あ……)


兄弟達とボタンが降りて来た。


(ハク兄♪ みんなで飛ぼ~っ♪)





睦「あの、凜殿……ミカン様とは……?」


凜「あ……睦月さん……

  でも、隠しても仕方ないかぁ。

  ハクの婚約者さんだよ」


睦「然様で御座いますか……

  当然で御座いますよね……確かに……」


凜「そんな落ち込まないでよぉ~

  きっといい事――あ♪ ほらっ♪」


睦「え?」


凜「向こうから~♪」


睦「あれは……」


凜「ま、ゆっくり話せば?」


睦「あのっ! 凜殿っ!?」


凜「じゃ~ね~♪」


霧「睦月殿、竜の街を案内(あない)してくださるとか。

  お頼み申してもよろしいかな?」


睦「私も一度参りましたのみで御座いまするが

  私で、よろしいのでございましょうか?」


霧「睦月殿と――いや、その……お頼み申す」


睦「では、案内致しますれば」




凜「うん♪ お似合いよね~♪

  如月と弥生も、そう思うでしょ?♪」


如&弥「はい♪」


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