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三界奇譚  作者: みや凜
第一章 竜ヶ島編
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砂漠編2-岩山の玉

 砂漠に巣食った魔物は、大きな兎でした。


 大兎達が居た後ろの壁には、赤い玉が光っていた。

玉を回収し、岩山を出て歩き始めると、岩山はサラサラと砂に還っていった。


「ひとつひとつ やるのか?」

くるくる回りながら、うんざり口調で姫が言う。


「やるつもりだよ」


 しかし、確かに……

 比較的 近くに見えるだけでも、

 両手で足りない数の岩山が見えるんだよな――


「やるしかないよのぉ……」


「魔物退治の旅なんだからね」


「そぅじゃったのぅ。

 それは心したが……砂まみれなのじゃが、水場は何処じゃ?」


 それがあれば苦労は――


「それでしたら、陽も傾きましたし、こちらで休みますか?」


 蛟は糸が付いた鏡を取り出し、低い所に向かって投げた。

キラリと鏡面を天に向け着地した鏡から、水が湧き出、見る間に大きな池ができた。


続いて、いつもの賽子(さいころ)のような二つの木片が、木の串で繋がった物を、池に向かって投げると、岸辺にひとつと、池に高さ四分ほど浸かった段違いの小屋が、通路で繋がった状態で現れた。


「ほぅ♪ ミズチ、次は何が出るのじゃ♪」


「あとは、夕食が出ますので、それまでに水を浴びてくださいませ」

恭しく一礼。



♯♯♯



 夕食の後、アオが、ひとり星を眺めていると、紫を帯びた光が、上空を通過して北東へと飛び去り、再び、こちらに向かって来た。


一瞬 身構えたが、竜であることが判り、警戒を解いた。


藤紫の竜が降り立ち、人の姿になった。


「フジ様ぁ~♪」

夕食の片付けをしていた蛟が、駆け寄って来た。


「素材をひとつ回収したのですが、キン兄様から、アオ兄様に渡すよう(ことづ)けられましたので。

 こちらです」

木の枝のような、杖のような物を、蛟に渡した。


「身に着けて歩けば術力が回復します。

大きければ大きい程、回復力が増しますが……細工は、蛟殿の得意とするところですね」

にっこり。


「それと、こちらも――」

少し透け感のある不思議な花の束も渡した。

「こちらの気候は、お肌の大敵ですからね」


「それでは、兄様、また……」

美しく一礼し、藤紫の竜は飛び去った。


「腕が鳴ります~♪」

蛟は楽しそうに弾みながら、自分の小屋に向かって行った。


 仕方ない。皿を洗うか……。


アオは苦笑を浮かべ、水場に向かった。



♯♯♯



 夜更け――


(サクラ、来るかい?)


(うんっ♪)現れた。


(洞窟に帰っていたんだね?)


(うん。キン兄に呼ばれたから~)


(何かあったのかい?)


(なんにも~『時々は戻るように』だって~)


アオが必死で笑いを堪える。


(心で話していても真似られるんだね)


(俺にはフツーだから~♪

 ね、アオ兄、アレなぁに?)

小屋の隅に置いてある風呂敷包みを指した。


(姫の剣なんだけど、手合わせしていて俺が折ってしまったんだ)


(じゃ、貸して~)


(どうするんだい?)


(アカ兄に直してもらうから~)


(直せるの?)


(アカ兄は鍛冶師なんだ♪)


(さっきの……フジは?)


(薬師♪)


(皆、何かの職に就いているのかい?)


(ハク兄は お医者さん。

 で、クロ兄は料理人♪)


(キン兄さんは?)


(ん~とぉ……学者さんで~、俺達の まとめ役♪)


(将って事?)


(うん♪)


(俺は……何をしていたのかな……?)


(……まだ、教えちゃダメなんだ……)


(そう……サクラ、ごめんね)


(ううん、俺こそ ごめんなさい)うるっ――


(俺は大丈夫だから、泣かないで、ねっ)


(うん……)ぽろぽろっ――

(……アオ兄……ごめんなさい)


 アオはサクラを抱きしめた。

サクラは心を閉ざし、泣きじゃくった。



♯♯♯♯♯♯



 その頃、外では、小屋に身を隠す二つの影が有った。


「長老会と城からは、滞在許可を得ました。

 アオの事、お願い致します」深く頭を下げる。


「そ、そのようなっ! 私なんぞにっ!

 お顔をお上げくださいませっ!」わたわたっ!


「記憶も力も封じられ、竜に戻る事すら出来ないアオと共になど、酷な事とは解っておりますが……」


「いえ、そのような状態ならばこそ、私はお傍に居りたいのでございます。

 突然、勝手に参りましたのに、お許し頂き、感謝の他にございません。

 この上は持てる力の限り、アオ様の為に尽くさせて頂きます」

深く深く頭を下げる。


「蛟殿が無理をなさらないよう、戦闘の為にクロを付けますので、アオの心を和らげる役目をお願い致します」


「サクラ様も、いらっしゃっておりますのに……クロ様までも、でございますか?」


「サクラは人界に来て以降、ずっとアオに付いているのです。

 どうしてもそうしたいからと……」


「アオ様がお育てになられたようなものでございますからね……」


「それもありますが……アオの封印は、自分が原因だと言い張るのです。

 理由は口を閉ざしていますが……」


「サクラ様……ご様子が随分と変わられましたが……」


「どうか、何も気付いていない振りをお願い致します」


「畏まりました」



♯♯♯♯♯♯



 また、別の小屋にも身を隠す影――


「もぅ、来ずともよいのじゃっ!

 ここは隣国なのじゃぞ!」囁き声。


「隣国なればこそ、でございます」


「ここからは魔物も多いのじゃぞ!」


「心得ておりますれば」


「どんどん城から離れるのじゃぞ!」


「各々の走る距離は変わりございませぬ」


「皆、この為に動くと申すのか!?」


「はい。私共は姫様の御為(おんため)に存在致しております(ゆえ)


「ワラワの為と申すならば、ワラワの(めい)に従わぬかっ!」


「その命だけは従えませぬ」


「ええいっ! 頑固なっ!」


「お誉め頂き光栄にて」


「誉めてなどおらぬ! 勝手にせよ!」


「有り難き幸せにて」


「これを持て」包みを押し付けた。


何方(どなた)にお渡しすればよろしいので?」


「砂は熱い。靴と申す物じゃ」


「私共に……でございますか?」


「そぅじゃ。使うがよいぞ」ぷいっ。スタスタ――


「お心遣い、誠に(かたじけ)のうございまする」礼!





凜「サクラ、元気?」


桜「元気だよ~」


凜「カラ元気だね」じーっ。


桜「ふえっ!?」


凜「おねーさんに正直に言いなさい」


桜「お……おね……???」キョロキョロッ!


凜「そこで悩むなっ! 探すなっ!」


桜「ふえぇ~っ!」逃げた。


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