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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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仁佳東4-苛立ち

 前回まで:アオとサクラは竜宝の国に行き、

      天性竜宝を取り込む事にしました。


♯♯ 竜宝の国 ♯♯


 夕刻、祠からサクラが出て来た。


「とっても おもしろかったよ~♪

アオ兄、いってらっしゃ~い♪」


護竜槍に連れられ、アオが祠に入り、少しして護竜槍が戻った。


【サクラ王様、お話を中断致しまして申し訳ございません。

先程の続きで御座いますが、次回は、如何な天性をお望みで御座いますか?】


「ごめんねぇ、時間のコト忘れてて~

この状態でも、アオ兄には伝わらないよね?」


【はい。祠の中は隔絶されておりますので、入れ替りましても同じで御座います】


「ん。なら、光明を」


【おひとつで御座いますか?】


「来る度に光明を三つずつ、お願いします」


【畏まりました】


「アオ兄が魔に囚われて、俺が同調してしまった場合に、闇障を阻止してくれるくらい欲しいんだ。

せめて、君達が発動する時間を稼げるくらいに。


……いくつ込められる?」


【場所を取るものでは御座いませんので、無限に込める事が可能で御座います】


「なら、できるだけ ここに来るから」


【畏まりました】


「他に良い天性ある? 術でもなんでも」


【掌握でしたら、もしもの場合、アオ王様の魂を掴み取り、御体から離す事が可能となります。

その際、アオ王様の御力を器型竜宝に集め、込められている竜宝、全てと共に、この国に退避すれば、奪われるのは御体のみ。

ただの器で御座いますので、最悪の事態だけは、避ける事が可能かと存じます】


「そうか……それなら、アオ兄自身は奪われないから、闇に侵される事も無いね。

体だけ……それだけを奪還すればいいのか……


うん! ソレいいねっ♪

じゃあ、次は掌握と、光明二つね。

器型竜宝は、何が最適なの?」


集縮(シュウシュク)魂主(タマヌシ)をアオ王様に込めさせて頂けましたら、最善かと存じます】


「魂主って?」


【量産、汎用される生活竜宝や消耗竜宝、また、竜宝薬などは、個々には魂が込められておらず、ひとつの魂主が統括致しております】


「魂主を込めてしまっていいの?」


【王の中に入る事に、何の問題が御座いましょうか】


「俺達、ただの竜だよ」


【サクラ王様は、ご自身の特異さに、お気付きだと存じ上げますが】


「いろいろ入ってて凄い事には なってるけど、俺自身は、なーんにも無いよ」


【御心の底より、そのように お考えの点も、王として選ばせて頂いた理由では御座いますが、

我等が王と お成り頂きました時より、我々竜宝にとりましては、特別な御方なので御座います】


「でも……俺、王様に なりたいワケじゃないんだよね……

みんなと友達に なりたいだけなんだよ」


【サクラ王様…………】


……静寂……


「ごめんね。怒らせちゃった?」


【いえ、感激致しておりました】


「感激?」


【はい。初めてで御座いますので】


「ん?」


【長きに渡りまして、竜、神竜の皆様に、お仕えして参りましたが、

皆と友に、と仰られましたのは、サクラ王様が初めてで御座います】


「あ……

そゆのって、フツー、思ってても言わないものかな?」赤面。


【そうだと致しましたら、尚更、仰って頂けた事、幸せに御座います】


「アオ兄も、絶っっ対! そう思ってるから!」


サクラは祠を見詰めて、そう断言した。



♯♯♯



 夜になり――

護竜槍は、アオが魔王に襲われた際に必要となる竜宝を集めに行った。


 大器、試してみよ~♪


サクラが、込めてもらったものを確かめていると――


(サクラ、今、どこに居るのですか?)


(あ、フジ兄~♪)

 フジ兄は……タツさん家の近く……

 ハク兄も近くに居る。

 これからハク兄と交替するのかな?

(今、天界だよ)


(アオ兄様から、お返事が無いのですが……

一緒ではないのですか?)


(一緒だけど、今は、ちょっと閉じてるんだ)


(何事も無いのなら よいのですが……

何をしているのですか?)


(術の練習だよ)


(サクラ……何か隠しては いませんか?)


(なんにも ないよぉ)


(探し物と言っていませんでしたか?)


(うん。術に使うんだ)


(アオ兄様に ずっと付いているのも、何か理由があるのでしょう?)


(それは……フジ兄も、翁亀様から聞いて、もぉ知ってるでしょ?)


(確かに、翁亀様から伺いましたが、それ以上に隠していますよね?)


(それ以上なんて ないよぉ)


 昼間、俺が祠に入ってる間に、

 何があったんだろ……

 何かあって、話しかけてきてたのかな?


(私が危険になるから言えないのですか?

私も神と絆を結びましたから、サクラと同じではありませんか?)


(たとえ、なにか隠してたとしても……

フジ兄が危険になってもいいって言ったとしても、リリスさんが危険になるのはイヤだから話さないよっ。

長老の山に居ても絶対じゃないんだからね)


(サクラ……何か隠しているという事は、よく分かりました。

私には、話しては頂けないのですね……)


 いったい何が?

 フジ兄が、こんなふうに言うなんて……

 クロ兄は……今は邪魔できない、か……



 サクラが沈黙し、フジが苛立ちのまま、心を閉じようとした時、

サクラが、ため息をついた。


そして、再び長い沈黙……


(あのね――)少し低い、静かな声が聞こえた。


(――フジ兄には、じゃなくて、兄貴達の誰にも、こんな事 頼めないから、言えない。


代わりに、竜宝達とアメシス様に、お願いしてるから……何が起こっても、邪魔はしないで……それだけ……お願い……


ごめんね……フジ兄……)


(サクラ、それは どういう――サクラ!?)


それっきり、サクラは返事をしなくなった。


サクラの心が背を向けた。


フジには、そう思えた。




 フジは、心を締め付けられるような焦燥感や恐怖感に圧され、護竜甲を掌に出した。


(護竜甲殿、サクラから何を依頼されたのですか?)


【それは、申し上げる事が出来ません】


(なぜ?)


【サクラ様よりの御命令は絶対ですので】


(それは……どういう……?)


【サクラ様とアオ様は、全竜宝の主。

竜宝にとりましては、絶対的な王なのです】


(いつから……そんな……それに……何が起こって――)


経緯(いきさつ)だけは、お話し致します。


アオ様の解放を成す前日にサクラ王様より、そして解放直後にアオ王様より、同じ御依頼が御座いました。


竜宝の存在意義に反する御依頼の為、お二方各々に、お断り申し上げましたら、如何にすれば叶えられるかと、同様に お尋ねになられ、


意思を持つ全ての竜宝との相談の結果、


皆、悪しき者に使われる事 無きよう、絶対的な主を欲しておりましたので、

王と お成り頂く事をお願い致し、代わりに、お引き受け致しました次第に御座います】


(もしも……その事が起こってしまったら……?)


【竜宝の総力を以て、その責を果たします。

成せるか否かは分かりませんが】


(竜宝の総力……そんな大きな事なのですか……)


【はい】


(そうですか……)


【兄弟愛故に、ですので、どうか御寛容に お願い致します】


(……解りました)


【事が起これば、自動的に全竜宝が御命令通り発動してしまいます。

ですので、私共は、その事態が起こらないよう、力を尽くす所存に御座います】


(ありがとうございます、護竜甲殿。

もう『なぜ』とは聞きません。

どうか、その事が起こらないよう導いてください)


【御理解ありがとうございます、フジ様】



 昼間、襲撃を受けた際、姫が負傷した為、治療を頼もうとアオとサクラに話しかけたが、

アオは、今は動けない、と申し訳なさそうに言うばかりで、サクラとは話が出来なかった。


その時 感じた胸騒ぎは、フジの中で、大きな不安に変わっていた。





黒「オレが絶っっ対! 治すからなっ!」


姫「いや、怪我はハク殿が治して――」


黒「いいや! オレが治すっ!」


姫「クロも、あの光が出せるのか?」


黒「いいや、もちろん供与だっ!」


姫「もしや、下心か?」怪訝。


黒「なんだソレ???」シタゴコロ?


姫「誤魔化すと申すのか?」ジロリ


黒「いや、マジで聞いてる」真顔。


姫「いい加減にせよ」ぷいっ


黒「ちょっ! おい、姫っ!?」

 (アオ! 教えてくれ! アオ!?

  おーい、アオ! 返事してくれーっ!!)


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