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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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仁佳東1-芳小竜ルリ

 変な空間から、意外とアッサリ出ちゃいました。


 クロは馬頭鬼を城に届け、長老の山から、投じるだけで小屋になる竜宝・家賽(ヤサイ)をありったけ持って、馬鈴草が咲く草原に戻った。


そして、馬頭鬼の一族に家賽の使い方を伝え、馬車と仲間を、船の発着場になっている鍛練場に運んだ。


「あ? アオとサクラは?」

幌を開け、二人が居ない事に、やっと気付いた。


(アオ、サクラ、どこだ?)


(少し用が出来たんだ。

馬車を頼んでもいいか?)


(サクラも、か?)


(うん。いっしょ~)


(そっか。

じゃ、仁佳(ニカ)に向かうからな)


(ああ、頼んだよ)



♯♯♯



 アオとサクラは、深蒼(シンソウ)の祠に居た。

深蒼の祠は、浄化の祠とも呼ばれ、水属性のアオにとっては、諸々の儀式などでも、よく行く場所である。


(サクラ、始めよう)


(うん。アオ兄、ごめんね)


(謝る事なんて何も無いからね)


アオはサクラを支え、並んで祈りを捧げた。


正面上方の青みがかった玉から、光が降り注ぐ。


サクラを覆う闇の気が、洗い流されているかのように消えていく。

同調したアオからも闇の気が消える。


二人は安堵の息をつき、光の気を纏った。

浄化は終わったが、そのまま暫く祈り続けた。



(体力が、まだまだだね)

アオは回復の光でサクラを包んだ。

(少し眠るといいよ)


アオは光を重ねると、サクラを抱え、屋敷に曲空した。



♯♯♯



 サクラが目を覚ますと、アオが傍で光を当てていた。


(アオ兄……ありがと……)


(うん。今日は、ゆっくりしよう。

闇は消耗が激しいからね)


(アオ兄は だいじょぶ?

闇に侵されてない?)


(大丈夫だよ。サクラが護ってくれただろ?)


(できたかどうか……わかんないから……)


(ちゃんと出来ていたよ。

ありがとう、サクラ。

何か俺に出来る事は有るかい?)


(んとね~、添い寝っ♪)二人で笑った。


(でも、俺も眠っとくか)並んで寝た。



♯♯♯



(アオ兄様、どちらにいらっしゃいますか?)


(フジか……今、屋敷だよ)もう、夜か……


(お休みでしたか?

でしたら、また改めて――)


(いいよ。もう十分、休んだからね。

どうしたんだい?)


(いえ、たいした用では……

ただ、どちらにいらっしゃるのか、伺いたかっただけなんです)


(フジ、また悩んでいるね?

だから、すぐリリスさんの所に行かずに、馬車に来たんだろ?

今度は、どうやって王子だと言おうか、かな?)


(そ……それは……)


(手紙には書かなかったんだね?)


(…………はい)


(まだ、日程は調整中なんだけど、キン兄さんとハク兄さんの立太子と婚約の儀が、もうすぐなんだ。

そうなると、国を挙げての祭になるから、山奥に居ても知る事になるだろうね。

焦らせて申し訳ないけど、早くフジから言うべきだよ)


(……はい……そうですよね)


(きっかけが欲しいのなら、婚約申し込みをしてしまったらどうだい?

その時に、王子だって事も、竜と人の違いも、話してしまったらどうかな?)


(そうですね……その機会しかありませんよね……)


(きちんとした儀式は、兄さん達の後にして、内々で、空龍さんの御宅で申し込めばいいよ)


(それなら、手続きなどは、後ですればいいのですね!)


(フジは儀式を簡素化したいかい?)


(そうですね……派手な事は……好きではありません)


(リリスさんは、どうなんだろう?)


(普通に……人界と天界で挙式……くらいに思っているのではないでしょうか……?)


(母上が絡まないものは、署名だけに出来れば嬉しいかい?)


(それは嬉しいです! ……けど……)


(うん。じゃあ、その方向で。任せてね)


 アオが、これまで様々な修行や試練などの年齢制限を引き下げたり、期間修得を課題合格式に変更したり、とにかく早く突破できるよう、改革の先駆けとなってきた事をフジは思い出した。


最終的に、全ての年齢制限を撤廃したのは、サクラだったが、アオの行動が無ければ、サクラはまだ、人界の任には就けていなかっただろう。


 アオ兄様、また、やるんですね?


(兄弟全員、真面目に儀式していたら、都度 集められてしまうし、大変だからね。

俺は、儀式よりも、早く平和な世界に出来るよう、動きたいんだ)


(ありがとうございます、アオ兄様。

迷いは無くなりました。私も動きます!)


(そうか。二人の為だ、頑張れよ、フジ)


(はい!)



 結婚……か……

 否が応にも時は流れる。

 しかし、俺には……


 ……ルリ……



扉を叩く小さな音がした。

「どうぞ」


しかし、扉は開かず、コツコツと音だけが続く。


不思議に思いながら扉を開けると、芳輝石の竜宝・青いチビ竜が、ふよふよと宙に浮いていた。


 解放の後、屋敷に預けてたんだった……


芳小竜(ホウコリュウ)がアオの胸に飛び込む。


「寂しかったのかい?」


きゅ~


「ついて来る?」


きゅるっ♪


「ちゃんと言葉が解るんだな……」


きゅるる♪ きゅるる♪


ご機嫌な芳小竜を肩に乗せ、アオはサクラに光を当て始めた。



♯♯♯



 翌朝、馬車に戻ると、キンが来ていた。


「キン兄さん、どうしたんですか?」


「これからハクと天界に行く。

その前に、馬頭鬼の件を聞きに来たのだが……

アオ、サクラ、大丈夫なのか?」


「少し消耗し過ぎてしまって……

屋敷で寝ていただけですよ」あはは……


「アオ兄に添い寝してもらった~♪」


「それだけなのか?」


(どうしようもなくて、闇 使っちゃったから、疲れただけ。

だいじょぶだよ。

キン兄、ありがと♪)


(そうか。大丈夫なら、それでいい)


きゅる~♪


芳小竜が飛んで行き、姫の頭に乗った。

「元気じゃったか? ルリ♪」なでなで♪


「ルリ!?」キンとアオ。


「このコの名じゃ♪

綺麗な瑠璃色じゃからのぅ♪」


(いいのか? アオ……)


(もう大丈夫ですよ、キン兄さん)


(そうか……)


「おいで、ルリ」

芳小竜がアオの方を向き、ふよふよ飛んで掌に乗った。


 随分と可愛くなってしまったね。ルリ……




 サクラは、優しく芳小竜を撫でているアオを見詰めていた。


 アオ兄……とっても悲しそうな色……


心配や不安が、とてつもなく大きな波となって押し寄せて来たが、何も言葉には出来なかった。





 芳小竜のルリと、アオの恋人らしきルリ……


黒「また何か、話をややこしくしようと

  企んでるんだろ?」


凜「クロ、またそんな人聞きの悪い~

  そろそろ、アオとサクラの話も~

  と思っただけよ♪

  まさか、この二人をくっつけるワケには

  いかないでしょ♪」


黒「それはそうだが……

  その前に、フジを落ち着かせろよなっ」


凜「あ……」


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