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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
146/429

異間域3-救いの手

 前回まで:アオ達は、異間平原に

      飛ばされてしまいました。


 異間平原を進む馬車の中――


「昼間は襲撃しに来ねぇのかなぁ」


「それは当然、弱っている夜を狙うでしょう」


「夜……襲撃あったのかな……」


「ええ、何度か ありましたよ」


「護ってくれたんだな……アイツら」

眠っているアオとサクラを見る。


サクラが寝返りをうって、アオに寄り添った。

「……可愛いですね」「そうだな……」


「二人も同じ姿じゃぞ」くくくっ♪


クロとフジが顔を見合わせ、笑いだした。


 !!


急に馬車が速度を増した。


「上だ!」


クロとフジが三眼、四眼を各々の手に、馬車の上に立った。


大翼の魔獣が、馬車を掴もうと迫っていた。


馬車を蹴って、魔獣の左右に跳ぶ。


同時に剣を振り下ろす!


細く鋭い竜巻と紫炎に貫かれ、魔獣は塵と化した。


「単独とは……偵察でしょうか?」


「余計に気味悪ぃよな……」




馬車に戻ると、アオとサクラが起きていた。


「まだ寝てていいぞ」


「いや、十分だよ」


「そっか。なぁアオ、境界って何なんだ?」


「え?」絶句……


「今更ですよね……」

「ちゃんと勉強しないから~」

「勉強嫌いだからね」

「それにしても酷くは無いですか?」

「そぉだよね~」

「確かに……」


三人、クロを見る。


「ちげーよっ! 竜しか知らねぇだろっ!」

だからなぁ、皆の為にだ、その……ぶつぶつ……


「まぁ、そうだね。

元々境界は、天界、地上界、地下界各々の間のただの区切り領域だったんだ。


境界は、その区切り領域に、太古の神々が争う中、互いの行き来を阻止しようと、強固な結界を張り合った事が起源だと言われているんだ。

だから、神竜や、その神は魔界に入れないし、闇を持つ者は神界には入れない。

人や竜は、条件さえ整えば、どこにでも行けるんだけどね。


魔王は、何代か存在していると思うんだ。

初代は神竜か神なんだろうけど、この結界合戦をしていた時の魔王は、竜か、竜を依代としていた神なんじゃないかと思う。

だから、竜は通過出来るようにした。

俺は、そう思うんだ。


そういう結界起因の境界とは別に、天然の境界――ハザマの森や、ここのような界と界との間の不安定な領域も存在するんだ」


「人は何故、天界との境界を通れぬのじゃ?」


「各境界を通るには条件が有るんだ。

竜も、竜体でなければ人界と天界の境界を通過出来ないんだよ。

人は、竜宝を組み合わせた、あの船の力が有れば通過出来るんだ。

他の境界も、無条件では通過出来ないよ」


「あと、力の強い竜族が、他の種族と手を結ぶのを嫌がって、竜を孤立させる為に作った、とも言われてるよね」


「そうだね、サクラ。

だから竜宝が進化し、発達したらしい。

それまでは、生活を便利で、豊かにする為の道具が主流だったんだけど、境界を通過する為の竜宝が生まれ、兵器が生まれ……

この剣達も、そうやって作られたんだ」


「人は、魔界への境界を越えられるのか?」


「その為の竜宝を用意するよ」にこっ


「二人とも、竜の要素あるから だいじょぶ~」


「何じゃ? それは?」


「慎玄殿は、竜の血族だし、姫はクロから竜の力を貰ってるから、条件が竜に近くなっているんだ」


クロと姫が頬を染める。

「クロ兄、かわいい~♪」「るせーっ!」




 その後も、単発の襲撃が有ったが、難なく進んで行った。

「ぽつりぽつりと何なんだ?」


「俺達の位置を確認してるんじゃないかな?」


「相手にとっても、私達の気を掴み辛い場所だという事ですね?」


「たぶん そぉだね~」




 午後になり、景色が変わらなくなってきた。

「あの岩、ずっと同じ所にあるよな……」


「進むのは限界みたいだね」


「やっぱり、境界 越えるのムリみたいだね~」



 馬車が停まる。

皆、サッと外に出た。


馬車の前に、闇の穴が穿たれた。


――が、


手だけが出てきた。


その手が白旗を振る。


 この気……


「馬頭鬼! 出ておいでなさいっ!」

二人の珊瑚――いや、紫苑と珊瑚が、声を合わせ、凛と言い放った。


「出たら殺す気でしょ……」弱々しい声がした。


皆、近くの者と顔を見合わせる。


「話を聞こう。紫苑殿、珊瑚殿、いいかい?」


紫苑と珊瑚が頷き、少し下がった。


「私……先日、天竜王様の御力を間近で拝見致しまして、いずれ、天魔どちらかに殺されると確信致しました。

それで、以降、次の準備中と偽り、『魔王』と、あなた方が呼んでいる御方からの(めい)を保留し、これまで、身を隠しておりました。


ですが、この空間も、もはや限界。

収縮を始めました時に、あなた方の気を感じ取りまして……


その……

あなた方を、この地から お出しする代わりに、私の一族の安住の地を頂きたいのです」


「これまでの事を棚に上げて交渉かよ!」


「クロ、そう怒らないで。

この前、三眼の玉も返してくれたし、改心してるみたいじゃないか」


「お怒り、ごもっともです。

私は、どうなっても構いません。

族長として、一族の命さえ、お助け頂ければ、他に何も望みません」


「もしかして……

今までのも、一族のみなさんを護るためなの?」


「ええ、まぁ……

そうしなければ、皆を闇兵――傀儡にすると……

たいした力を持たぬ我々には、抗う(すべ)などございません」


「それにしては、ノリノリだったよなぁ」

「私なんか、背を撫でられ――」

「うえ~」

「サクラは、いないか寝てるかだっただろ!」

「だって知ってるも~ん」

「静かにしてくれ!」


「解った。だが、王と相談したい。

先に誰か、天界に送ってくれないか?」


「それは、もう無理なのです。

私にはもう、魔王の加護がありませんので、今、ここに穿った穴が最後なのです」


「皆、どうする?」アオが振り返った。


「父上様は私が説得します!」

フジが身を乗り出した。


「中の国で良ければ住んでよいぞ」

「一族の方々には、罪は御座いませんので」

「魔王や魔界の事を教えろ」


「そうだな。

出して貰えるなら、安住の地を確保しよう。

魔王や魔界の事を教えて貰えるのなら、お前も、そこに住めばいい」


「ありがとうございます!

この御恩には、必ず報いますので!

では、お入り下さい」


「穴、拡げてよ~」


「闇の力が足りず、これが限界なのです」


「仕方ないなぁ」

サクラが闇の気を纏い、闇の穴を大きく拡げた。


「早く入って!」


皆が馬車に乗り、馬車が駆け込むと、サクラは闇の穴を閉じた。


「闇使いの天竜……」馬頭鬼が驚き、口にした。


サクラがサッと口の前に指を立てる。

馬車の中は、姿が戻ったと騒いでいて、聞こえていないようだった。


「あ! 完全に閉じたら――」


「だいじょぶ~♪ 俺が穿つから♪」


 そして、再び穴を穿つと――


 そこは、青く煌めく花が咲き誇る草原だった。

そよ風に揺れる小さな花が、青い波のようで、微かな鈴の音のような可愛らしい音色が、絶えず聞こえていた。


「これは……馬鈴草(マリンソウ)……」


「ここなら満足でしょ?

クロ兄、フジ兄連れて長老の山 行ってよ。

馬頭鬼さん、みなさん出してあげて♪」


サクラは、おもいっきり穴を拡げた。


ぞろぞろと馬頭鬼の一族が出てきた。


「思ってたより多いね」「だね~」あはは……


クロが戻って来た。

「馬頭鬼、父上がお呼びだ」掴んで消えた。


「いやぁぁぁぁぁ~~~」

馬頭鬼の叫び声が木霊(こだま)した。





 サクラが馬頭鬼族を連れて行った場所は、

ハクが天亀の湖に向かう時に通過した

「猫に木天蓼(マタタビ)の如し」な馬鈴草が

群生する草原でした。


桜「コレ食べちゃうの?」


馬「花の季節は香りだけで十分ですが……」


桜「食べちゃうんだ~」


馬「少しは……草食ですので……」


桜「そっか~ じゃ、ちゃんと畑 作ってねっ」


馬「はい♪ もちろんですとも!」


 サクラは馬頭鬼族の皆さんとも、

すっかり仲良くなっています。




 この世界、三界を縦割りすると――


━━━━━━━━━━━

  神界(天神界)

─────────── 天界

    天界

━━┯━━━━━━━━

  │

地上│

魔界│  人界     地上界 

  │

━━┷━┯━┯━━━━

    │異│

 地下 │間│

 魔界 │平│魔神界  地下界

    │原│

━━━━┷━┷━━━━


こんな感じ。

ハザマの森は、全界に通じる領域です。


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