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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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異間域2-蒼満月

 三界は異空間に接しています。

その主要な接点が、異間平原と各神界に在るそうです。


 ハザマの森を目指し、異間平原を走る馬車の前方に、天から一筋の光が降りてきた。

光が馬車の中に射し込み、床に達すると、接した面に虹色の輝きが生じ、光を辿り昇っていった。


虹色に煌めく光の道を聖霊が降りて来る。


聖霊は馬車の中に入り見回した。

【あなた方は、もしや……

島で私をお救い下さった皆様では?】


「ああ、あなたは空龍殿とお話しされていた方ですね?」

慎玄が微笑んだ。


【はい……あの……

皆様に歌舞を要求したのは私です】


「へ!?」慎玄とフジ以外。


【おかげさまで『闇』からも解放され、今は仲間と共に音楽を楽しみ、平穏に暮らしております】


「そうですか……」


【その後、クリュウは?】


「ご家族と再会され、天竜王国で暮らす事になったところです」


【そう♪ 良かった……】


「ところで、あなたは、異間平原(こちら)にお住まいなのですか?」


【いいえ、国に帰る途中です。

聖霊の笛の気を感じ、もしやと思って参りました】


「異間平原の外に、連れて行って頂けませんか?」


【あの道を昇る事が出来ましたなら、お連れする事が叶うのですが……】


「試してみるか」クロが立ち上がる。


【今、出てはなりません!

もうすぐ月が昇ります。

ですから、ここも閉じなければなりません】

幌の開口部を指す。


「どういう事ですか?」


【今宵は、(そう)の満月。蒼は女神の月。

その光を浴びますと、今の状態が定着してしまいます】


「と、いう事は……」


【ご想像の通りです。

能力が制限されたままとなってしまいます。

性別も……蒼月ですので、女性が定着します。

ですので、陽が昇るまで、闇の中に いらして下さい。


今の私には、力などございません。

お連れする事が出来ず申し訳ございません。

ですが、その事だけでも、お知らせせねばと参りました。


ここは特殊な地……

私も、そう長くは留まれません。

出来る限り、お話し致しますので、お聞きください。


満月前後の『呪縛の時』が終われば、昼間ならば、能力は半分程は戻りましょう】


「元に戻るには、やはり ここから出なければなりませんか?」


【はい。この地では、能力が全て元に戻る事はありません。

満月の後も、数日は月の影響で、能力が大きく抑えられてしまいます】


「新月まで待てばいいのですか?」


【いえ、蒼月が新月になれば、緋月(ひげつ)――男神(おがみ)の月が満月となります。

この地では、十五日毎に満月が巡ってくるのです】


「男神って事は、皆 男になるのか?」


【そうです。緋月の力が大きくなります、満月の二日程前になりましたなら、皆様、男性になります】


姫と珊瑚が顔を見合わせる。


【いずれの月も、満月の光を浴びてはなりません】


聖霊の姿が揺らぐ。


【すみません。限界のようです。

皆様、どうかお気をつけて……】


姿が薄らいだ聖霊が、光の道を昇り、幌を通り抜けて行った。


「あっ! ありがとう!」


「仕方ないなぁ~ 結界 張るね」

サクラが立ち上がり、術を唱え始めた。


夕闇の名残の微かな明るさが有った幌の中が真の闇になった。


「馬車ごと覆ったからね。

今夜は出られないよ」


(サクラ、この結界は?)


(闇の結界 張ったんだ。

あんまり使いたくなかったんだけどね……)


(その内側に、光の結界を張ろうか?)


(そだね……敵襲 防ぐ為にも必要だね。

俺は闇を保たないといけないから、アオ兄、出来る?)


(やってみるよ)


暗闇の中で、アオも立ち上がり、術を唱えた。


幌の外が明るくなる。

アオとサクラが向かい合い、目を閉じて合掌していた。


「月の光なのか?」


「いや、光の結界だよ。

サクラの闇の結界の内側に張ったんだ。

俺達は陽が昇るまで結界を保つ。

敵襲も防ぐから、皆は眠って体力を温存してくれ」


「お前らって……

ここでも そんだけの力があるのかよぉ」


「これが今の限界だよ。

終わったら寝させて貰うよ」


「もちろんだ」




 襲撃は数回有ったが、魔物に結界を突破される事は無く、防ぎきって朝を迎えた。

式神に外を確認させ、結界を解除した。


全員 外に出て大きく伸びをする。


「教えて貰えて良かったな」


「そうだね。力を奪われずに済んだね」


「次は、どうやって異間平原(ここ)を出るか、だ」


「このまま進んでたら、なんか いいコトありそ~な気がする~♪」


「うん。そんな気がするね」


「キン兄かハク兄が助けに来てくれるとか、か?」


「う~ん……話せないから わかんないけど、たぶん違う~」


「なんかフジ、静かだな」


「リリスさんとお話しちゅ~♪」

(話せるのかい?)(難しぃと思う~)


「そっか……あ! メシ作るから、まだ寝るなよ」


「うん♪ お腹ぺこぺこ~」


「よぉし! すぐだからなっ」


馬車の外で、楽しそうに作り始めた。


「いい奥さんになりそうだね」アオが笑う。


「かわいいね~♪」


「それは困るのじゃが……」


「あ……」アオとサクラ。


「何とかするからっ」

「俺達も困るし、ねっ」

「心配しないで!」

「そぉそぉ、だいじょぶだよ!」


「いや……ワラワより……」馬車の中を見る。


視線を追うと――

フジが膝を抱え、その膝に顔を埋めて、馬車の隅っこで小さくなっていた。


(うわ~)(深刻だね……)


(それに比べて……)二人、クロを見る。


(なんで あんな楽しそ~なんだろ?)

(やっぱり、傍にいると違うのかなぁ?)

二人、姫を見る。


(落ち着いてるよね……)

(貫禄が増したような……)


「何じゃ?」


「いや、落ち着いてるから……」


「ここを出ればよいだけじゃろ?

ならば悩むより行動じゃ♪」


「流石、姫様……そうですよねっ!

何としても ここから出なければっ!!」

フジが顔を上げ、拳を握りしめていた。


「出来たぞ!」


「腹ごしらえじゃ♪」「ごはん~♪」


紫苑、珊瑚、慎玄が戻って来た。

「何をしておったのじゃ?」


「現状、何が出来るのか試しておりました」

慎玄が言い、二人が頷いた。


「紫苑、その体で跳びまわって大丈夫か?」


「特に問題ありませんが……

強いて申すなら……少々 邪魔ですね」

胸に視線を落とす。


「後で晒木綿(さらし)を巻いてあげるわ。

皆様もね♪」珊瑚が微笑む。


「姫も巻いてるのか?」


「いや……ワラワは……」


「要らねぇか♪」クロが笑う。


「言わせておけばっ!!」立ち上がる。


クロが逃げる。


姫が朱鳳を抜き追いかける。


朱鳳で宙を斬った!


小さな火球が飛ぶ。


「やめろっ! 姫っ!」


次々、火球が飛ぶ。


「うわっ! やめてくれーっ!」



「ここでは姫の方が強いね」

「ここじゃなくてもでしょ」

「確かに……」

「ちび火球が出てるね~♪」

「満月を越えたからかな?」

「たぶん、そぉだろね~♪」





桜「クロ姉、おかわり♪」


黒「まだ食うのかよ。

  食料 限りあるんだからなっ」


桜「でも足りな~い」


黒「しょーがねぇなぁ……ほら」


桜「ありがと♪ クロ姉♪」


青「気づかないのか? クロ」


黒「ん?」


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