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三界奇譚  作者: みや凜
第一章 竜ヶ島編
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砂漠へ4-陰陽師達

 目指す砂漠は、もうすぐです。


 アオと蛟、それと、二人を付けている姫は、森の中の小さな村を出、野営地に向かった。


「森の木を残しているのは、砂を防ぐ為だそうですよ」


「そうだったんだ」


「姫様は、夕食は要らないのでしょうか……」

チラと後ろを見る。


「茶屋で頼んだ甘味を、殆ど食べていたからね。

 もう、要らないのかもね」くすくす♪


(アオ兄! 左!)


闇の穴が開いた。


(サクラ、ありがとう。逃げて!)(うんっ)


「姫様! これを!」剣を投げた。


「かたじけないっ!」受け、構える。


 今度は竜みたいな奴は、いないのか……?


 闇黒(あんこく)色の竜の如き魔物が率いている時は、アオ達の誰を見てなのか退却するのだが、そうでなければ、容赦無く向かって来るので激しい戦闘となる。


 姫様……動きが鈍いような……あっ!!


「姫っ!!」


姫の背後に迫っていた魔物を斬り捨て、返す刀で前方の魔物を斬り上げる。


そのまま背で庇い、斬り続けたが、囲まれてしまった。


「すまぬ……ワラワのせいで……」


「いいからっ」「アオ殿!」「姫様!」


陰陽師達が加勢した。蛟も加わる。


「蛟、呼んで来てくれて、ありがとう」


「いえ……」「何故(なにゆえ)、照れておるのじゃ?」


「姫様、余裕なの?」「あ、いや……」けぷ。



 戦闘中、陰陽師達は美しく舞いながら術を繰り出す。

魔物の弱点を見極め、炎や氷や雷などで攻撃したり、聖獣を召喚し、戦わせたりする。

二人、合わせて舞い、大技を放つ時など、戦いの最中だというのに美しさに圧倒される。



 残り少なくなった魔物達が退却し、辺りが静かになった。

陰陽師二人は 、氷の大技を(はな)った疲れなど微塵(みじん)も見せず、視線だけで互いを(ねぎら)っていた。


その陰陽師達の間に、姫がピョコッと割って入った。


二人の顔を交互に見ながら「恋仲か?」


ズルッと小さくよろけるのもピッタリの二人。

体勢を整え、顔を見合わすまでズレない。


「どぅなのじゃ?」迫る姫。


「あの……」「いえ……」


「旅が終わったならば、我が城にて、祝言(しゅうげん)(うたげ)を致そぅぞ♪」

ぴょんぴょん♪


姫は、面白いものを見つけたとばかりに止まらない。


「陰陽師とやらは、夫婦(めおと)となってはならぬのか?」ずいっ。


「……夫婦には、なれません」二人、揃う。


「やはり、陰陽師じゃからか?

 そのよぅな、くだらぬシキタリなど、ワラワが変えてくれるわ!!」


「いえ……その……兄妹ですから……」


 え……?


「えーーーっ!!」一斉。


「姉弟かも知れませぬが……」


「それは、どちらでもよいっ!!」


「どうして今迄――」「黙っておったのじゃ!?」


「隠すつもりも」「御座いませんでしたが」

「話す機も」「御座いませんでしたので……」


「さよぅか……して、兄妹なのか姉弟なのか判らぬと申すは如何(いか)な事なのじゃ?」


「私共は、幼少の記憶が無く」

「両親とも離れて暮らしておりました」


「育ててくださいました祖父母も」

「お産の場には、立ち会っておらず」


「どちらが先に生まれたのか」

「判らぬままなので御座います」


「二人は双子なのじゃな?」


「はい」揃った。


「して、ご両親は?」「姫様、それは――」


「構いませんよ」揃って、にっこり。


「健在なのじゃろ?」


「はい。少なくとも父は」


母御(ははご)は?」


「確かめておりませぬ故」


父御(ててご)は確かめたのか?」


「祖父母を、父の元に送った際、遠くから父を見たのです」

「父は、都で新たな家族と共に暮らしておりました」


「酷い話じゃのぅ」うるうる。


「いえ、御家を守る為、そうせざるを得なかったそうですので」

「恨みなどは全く御座いません」


「むしろ、こうして、私共が御家に縛られる事無く、好きに生きてゆける幸せを」

「自らを犠牲にしてまで、くださったのだと感謝致しております」


「さよぅか……」うるうるうる――



 野営地に向かって歩き始める。


「姫様、具合でも悪いのかい?」


「いや……食べ過ぎただけじゃ……」ぷいっ。


「なら、よかった。

 姫様の動きが鈍いから心配したよ」


「のぅ……アオ……」


「何だい?」


「……『様』など要らぬ」ボソッ。


「ん? 外方(そっぽ)向いたまま、ボソボソと何を言ったんだい?」


くるっ!「じゃから!

 先程のよぅに『姫』だけでよいのじゃっ!」

ふんっ!


「え……?」立ち止まる。


姫はズンズン先に行ってしまう。


「待って! どういう――」追い掛ける。


「理由など無いのじゃっ!」駆け出す。


「いや、気持ち悪いしっ!」更に追う。


(うるさ)いっ! 言ぅ通りにせよ!」全力!


「どうして逃げるんだよっ!」同じく!


「何故、追って来るのじゃ!? さては――」


「え? ……何?」止まる。そして後退る。


くるっ。「ワラワに惚れたのじゃな♪」にやっ♪


「来るなっ!!」(きびす)を返し、全力で逃げる。


「婿にしてしんぜよぅぞーっ!♪」追う。


そのまま、蛟と陰陽師達の間を抜け、村の方へ――


「仲が御よろしいですねぇ」


「そうですね」くすくす♪



♯♯♯♯♯♯



 その頃、野営地近くの森の中では――


「おや、竜ヶ峰の竜神様」


「あ……見つかっちゃった~♪」きゃは♪


慎玄とサクラが会遇していた。


「お坊さま♪

 みんなにはナイショでお願いしますねっ♪」


(かしこ)まりました。

 竜神様は、ずっと私共をお護りくださっていらっしゃるのですね。

 有り難き事に御座います」合掌。


「ん~とぉ……。

 じゃ、そゆコトにしとく~♪」きゃははっ♪


サクラが西の方角を向いた。

「みんな、もぉすぐ戻って来るよ♪」


然様(さよう)で御座いますか。

 では、これにて……」


「うん♪ またね~♪」





姫「凜、おヌシも『姫』でよいぞ」


凜「え?」


姫「嫌なのか?」


凜「いえいえ、とんでもございません!

  でも、どうして……?」


姫「友ならば、当然であろぅ?」


凜「ありがとうございますぅ」


姫「(おもて)を上げよ。

  友じゃと言ぅておるのに」


凜「じゃ、楽にさせていただきま~す♪」


姫「そこまでとは……まぁ、よいか。

  許すぞ。

  ワラワは寛大じゃからの♪」


凜「じゃ、アオにも、友として?」


姫「とっ、とーぜんじゃろっ!」真っ赤。


凜「か~わ~い~い~♪」


姫「煩いのじゃっ!!」


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