涅魁東4-真祐の術
大陸をアチコチしますので、サブタイトルは、人界での話の中心国にします。
1話まるっと天界や魔界に行ってしまっても、です。
♯♯ 天界 ♯♯
長老の山の鍛練場に、姫の船も置かれた。
「ネイカさん、
魔界用の方舟に使ってた魔宝に似た竜宝と、人が境界を通過する鍵の竜宝を集めたから、甲板に置いとくね♪
足りない物は、いつでも言ってね」にこにこ♪
「工場長さん、ご協力ありがとうございます。
必要な資材は、この蛟にお申し付け下さい」
量産型竜宝工場の関係者も救助されたからと、その工場長が協力を申し出、人界用の船の改造が始まった。
「爽蛇、船の事は頼んだよ」
「お任せ下さい、アオ様♪」
「なんか~、爽蛇、嬉しそ~」
「わくわくしてます♪」
「アオ様~♪ 執事長~♪」
蛟の一団が飛んで来た。
「アオ兄の屋敷の……」「うん……そうだね」
「私達にも何かさせて下さいませ♪」アオを囲む。
「それなら、この皆さんの食事を――」
「畏まりましたっ♪」
アオが言い終わらないうちに、嬉々として散った。
「爽蛇、皆の事も頼んだよ」
「はい♪」
♯♯♯
王子達はシロに連れられ、大婆様の部屋に向かった。
「アオ兄様のお屋敷の皆さんは、とても雰囲気が良いですね」
「フジの所は違うのかい?」
「私の執事長は、堅くて厳しくて……」ははは……
「クロ兄も、怒られてばっかりだって~」
「それは、クロが悪いんじゃないかなぁ」
「あ、そっか~」きゃははっ♪
大婆様の部屋に着いた。
大婆様がやわらかく微笑んでいた。
【フジ様、先日はお助け頂き、ありがとうございました。
そして、お受け頂き、ありがとうございます】
神と成ったアメシスが礼をした。
「いえ、そんな……
私の方こそ御指名頂き、ありがとうございます」
「では、早速、始めようかの」
【アメシス様とフジ様は中央に、既に神竜との絆を結んでいらっしゃる方々は、こちらへ――】
立ち会いの神の指示で、それぞれ決められた位置に立つ。
やはり、アオ兄様とサクラは、
スミレ様、ヒスイ様と
絆を結んでいるのですね……
フジは、アメシスの左右後方に立った二人を交互に見た。
【アメシス様、フジ様、胸の高さで右手を合わせてください】
立ち会いの神が、真祐の術を唱え始めた。
アオの後ろにスミレが、サクラの後ろにヒスイが現れた。
立ち会いの神の詞に続き、大婆様が詞を唱える。
護竜甲が、アメシスとフジの右手の上方に浮かび、紫を帯びた光を放ち、二人を包む。
立ち会いの神と大婆様が、数回 交互に唱えた後、アオとサクラが声を合わせて唱え、立ち会いの神と大婆様が声を重ねると――
二人を包む光に煌めきが生まれ、唱え終わると同時に、合わせた右手に吸い込まれた。
スミレとヒスイが微笑んで消える。
【これでいつでも心が通じます。
三界の平和の為、私の力を御存分にお使いください】
「ありがとうございます、アメシス様。
これから宜しくお願い致します」
立ち会いの神が、大婆様と、その両横に立つシロとキンに向かい、
【魔界に君臨する者は、神竜に対して強固な結界を成している為、私共は魔界に入る事が出来ません。
天竜の皆様を利用する様な形となり、誠に申し訳ございませんが、以後、宜しくお願い致します】
深々と礼。
「天竜の力だけでは、太刀打ち出来ぬ相手でございます。
神様方の御協力無くして、平和への道はございません。
どうか、無力な私共に御力添えを、宜しくお願い致します」
もっと深く礼。
♯♯♯
神々は神界に帰って行った。
兄弟は中庭に出た。
「アオ兄様、サクラ、あの術を知っていたのですか?」
「知らな~い。唱えたのヒスイだから~」
「うん。スミレ様が、ね」
「いつから絆を結んでいたのですか?」
「それも知らな~い」
「気づいたら、傍にいらっしゃったんだ」
フジが ため息をつく。
「どうして今まで黙っていたのですか?」
「だって~、兄貴達にも、それぞれいると思ってたんだもん」ふくれる。
「俺も、そう思っていたよ」
「フジ、気持ちは解るが、そう二人を責めないでやって欲しい。
自分が当たり前だと思っている事は、気づき難いものだ」
「キン兄様……」
その時、アオとサクラに緊張が走り、二人がサッと顔を見合わせた。
「キン兄、フジ兄、掴まって!!
クロ兄に、せ~のっ!」
クロが闇黒色の魔物の直中に居た。
クロの背で姫が聖輝水を放水し、クロが風技で、それを拡散している。
「フジ兄! リリスさんをっ!」
サクラが下を指す。
そこは、空龍の家の上空だった。
フジが豪速で急降下する。
アオとサクラがキンを挟み、治癒の光を溜める。
キンが一気に、その光を拡散させた。
空かさず、サクラが光の球を膨らませる。
「キン兄、アオ兄、手伝って!
平たくするよ!」
大きく拡げて下に放ち、元に戻って落下する人々を受けた。
「追加……無いかな……」
三人、背中合わせで宙を睨む。
暫くそうして、三人は警戒を解いた。
下では姫が聖輝水を配っていた。
クロがコギ、紫苑、珊瑚を連れて現れた。
「治療しよう」降下した。
空龍一家はハクが護っており、無事だったが、フジは両手を固く握りしめ、唇を噛んで俯いていた。
「フジ、大丈夫か? 暫く片時も離れるな」
「ありがとうございます。キン兄様」
♯♯ 天界 ♯♯
夜になり――
ひと通り治療を終えたアオとサクラは、長老の山の蔵に入った。
(護竜宝達、この前の返事、お願い)
五つの護竜宝の魂が、アオとサクラを囲む。
【竜宝の総意をお伝え致します】
【貴殿方のご依頼は、やはり……
私共の存在意義に反するものです】
【ただ、その事が発生した場合、私共が悪用される可能性が極めて高く、それだけは避けなければなりません】
【ですので、お二人には……
全ての竜宝にとりましての絶対的な主、つまり、竜宝の王とお成り頂き、悪用を回避する王命を頂く事を条件とし――】
【先だってのご依頼も、王命として、お受け致します】
(竜宝の王――)(――って何をすればいいの?)
【竜宝の声をお聞き頂き、正しくお使い頂く。
それだけで御座います】
【お二人にとりましては、容易い事と存じます】
【悪意を持つ者に使われたくはない。
それが全ての竜宝の願いなのです】
(竜宝の存在意義に反する お願いをした俺達なのに、王になってもいいの?)
【お二人のお気持ちは、十分 理解しております】
【竜宝を内に持ち、共に成長された、お二人以上の適任者は居りません】
【お二人の御心、御力、この上無く理想的な王であると存じます】
(そんなに誉められても……ねぇ)顔を見合わす。
(でも、ならないと叶えて貰えないなら――)
(――やってみる?)
(二人で、だし)(やる?)
(ん、そうだね)(うん♪)
【竜宝の王とお成り頂けるのですね?】
(謹んで、お受け致します)二人、声を揃えた。
蔵の中が、竜宝達の歓声で満ち溢れる。
【皆、喜んでおります】
【我等が王、宜しくお願い致します】
【全竜宝への御布令は、行き届きました】
【近日中に、竜宝の国にて御挨拶をお願い致します】
「えーーーっ!?」二人、声が揃った。
安請け合いだったか?
と、早くも、ちょっぴり後悔している竜宝の王達であった。
竜宝の王達は、工房を訪れました。
桜「アカ兄、コレ~♪」小さい紡縁鏡♪
赤「ありがとう。
流石、サクラだ。的確だな」
桜「えへ~♪ で、どれ?」
赤「これだ」
桜「わあぁ~♪♪♪
アカ兄♪ コレにも込めてっ♪」
赤「それは……」
桜「ニセモノの守護珠♪」
赤「持っていたのか?」何故?
桜「うん♪ キレイだから~♪」
青「それって……」
桜「シロお爺様が作ったヤツ~♪」
青「もしかして、俺の解放の為かい?」
桜「そ♪ ホンモノ使わないとだったから♪」
青「もう一度、長老の山に行くよ
お礼を言わないと――」
桜「じゃ、俺も~♪ アカ兄、お願いねっ♪」
赤「うむ」
桜「アオ兄♪ せ~のっ♪」




