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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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涅魁東3-人は竜が好き?

 前回まで:リリスの母は助かりました。


 伊牟呂の国に入港した翌朝――

まだ治療が必要な人々の、診療所への移動はクロと姫に、治療は慎玄と くノ一達に任せ、

白銀の竜(ハク)は、帰宅可能となった十数人を背に乗せ、仁佳(ニカ)の帝都へと飛んだ。


 帝都近くの山に降り、木々を縫って帝都の外れの森まで飛び、人々を降ろした。


「近くの方で歩いて帰れるのなら、どうぞ。

ですが、迎えの者が参りますので、無理はなさらず、お待ち下さいね」

竜使い役の睦月が言い、竜が飛び去った。


 待っていると、馬車が三台、木々の間を抜けて来た。

帽子を目深に被っている馭者達は、ハクと睦月。

もうひとりは、馬車を手配して待っていた爽蛇である。




 ハクの馬車は、帝都の中央部に向かった。


 この辺り……この前、来た所だな……


人探しの貼り紙が、たくさん有った辺りに差し掛かった。


「その先の、飯屋の角で降ろして下さい」

声が掛かった。


「畏まりました」


馬車を止める。


「お世話になりました」

降りた男が礼を言った時、


「お前……無事だったのか!?」

飯屋から出てきた男が、驚きの声を上げた。


 あ……マジかよっ!?


ハクは、帽子をより深く下げた。


「アンタ……本当に助けてくれたんだな!」

飯屋から出て来た男が、ハクに駆け寄った。

「あっ……声上げちゃマズかったか? 隠密さん」

ハクの目を見て、慌てて声を潜める。


「いや、大丈夫だ」諦めて帽子を上げた。


「知り合いなのか?」助けた男が驚いている。


「まぁな。しっかし無事だったとはなぁ。

ありがとう……本当に……ありがとう」

何度も頭を下げる。


「ただの偶然なんだよ。

大勢の中に居ただけだから、もう、頭なんか下げねぇでくれよ~」


「そうはいかねぇよ!

コイツの婚約者なんて、こっち戻ってずっと、涙に暮れてたんだからよぉ。

そうだ! お前、早く顔見せてやれ!」


背中を突かれた男は頷き、駆けて行った。


「昨日辺りから、竜が人を助けたって噂が聞こえてな。

もしかしたらアンタらかと思ってたんだ。

なぁ、竜って本当に居るのか?」小声で話す。


「居ますよ」にっこり


「俺も乗ってみてぇなぁ。

助かった人達、竜に乗って帰って来たって、騒ぎになってんだよな」


「私達も乗りましたよ」

「銀の竜にな」

「赤や黒や、いろいろいたよな」

「綺麗でしたよね」

馬車の中の人達が言った。


「いいなぁ、どこに行ったら乗れるんだ?」


「じゃあ、この方々を送ったら、またここに来るから待っててくれ」


「わかった♪」



 大きく手を振る男と別れ、助けた人達を送る先々で、竜の話が聞こえて来た。


 こんな早くに広まるんだな……

 人と人の戦も、こんな風に直ぐ終わると

 いいんだがな……



♯♯♯



 男と約束した飯屋に近付くと――


人集りが出来ていた。


 こりゃあ、近寄れねぇなぁ……


手前で馬車を止めると、一斉に駆け寄って来る。

「え!?」


「ハク先生、すみません。

友達が集まってしまって……

みんな竜に乗るまで帰らないって……」

助けた男が、困り顔で言う。


若者達の期待の眼差しに、ハクは、たじろぎながら、

「……本当に? 乗りたいのですか……?」

恐る恐る聞いた。


「はいっ♪」一斉に答える。


 マジかよ……こんな嬉しそうに……

 竜は……人に嫌われてねぇ、ってか?


「街の中に竜を降ろす事は出来ませんので……

森に竜を呼びますので、ご移動願えますか?」


「よしっ♪ ウチの荷馬車に乗れ♪」

「俺の荷馬車も出すぞ♪」

「親父の借りた♪」「勝手に出したんだろっ♪」

笑い声が途絶えない。

わいのわいのと分乗し、森に向かった。


(アオ、そっちはどうだ?)


(順調ですよ。

そちらの患者さん達は、いかがですか?)


(今、仁佳の帝都に送りに来たんだが……)


(何か有ったんですか?)緊張が走る。


(いや、魔物とかじゃねぇんだ。その……

竜に乗りたいって人達が集まっちまってな)


(嬉しい事ですね♪)


(交替が遅くなりそうなんだが、兄貴が、お前らを天界に連れて行きたいって言ってたんだよ。

兄貴と話してくれねぇか?)


(解りました)


森に着いた。待っていた爽蛇と睦月が驚く。


「馬車を返さないといけないんだ。

竜は呼んでるから待っててくれ」



 少し離れて、馬車を爽蛇に任せ、竜体になった丁度その時、キンとフジを連れて、クロが曲空して来た。


「四人で飛べば、すぐ終わるだろう?」


「ありがとう、兄貴」


竜達が飛んで行くと、歓声が上がった。


(嬉しいのぅ、クロ♪)(だなっ♪)



 元気な若者達が先に背に乗り、娘達を引き上げる。

楽しげな笑い声や話し声と共に上昇した。


 仁佳の国を一周し、煌めく海上を少し飛んだ。



♯♯♯



「ご自分達で帰る事は出来ますか?」

若者達が降りた後、睦月が尋ねた。


「はい。無理を申しまして、すみませんでした。

とても楽しかったです!

ありがとうございました」

助けた男が頭を下げたので、竜を撫でていた若者達も、慌てて頭を下げた。


「それでは私共は、これにて――」


「あのっ! ハク先生は?」


「既に任務に戻りました」


「そうですか……

でしたら、これをお渡し願えますか?

もし……時間が合うなら……」

男の隣に居た女性が、封筒を差し出した。


「お預かり致します。お幸せに」にっこり



 竜達が舞い上がる。

直ぐに木々の向こうに見えなくなった。

若者達は、空の上で『竜使い』達から聞いた話を胸に、家路に就いた。


 (たぶら)かされてるなんて悔しいじゃないか。

 人と人が争っている場合では無い。

 知恵の力で、

 人の世を護らなきゃならないんだ!



♯♯♯♯♯♯



 雪希の治療をハクが交替し、アオとサクラをクロが連れて、船に曲空した。


「この船を、長老の山まで運べるか?」


「うん♪ アオ兄、そっちね♪」

右舷と左舷に分かれて、垣立に手を掛ける。

「キン兄、フジ兄、爽蛇、乗って~♪

じゃ、アオ兄♪ せ~のっ!」


甲板に竜と蛟を乗せた大きな船が消えた。


「竜は皆、アレが出来るのか?」

姫が、船が有った場所を指す。


「まぁ……だいたい出来るらしいな……」




♯♯ 竜ヶ峰 工房 ♯♯


 アカは黒装束を纏い、暗室に入った。

壁に掛けている恍恒鏡(コウゴウキョウ)の前には卓が有り、二つの水晶玉と、色とりどりの芳輝石(ホウキセキ)で出来た小さな彫刻が、薄ぼんやりと光っていた。


 アカは恍恒鏡の前に立ち、水晶玉を掲げた。

鏡の中の水晶玉を見詰め、卓上から小さな彫刻を摘み上げては、水晶玉に込めていった。


(サクラ、長老の山に居るのだろう?)


(そぉだよ~♪ どしたの?)


(蔵から持って来て欲しい物が有る)


(ん♪ でも、すぐには行けないよ~)


(急ぎはしない)


(じゃあ、なんでも言って~)


紡縁鏡(ボウエンキョウ)を二枚。

小さい方が良い)


(は~い♪ あ♪

何するのか わかっちゃった~♪

縁結びの鏡だもんね~♪)きゃはっ♪


(そういう事だ。頼む)


(あとで見せてね~♪)


(うむ)


 これでよし。

 あとは、鏡を込めるだけだ。


アカは満足気に微笑んだ。





凜「アカ、仁佳に来ないと思ったら、

  工房に帰ってたのね~」


赤「急ぐ事になったのでな」


凜「アカが喋った……ご機嫌なのね~♪」


赤「フン……」


凜「ゴメンってば! で、それ何?」


赤「直ぐに判る」


凜「見せてよぉ」


赤「勝手にしろ」スタスタスタ……


凜「キレイ~♪

  アカ♪ 私にも作って~♪」追いかける。


 アカは何でも作ります。



赤「何でも、ではない」ふん


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