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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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涅魁東2-入港

 船は伊牟呂(イムロ)の港に入りましたが、

皆が涅魁(ネカイ)の空龍の家に行っているので、

サブタイトルは涅魁の方にしました。


 抱き合う親娘三人と、へたり込んでいる医者三人を見て、

見た事もない治療に驚き立ち尽くしていた、リリスの叔母・タツが慌てて椅子を勧め、茶を淹れた。


 陽が傾き冷えてきたので、タツは暖炉の火を起こそうとしたが、普段 使っていなかったらしく、種火が消えていた。


「困ったねぇ……

台所の炎鉱石(エンコウセキ)を使うしかないかねぇ……」

暖炉の前でタツが呟いた。


「私にお任せください」にっこり

フジは体で紫炎を隠して着けた。


「あらまぁ、どこから火を?」ぽかん


「手品は得意なんです」にこっ


そして、少し落ち着いた親娘に歩み寄り、

「フジと申します」雪希に頭を下げた。

空龍と雪希に緊張の面持ちで、

「リリスさんの事は、真剣に考えております。

ですが、ご挨拶は、また改めまして……

お話ししたい事も有りますので、お体に障りが無くなれば、きちんと、その為に参ります」

深く礼をした。


空龍は微笑みながら、

「固く考えないで下さい。

フジさんのお人柄は、もう よく存じています。

娘をどうぞよろしくお願いします」

フジに負けないくらい深く頭を下げた。


(こりゃあ、予定より早く、正体 見せなきゃなんねぇな……)


(そうですね……)


(ま、それは兄貴に任せるとして、だ。

今晩、どっちか残ってくれるか?

まだ安心出来ねぇからな)


(俺が残りますよ)(俺も~)


(ホント、お前ら、仲良しこよしだなっ。

んじゃ、船の患者の方に戻るわ)


(飛べる?)


(クロに頼むか~)


「船に戻りましょう」フジが来ていた。


「フジは、ここに居ればいい」


「船にも患者さんがいらっしゃいますから」にこっ


「いいの?」サクラがリリスに尋ねた。


リリスが返事の代わりに微笑んだ。


「今夜は、まだ様子を見なければなりませんので、二人を置いて行きます。

また明日、参りますので」ハクが立ち上がった。


タツが見送ろうとして、

「あら、よく見りゃ そっくりだねぇ」

また驚いていた。


「兄弟ですから」四人揃って、にっこり♪



♯♯♯



 ハクとフジが船に戻った後、雪希を安静に眠らせる為に、空龍とリリスは、隣のタツの家に泊まりに行った。


サクラが術で雪希を深く眠らせ、アオは治癒の光を当て続けていた。


(アオ兄、人のままじゃ、ソレ続けるの疲れるでしょ)


サクラは術を唱えながら、掌の光の球を輪に変え、両手を広げて大きくした。


(コレくぐりながら竜になってみて♪)


言われるがまま輪をくぐってってみると、人姿に竜の角と尾が生えた姿になった。


(あ、手足にも鱗が……半竜?

サクラ、これは何なんだい?)


(紫苑さんと珊瑚さんが半妖狐になるでしょ?

竜もできないかな~って、調べた~♪)きゃはっ♪

(俺も やる~♪)


(あれ? サクラ、翼……)


(あれれっ? かくれな~い?

どぉしてだろ???

アオ兄、光輪 出てるよ~)ふぁっさ ふぁっさ


窓に映った姿で確かめる。

(確かに……困ったね。隠せないよ)う~ん……

 それに、なんだか……この姿は……


(きぐるみ~♪)きゃははっ♪


半竜な二人は、光を当て続けた。


(これだと、強さは竜で、消耗は人だから、いっぱい頑張って、早く元気になってもらお~ねっ♪)


(ただ、誰にも見せられないけどね)くすっ♪


(どぉして翼と光輪、ひっこまないのかなぁ?)


(交替したら調べよう)


(そぉだね~

ね♪ リリスさんに竜になるトコ見せるの、なんか楽しみ~♪)にこにこ♪


(そうだね。

リリスさんなら、きっと喜ぶと思うんだ。

竜の姿を見せる時には、空龍さんと雪希さんも一緒の方がいいよね)にこにこ♪


(タツさんは空龍さんの妹さんだから、リリス女王様のお話、知ってるんだよね?)


(そうだね。知ってる筈だね。

なら、タツさんも竜に乗りたいのかなぁ?)


(きっと乗りたいよ♪)



 仲良しこよしな二人は、明け方までは半竜体で、その後は人姿で光を当て続け、にこにこと話し続けた。



♯♯♯♯♯♯



 船は伊牟呂の港に停泊していた。

ハクを降ろした後、洞窟で薬を作り、再び船に戻ったフジは、キンに呼ばれた。


「フジが助けた神竜(アメシス)様が神と成られ、フジと真祐(シンユウ)の絆を結びたいと仰って下さった。

天界が襲撃を受けた事で、少し猶予を頂いたが、明日にでも、その術を行いたいそうだ。

フジの意向を聞くのが遅くなったが、どうだろうか?」


「真祐の絆とは、どのような……?」


「そこから説明せねばならなかったな。すまない。

私達は護竜宝を使って、虹紲(コウセツ)の術で、神竜と絆を結ぼうとしている」


フジが頷く。


「この術では、結心(ユウジン)の矢に依って、導かれた神竜、または、神と絆を結ぶのだが、真祐の場合は、神竜側から竜を指定し、絆を結ぶのだ。

竜が申し出る場合、消耗品である結心の矢が必要不可欠だが、神竜が望んだ場合は、その必要が無い。

それだけの違いだ」


「では、私は選んで頂けた、と……?」


「そういう事だ。受けるか?」


「はい!

神と絆を結ぶ事が出来れば、リリスを護り易くなりますよねっ!」


「そうだな」フッ

「ハクから聞いたが、リリス殿に、竜だと告げるのを、早めた方が良さそうだな」


「そうですね……」


「治療の面からも、天界に移って頂いた方が良いようだから、船の改造が終わり次第、原稿を渡し、その場で、と考えている」


「船の改造とは?」


「この船を、今、天界に居る人達を運ぶ為の船に改造して貰うのだ。

だから、リリス殿も天界に住む事が出来る」


「そんな計画が……」


一時(いちどき)に、色々と平行しているな」笑う。

「七人兄弟で、本当に良かったと思う。

楽しみも増えるし、協力すれば、何事も乗り越えられる」


「そうですね」にこっ


治療を終えたハクが、部屋に戻って来た。


「ハク兄様、おかえりなさい。

皆様の薬は――」

言葉を止めたフジが「あっ」と言って頬を染め、慌てて出て行った。


「リリスさんに話しかけられたな♪」

ハクが目で追いながら愉しげに言った。


キンも微笑みながら目で追い、ハクに話を切り出した。

「明日の朝、回復待ちの方々は、移動出来そうか?」


「大丈夫だ。

クロと姫様が、大使館を通じて、診療所に収容して貰えるように手配してくれていた」


「では、移動が済み次第、天界に行く。

アオとサクラも連れて行きたい。

ハク、こちらが手薄になるが、頼んだぞ」


「ああ、任せろ。

少々何かあった方が、クロの天性が伸びて、いいかもなっ」笑う。


「何か開いたのは感じたが……

どのような天性なのだ?」


「今のところ姫様専用だが、ちゃんと発現すれば、クロの領域内、全てに恩恵があるだろうな」


「強い天性だな」


「そう、サクラが言ってた♪

俺には、そこまで分からねぇ」あははっ♪


「静香殿専用、か……」フフッ♪


「だから、暫くは姫様にベッタリじゃねぇか?

魔界まで一緒に行く為になっ♪

サクラはサクラで、アオにベッタリだろうが、俺達も安心して別行動とれるから、まぁ、好きにさせとこうぜ」


「そうだな。

サクラに任せる以上の事は、誰にも出来ないからな」


「あ、サクラと言えば、だ……

兄貴、手を出してくれ」


「何だ?」言いつつ、手を出す。


ハクはキンの掌に、治癒の光を帯びた手を翳した。


キンの掌が、呼応して光を帯びる。


「アイツの言う通りだな……」


「どういう事だ?」


「いや、サクラが、兄貴も治癒を持ってるって言ったんだ。

兄貴なら、自覚するだけで使えるようになるってな」


「そうか……

希少な天性の筈なのに、なんだか大安売りだな……」


「だなっ」大笑い。




 その夜、キンが、ひとり隠れて治療を発動させる練習をしまくったのは――



――言うまでもない。





凜「その格好――」ぷ♪ あはははっ♪


青「そんなに笑わなくても……」

桜「ねぇ。治療には最適なのにぃ」むぅ


凜「だって~ カワイイよぉ~♪」あはは♪


桜「アレ、試していい?」

青「いいよ」

桜「じゃあね~♪」光の球が膨らむ。


凜「え!?」

桜「ぽいっ♪」すぽっ


凜「ちょっと! これ何よぉ~」


桜「相殺♪ でね~」もうひとつ……


桜「はいっ♪」ぽいっ


凜「へ? ぁ……」くぅ……すぅ……


桜「アオ兄、できた~♪」


青「うん。やっぱり、その効果があったね」


桜「うんっ♪

  雪希さんには、ちゃんと使う~♪」


青「そうだね」にこっ♪


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