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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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島の夜5-キンとハク

 少々読み辛いとは思いますが、

とってもレアなので、御容赦ください。m(__)m


 サクラを見ていたキンは、ハクがアオを小突いた指をサクラが咥えたのを見て微笑み、サクラの寝言を聞いて、堪えきれず笑ってしまった。


ハクが振り向く。

「見てたのか~」囁く。


「出るか?」同じく。


ハクが頷く。

キンはハクの肩に掌を当て、小屋の外に曲空した。


「兄貴も起きてたのか~」


「あまりにも幸せでな」フフッ


「そっか♪ 俺もだ」ニヤッ


「人界に来てからの事を思い出していた」


「俺は、アオが修練場に現れた日の事だ」


「あれは、驚いたな」


「だよなっ。

んで、その日の夜、アオと話した事を思い出して、覚悟を新たにしてたトコだ」


「そうか」


「アオはあの日、俺に、王も補佐も、ひとりじゃない。

七人で国を治めるんだって言ったんだよ」


「そうか。

それで、あの時を境に、ハクが少し変わったのだな」


「俺が?」


「己ひとりの世界で、ただ、反抗を繰り返し、不平不満ばかり言っていたハクが、他の者(ひと)を見るようになった。

そう、私は感じたのだ」


「兄貴には、敵わねぇよな~

アオにもだけどなっ」あははっ


「私はサクラにも敵わない……」ボソッ


「ん? なんか言ったか?」


「いや、何も。

それで、ハクは本気で王太子と成る事を受けるのだな?」


「ああ。本気だ。

弟達に押し付けたりなんかしねぇ。

支えてはもらうけどなっ」


「私も、そのつもりだ」


「兄貴が!?」


「意外か?」


「ああ」


「私には、重すぎる荷だ。

しかし、七人ならば何の不安も無い。

ハクが、共に、と言ってくれて本当に嬉しい」


「兄貴……俺で、本当にいいのか?

やっぱ、アオの方が……」


「ハクがいい。

他の誰かがいいとか嫌だとかではない。

ただ、ハクがいい」


「そっか……なら、俺は、俺で、めーいっぱい頑張るだけだっ!」


「そうだな。私もだ。

アオは、私達を支えると言っていたが、私達がアオを支えるのであろうな」


「ま、持ちつ持たれつ、って事だと思っておこうぜ」


「そうだな」フッ……


天竜王国の方を見上げると、圧倒される程の星が煌めいていた。


「ハク、アオと三人で自習した時の事を覚えているか?」


「ああ、あれは、俺が まだ修練にも行ってなかった頃だったよな。

だから五人歳直前かぁ?

長老の山で各々が王学を受けてた時だったか、唐突に一室に集められたんだよな」


「あれは、魔物がハザマの森から襲来し、王都に迫った為、私達を結界の内に避難させたのだと、かなり後で聞いた」


「そっか。不自然だとは思ってたんだ。

あの時だよな。ヨチヨチピヨピヨなアオが、王族会がどうの、って言ってたのは」


「そうだったな」



――――――



「アオ、解らない事が有れば、遠慮なく聞いて欲しい」


「キン兄さん、だいじょぶでしゅ。

解りやすく書かれていまちゅから」


「そうか。

アオは初等の勉強も始めたのだね?」


「はい。もぉすぐ終わりまつ。

来月からは、中等に入る予定です」


 アオは、まだ、少し舌足らずで、サ行とタ行が混ざったような話し方だが、読み進める速さは、なかなかのもので、書いている字も確かなものだった。


「毎日、長老の山まで来ているのだよね?」


「はい。今朝も最長老様にお会いちまちた。

そのまま、王学の講義に来たんでつ」


「もう、長老の山(ヤマ)入りするのか?」


「いいえ、先にちたいことがありますので、

長老の山(ヤマ)入りは、ちょの後でつ。

足場を固めてからでないと、動けなくなりまつから」


「したい事とは?」


「王族会を解体ちゅるんです」


「えっ!?」


とっくに飽きて、外を眺めていたハクが、勢いよく振り返った。


「もっぺん言ってみろ!」


「でちゅから、王族会を解体するんでつ」


「はあっ!?」それ以上、言葉は続かなかった。


「長老会は、僕の話をご理解くださいまちたよ。

それで、毎日、長老様方とお話しちているんです」


「……どんな話なんだよ?」


「今は、証拠集めの最中でしゅので、何もお話ちできません」


「アオ……大丈夫なのか?

命の危険を伴う事ではないのか?」


「可能性は考えています。

でちゅから、ひとりでは動かず、長老会のご協力を得たんでつ」


「アオ、ひとりで背負わず、私にも相談して欲しいのだが……」


「いいえ、いずれ王と成る兄さんに、そんな危険が及ぶよぉなことは、相談できまてん」


「俺は、王になんて成る気はねぇ。

だから、俺には話せよ」


「ハク兄たんも、王に成ってくだちゃい。

僕は、兄さん達を補佐ちたいんですから。

他にも、いろいろ考えているんでつから、これひとつで命を落とちたりなんかしません」


キンとハクは、顔を見合わせた。

アオは、話しながらも読み終えたらしく、本を閉じると、扉に向かった。


「おい、出るなって言われただろ?」


「あ、そぉでちたね」戻って座る。


「コレ、読めよ」


「ありがとございまつ」


「それは、ハクが読むべき本ではないか」


「俺は王には――」くるっと窓の方を向いた。


その後頭部を、アオが叩いた。

しかも、その分厚い本で――


「ってぇ~~」くるっ「何すんだよっ!!」


「アオ、本は殴る物では――」


「ハク兄たん! 僕の夢を壊ちゃないで!!」


「え???」


唇を噛みしめたアオが、今にも零れそうな涙を堪えてハクを睨んでいた。


ハクと目が合うと、サッと背を向け、

「押ちちゅけて、しゅみません……

でも、王に成るべきは、兄しゃんでつ」


背を向けたまま、本を返した。


「アオ……」キンが、アオの肩に掌を当てた。


「はい。だいじょぶでつ……ちゅみまてん」


「謝らなくていい」

微かに震えている小さな背中を抱きしめた。



 キンは数日前、アオが王族会に対し、アオ派を即刻解散せねば、王位継承権を放棄すると言った事は聞いていた。


 私はそれを、アオが第三王子だから、

 王位を諦めているのだとばかり思っていた。

 だが、腐るどころか、未来を見、

 夢を(いだ)いていたのだな……


 まだ、こんなに幼いのに、

 なんて大きいのだろう……



――――――



「そんな事だっけかぁ?」


「忘れていたのか?

あの後、暫くは、おとなしく勉強していたではないか」


「アオに殴られた衝撃で飛んだかなっ」あはは……


「ハク……」その後にも殴られたのか?


ハクが真顔になる。

「俺、アオには借りがテンコ盛りだよな……」


「私も同じだ。だから、返さねばならぬ」


「そうだな」


アオの二人の兄は、もう一度、天を仰いだ。


「必ず、あの地を踏ませる」


「ああ、皆一緒に、飛んで帰るんだっ」




「しっかし、あの喋り方!

可愛いかったよな~♪

一生懸命『さしすせそ』にしようとしてんのに、半分以上『でちゅ』とかって♪

もっぺん聞きたいなぁ」


「声も愛らしかったな」


「だな~♪

ぎゅっとして、ぐりぐりワシャワシャしたくなるくれぇ可愛かったよ♪」


「だが、話す内容は――」


「とんでもなかったよなぁ……

マジ、敵わねぇって逃げ出したくなったよ。

『氷王子』にゃあ、大きく頷いたよぉ」


「気にしているのだから、触れないでやって欲しい」


「そうなのか?

あのアオが、気にしてるのか?」


「だから、あの話し方に変えたのだ」


「アレは、サクラが生まれる前からなのか?」


「一緒に修練していて気付かなかったのか?」


「いや~

だいたい怒らせて論破されてたからなぁ……

それに、修練の時は、あんまやわやわ話しゃしなかったからなぁ」


「ハク……」お前という奴は……


「アオって、ちゃんと『子供』したのかなぁ……

無邪気に笑ってる顔なんて、思い出せねぇよ」


「……そうだな」


 そうか……

 アオの封印を解く事が終着点ではない。

 それはまだ第一歩にしか過ぎないのだ。


一日も早く三界を平和にし、アオに心から笑って欲しいと、二人は決意を新たにした。





白「兄貴、あん時、曲空してたのかっ!?」


金「今頃 気付いたのか?」


白「アオとウェイミンを会わせる為とか

  言ってなかったか!?」


金「改めて練習はしていたが、知ったのは

  ずっと以前だ」


白「隠しまくりだ……

  きっとまだまだ隠してんだろな……」


金「ハク程ではない」


白「うっ……しゃあねぇだろっ」


金「私も同じだ」


白「そっか……」


金「目指す所は同じなのだから、

  それでいいとは思わないか?」


白「……だな」


金「あの二人は、必ずや平和を齎す。

  私達は、それを全力で支えるのだ」


白「だなっ!」


金「その為に、成さねばならぬ事が有る」


白「へ? その視線……怖ぇんだが……」


金「覚悟しておけ」


白「ゲッ……」



凜「あの~、この時のアオって……」


金「二人歳前だ。十八くらいではないだろうか」


凜「やっぱり神様だ……有り得なさ過ぎる……」

白「だよなっ! アオが変なんだよなっ!」


金「ハクは逆方向に変だと思うが……」


白「兄貴ぃ、ひっでぇなぁ」


凜「でも、反論できないでしょ」


白「うっ……」


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