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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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島の夜2-キンとサクラ②

 『おまけ』の『島の夜』は、5話の予定です。


 そうして五年、サクラは孤独な戦いを続けた。

キンは、アオとサクラの居場所を知ろうと、サクラの気を辿ろうともしたが、力を封じ、気を消しているサクラを見つける事は出来なかった。


 誰かがサクラの部屋の扉を開けようとすれば、キンが呼び戻し、サクラは竜宝を玩具にして、遊んでいた振りをした。


 軍幹部が視察に訪れた際には、他の兄弟が不在ならば、サクラは、アオの振りをして現れ、対応した。



――――――



 アオが洞窟に来る十日程前にも

 軍幹部は来ていたな……

 ちょうど、アオが住んでいた村が、

 襲われた頃ではないだろうか――



――――――



「また、アオですか?

ならば、ハザマの森に行きますか?」


「いえ、サクラ様に確かめたい事が御座いますので、本部まで、ご同行願いたいのですが」


「サクラに、何を?」


「竜宝兵器について、ですので、竜宝学の第一人者であらせられますサクラ様でなければ、お答え頂けないかと存じます」


 気持ちが悪い程の丁寧さだな。

 何か魂胆が有るのであろうな。


「そうですか。今は、出ておりますので、少々お待ちください」

(サクラ、戻れるか?)


(どしたの~?)


(軍幹部が、竜宝兵器について聞きたいそうだ)


(ふぅん。ちゃんとした方がいい?)


(今は、皆、出ている)


(解りました)



♯♯♯



 サクラは、十左の家から離れようとした時、不穏な気を察知した。


 闇の穴の前兆だ……何処だろ……

 ほんの少し離れてるみたいだけど……


 少し北だ!

 誰が近い? ……都近くにクロ兄!


(クロ兄!

東の国、国境沿い、南部の村に闇の穴!

急いで、お願いっ!)


(すぐ行く!)(サクラ、何かあったのか?)


(あ、キン兄、何でもない)曲空。



――――――



 戻りが遅かった理由を、

 サクラは、そう話していた。

 クロも行っていたし、間違いは無いのだろう。



 そして、サクラが軍に招かれ、数日、天界と人界を行来しているうちに、アオが旅に出てしまい、洞窟に現れたのだった。



 アオが洞窟に現れたあの日、

 サクラが本部に行っている事を知った上で、

 私達を集めたのは、やはり、

 それでもアオが現れるのかを

 試されていたのであろうな。


 まぁ、あのアオと鉢合わなかった事は、

 不幸中の幸いであったと言えるな。


 慌てて戻ったサクラは、

 心底 困り果てていたが――



――――――



(ホントに、クロ兄を付けるの?)


(ああ。サクラは、これ迄通り付いていればいい)


(いいの!?)


(勿論だ。だが、当面は、クロには見つからぬよう、気を付けるのだぞ)


(うん。それは、そうするけど……)


(アオか?)


(うん。アオ兄は、たぶん、俺の気に気づいてるから……)


(そうか。ならば、姿を見せればいい。

アオも、サクラと接すれば、安心するであろうからな)


(そぉかなぁ……俺なんかじゃ……)


(サクラは、アオなのであろう?

ならば、間違いなくアオは安堵する)


(うん……)サクラは目を閉じ、考え込んだ。


 そして――

(とりあえず、行きます。

アオ兄の反応次第ですよね)弱く微笑んだ。


(そうか。気を付けるのだぞ)


(はい。――あ、クロ兄が戻ります。では)曲空。



 洞窟に戻ったクロと話していると――


(爽蛇が来ちゃってるよ!!

キン兄、知ってたの!?)


(いや、知らぬが……)


(どぉしよ……)


(どうしたのだ? 許可の事か?)


(爽蛇は、俺の事をよく知ってるんだ。

ずっと一緒に――アオ兄と三人で、竜宝の研究してたから……)


(そうか……だが、勘の良い爽蛇殿の事だ。

察して、何も言わぬであろう。

サクラは、そのまま、振りを続けるのだ)


(うん。そぉする)


「なぁ、キン兄、アオは大丈夫なのか?」


「そうだな……これを、爽蛇殿に渡して欲しい」


「えっ!? 来てるのか!?」


「気を察知した。アオと接触している。

この増幅鏡には、アオが光と水を込めている。

だから、治癒、回復、浄化の効果が大きい。

旅の役に立つであろう。

水鏡と言えば、爽蛇殿ならば解るであろう」


「アオって、スゲーよな。

アオを護る、アオの力か……

そっちの桃は?」


破邪桃(ハジャトウ)、魔除けの鈴だな。

あの姫様だけは、人であるからな。

身に着けるよう、渡して欲しい」


「ん、解った。行ってくる!」


「そのまま、アオに付いていて欲しい」


「えっ!? いいのか!?」


「頼む」


「行ってくる!♪」


「先行しての偵察も頼――」みたいのだが……


既に、クロは飛んでいた。


(爽蛇、『蛟』って名乗っちゃったよ~

どぉするんだろ……)


(ふむ……アオの記憶が戻り始めれば、真っ先に思い出すのではないか?

ならば、そのままにしておくのも、ひとつの手ではないか?)


(そっか~、うん、そぉだね♪)


扉を叩く音がした。(ハクが来た)(ん)


「ハク、何だ?」


「なぁ、兄貴、サクラは何で軍に呼ばれてたんだ?」


「竜宝兵器の取扱説明書を書いていたそうだ」


「はぁ? あのサクラが?」


「サクラは専攻が竜宝学だ。

その道では、右に出る者は居ない」


「まさか、あのサクラが……」


「サクラは、ああ見えて賢い。

幼い頃のアオに、よく似ている」


「あ~、あのヨチヨチピヨピヨなのに、王族会がどうのって言い始めた頃のアオか?」


「そうだ。だから、心配は要らぬ」


「じゃ、強制送還じゃねぇんだな?」


「何だ? それは」


「いや、戦力外だからよぉ。

とうとうお迎えが来たのかと思っちまったんだ」


「その心配は無用だ。

もしも、そのような事になれば、私が全力で阻止する。

留保している、王太子を受けてでもな」


「もしも……か……

そうなったら、兄貴にだけ背負わすなんてしねぇ。

俺も受ける」


「ハク……」


「そんなに驚くなよ~

確かに、これまでずっと反発してたけどな。

ちょっと考えが変わったんだ」


「何が有ったのだ?」


「ん~、何が、つーか……

初降下で、アオが俺達皆を護ろうと身を呈したって知った時、その衝撃で変えられた――ってトコかなっ」あははっ


「そうか」


「でも、もしも(・・・)だぞっ!

もしも(・・・)だからなっ!」


「ああ、もしも(・・・)なのだな」フフッ



♯♯♯



 アオとサクラは、私達を、確かに変えていた。

 単なる血の繋がりを越え、

 心の繋がった『兄弟』へと変えてくれていた。


 これからきっと、あの二人は変わる。

 二人は、変わっても尚、

 遥かな高みへと飛び続ける筈だ。


 そして、この戦に終止符を打つ。



――――――



 あの時、私は、そう確信したのだったな。





凜「その後、軍幹部は来てるんですか?」


金「来てはいないが、そろそろ来るだろうな」


凜「アオが大陸をウロウロしてても

  いいんですか?」


金「今度は、そちらに当たっている

  とでも言えばいいだろう」


凜「どうしてそんなにアオに固執してるん

  でしょうねぇ」


金「さぁな。サクラが調べようともせぬから

  大した事では無いのだろう」


凜「旧王族会の逆恨みとか?」


金「それは無い。アオは事後処理も

  時間を掛けて遺恨無きよう、

  抜かり無く取り計らっていた」


凜「今は、その方々は?」


金「賞罰にも依るが、普通に貴族として

  穏やかに暮らしている」


凜「アオって……凄過ぎ……」


金「そうだな」フッ……


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