大乱後5-姫も悩む
チラチラと出てくる『天性』『属性』。
次章で説明します。たぶん……
「じゃあ、クロ兄、ソレ持って戻ってね~♪
船のコトよろしくね~♪」
サクラは治療の為に神殿へと戻った。
クロが船に曲空すると、姫とリリスが左舷の垣立にもたれて話していた。
クロは二人に見つからないよう、船室の屋根の上で人姿になり、伏せた。
大事な話なら部屋でするよな。
ここで終わるまで待つか……
「リリス、これから如何致すのじゃ?」
「母の看病をしながら待ちます。
ついて行く事は出来ませんから……
姫様は、ずっと一緒に旅をするのでしょう?」
「それなんじゃが……迷ぅておる」
「どうして?」
「くノ一達はハク殿から、ハザマの森より先は無理じゃと言われたそぅじゃ。
ワラワも同じじゃからのぅ……」
姫……そんな事を……
「ハク殿は、くノ一達に、こちらに残って、やって欲しい事がある、とも言ぅたそうじゃ。
じゃから、くノ一達は張り切っておる。
ワラワも一国の姫として、その事を成すのも良いかとも思ぅとるのじゃ」
「姫様らしくありませんよ!」
「リリス……」
「私は、ただの踊り子だけど、姫様は剣の使い手ではありませんか!
ついて行けるのに残るだなんて!
待つしかない私の――あっ……
あの……すみません……
でも……きっと皆さん、姫様は、ずっと一緒に旅をすると思っている筈です。
それに、きっと……姫様の存在が、クロさんを強くすると思うんです」
「何故じゃ?」
「ただの女のカンです」
でも、そうですよね? クロさん?
リリスは、屋根から ほんの少しだけヒラヒラしている着物の端を横目で見ていた。
「姫様、弱気になんて、ならないで下さいね?」
「リリス……おヌシ、やはり……」
「私は大丈夫ですからっ!
そりゃあ、少しは寂しいけど……
でも、いつでも お話できるから大丈夫よ♪
だから、私の事はいいの!
……姫様、皆さんと一緒に、一日も早く、この世界を平和に導いてください」
深く頭を下げた。
「そぅじゃな……
さすれば、フジも自由になるからの♪」
リリスが頬を染める。
「私っ、荷造りしないと!」
足早に船室へと向かった。
姫は、その後ろ姿を見送り、視線を波に落とした。
透き通った青い煌めきは、今日も変わらず美しかった。
このまま変わらず、ワラワも共に……
その為には……
やはり、もっと強くならねばのぅ……
ワラワが強くなれば、朱鳳も強ぅなると
アカ殿が言ぅておったのぅ……
剣の事はアオに聞くのが良いかの。
そぅいえば……皆、何処に居るのじゃ?
昨夜より、姿が見えぬよぅじゃが……
不意に後ろから抱きしめられた。
「思い詰めるなよ……」
「クロ……」
「大丈夫だから……オレが護るから、な?」
「ワラワは、強くなりたいのじゃ。
共に戦いたいのじゃ……ずっと……共に……」
「ずっと一緒だ」
姫が腕の中でクルッと向き合い、見上げた。
「ワラワを強ぅしてくれるのか?」
「ああ」
姫の背の朱鳳が、光を帯びる。
もしかして……これか?
オレの天性って……
姫を強く出来るのか?
でも、どうすれば……
(護竜杖、教えてくれないか?)
【想いのままに。流れにお委せください】
(流れって?)
返事は無い。
流れ……なぁ……
光を帯びた両手で、姫をしっかり抱く。
華奢だよな……折れてしまいそうに……
先程、波を見詰めていた姫を見ていると、儚く消えてしまいそうに思えた。
その、胸が締め付けられるような苦しさと同じ感情が、再び湧き起こった。
不安? いや……恐いのか?
これは……一体……
もしも、いなくなったら……
嫌だ! どこにも行くな!
姫の眠れる力よ! 目を覚ませ!
オレの竜の力よ! 姫に宿れ!
ずっと共に戦う為に!!
天界から船の後方に戻った白衣の三人は、光に包まれ、口づけている二人を見つけ、慌てて身を隠した。
そして、アオとサクラは、ハクを部屋に引きずって行った。
♯♯♯
「とうとうだなっ♪」
部屋に入るなり、ハクが口を開いた。
「もぉ~ 邪魔しちゃダメだよ~」
「しねぇよ」あははっ「つか、出来ねぇだろ」
「もぉムリだね~」きゃはっ♪
「でも……光ってたから、術か何かかも――」
「うん♪ 天性だよ」にこにこ♪
「ああしなきゃ発動しねぇのかよ!?」
「そんなことないけど~
いいんじゃない? あのままでも♪」
ハクは爆笑、アオは苦笑。
「でも、これで、お前らだけだぞ」
「えっ?」「なにがぁ?」
「彼女いねぇの」ぷっ♪
「別に……」「ねぇ」
「お前らは、二人でイチャついてろ♪」あはは♪
クロが入って来た。
「あ、戻って来てたのか」
「うん♪ クロ兄、船もらえた?」
「ああ、好きにせよ、だって」
「船、何するんだ?」
「天界から人を運ぶのに改造して貰うんだ」
「ネイカさん達にか?」
「そう。
人界の材料じゃなきゃダメなんだと」
「よく、んな事 気付けたな」
「偶然、魔界用の船 作ってるの、見つけたんだ。サクラが、な」
「サクラ、抜け出してたのか?」
「翁亀様に届け物 頼まれたんだよぉ」
「クロは、何しに行ってたんだ?」
「あ! 団子! 屋根の上だ!」
慌てて持って来た。
「無事 航海が終わったから、お祝いだってさ」
「んじゃ、皆 揃ったら食おう♪」
「みんな呼ぶ~♪」
(ありがとな、サクラ。誤魔化せたよ)
(いいってば~♪ 団子 食べれるし~♪)
「クロ兄、キン兄が迎えに来て欲しいって~」
「んじゃ、行ってくる」
クロが後方に出ると、右舷でフジとリリスが話していた。
この船でも、いろいろあったよな……
曲空する為に、竜体になろうとした時、
(クロ兄、試しに人のままやってみて♪)
そっか。強化されてんだよな。
人姿のまま曲空してみた。
出来た……な。
キンとアカを連れ、アオの部屋に人姿のまま曲空した。
「うわっ!」
ハクが驚き、サクラとアオは微笑んでいた。
「さっきのは、クロを強化してたのか?♪」
「さっきの?」
アオとサクラが、ハクの口を塞ぎ、
「クロ、厨に行かなくていいのか?」
「お祝いでしょっ」
「そうだなっ♪
久しぶりに腕を振るってやるぞ♪」
弾んで行った。
「ふぅ~~っ……
ハク兄! 邪魔しちゃダメって言ったでしょ」
「悪ぃ悪ぃ」あはははっ♪
「また逆鱗なでなでするよっ」
「いっ!? いや、もう邪魔しないからっ」
「何だ? それは?」キンが怪訝な顔をする。
「クロ兄の邪魔したら赦さな~い」
ハクが逃げる 。サクラが追いかける。
(アオ、説明 頼む)
ドタバタしている中、アオは、キンとアカに一部始終 話した。
「ふむ。それはハクが悪いな。
サクラ、存分にやっていいぞ」笑う。
♯♯♯
「あっ、陸地が見えましたね。
リリスの故郷は、あちらですね?」
「ええ……」
「リリス、薬を届けに行きますから」
「はい……フジ……」離れたくない……でも……
(私も同じです。
このままずっと腕の中に居て頂きたいです)
(フジ……)
これにて、航海編は終わりです。
次回からは、また『おまけ』を挟みます。
黒「料理、出来たぞ♪」
青「まだ、治療中の方が寝ているんだからね。
皆、静かに甲板に出てね」
桜(フジ兄、邪魔してゴメンよぉ。
みんな甲板に出ちゃうから、離れてね)
藤(え? あっ、はい)慌ててリリスと話す。
白「出ていいのか?」窓の外、チラ見。
金「ふむ。いいだろう」神眼発動中。
赤「ふむ。そうだな」同じく。




