表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
124/429

大乱後2-千里眼

 船は再び進み始めましたが、また天界です。


 少し遡り、天界では――


 天竜王城の扉は全て、王を護る為に、術に依って強化されている竜仕様の頑丈な物である。

それをも叩き壊しそうな王妃に、大臣と執事長が、どうにか声をかけ、かなり時間を要したが、なんとか宥め、重鎮達が集まる会議室にお入り頂いた。


アカがコハクに渡していたのは、携行用の千里眼で、会議室にも真新しい千里眼が置いてあった。


「こちらは、アカ様が再現されました、竜宝・千里眼で御座います。

先程、こちらにコハク王様より、謁見の間の状況が送られて参りました」


「なぜ、私に知らせてくださらなかったの?」


「勿論、お探し致しましたが……

どちらにいらっしゃられたのでしょう?」


ミドリは興奮して忘れていたが、こっそり城を抜け出し、実家の様子を見に行っていた事を思い出した。

「あ……そんな事より!

どのような状況でしたの?」


大臣は、コハク王が謁見の間に入室してから闇黒竜の姿が露になった所までを話した。


「そこで、コハク王様より、『入室を禁ず! 王命である!』との 御言葉があり、映像が途絶えました」


そこに、控えの間から、謁見の間の様子を伺いに行っていた衛兵が報告に来た。

「謁見の間には何方もいらっしゃいません!」



「確かか?」

王妃が何も言わないので、大臣が確かめた。


「はい!

王子様方の笏杖立ての背面の壁が破壊されており、中が見えました!

王子様方の笏杖は、控えの間に散乱しており、守護珠が玉座の辺りにも御座いましたので、只今、笏杖の守護珠と、いずれが本物かを確かめております!」


「うむ。ご苦労であった」


衛兵が一礼して下がる。

入れ替わりに伝令兵が入室した。


「只今、魔物軍が消滅致しました!」


会議室が安堵に包まれる。


「シロ前王様より、『操られていた方々を彩奏の大神殿に収容しておるので、至急、支援して頂きたい』との事です!」


大臣が執事長に頷いた。

執事長が一礼し駆けて行った。


「それで……コハク王様は?

それに、本物のギン王様は、どちらに?」


ミドリの問いかけに、伝令兵が答えた。


「両王陛下は、彩奏の大神殿にお見えになられ、その後、前線地帯に向かわれました!」


「御無事ですのね……」


「王妃様、城内の指揮をお願い致します」


「大臣に任せる」ふらりと退室しようとする。


「あの……どちらへ?」


「薔薇園に……」振り返りもせず出て行った。


 悪い御方では無いのだが……やれやれ……


どうしても亡きスミレ様と比較してしまう大臣であった。



♯♯♯♯♯♯



 王子達を見送った天界の門では、親子の和やかな話の後、

「で、親父、どうやって終わらせたんだ?」


「ああ、サクラが最終兵器をくれたからの。

一発で終わってしもぅたわぃ」


「サクラが?

そういえば アイツ……気が変化したが、コハク、宣詞でもしたのか?」


「ギンには、やっぱりバレるか……」肩を竦める。


「サクラがの、内緒にして欲しいとは言ぅとったのじゃがなぁ。

バレては仕方ないのぅ……

力を解放する為に、と願い出てのぅ」


「そうか。まぁ、問題無いさ。

サクラは一番 大人だからな」


「知っとったのか?」


「いや、俺も最近 気付いたんだ。

親父がアオの守護珠をすり替えた日、アオの気を探そうとしたら、俺の気を極大に高める必要があってな、それで偶然、サクラの内に秘めている気に触れたんだ」


「ワシは、すっかり騙されてしもぅたわぃ」

まだ根に持っているようだ。


「サクラが騙そうとしていたのは魔王だからな。

身内くらい騙せないとな」


「アオは、本当に狙われておるのか?」


「おそらくな。

あの強固な封印が解けた事は、既に魔王も知っている筈だ。

だから今、サクラは必死でアオを護ろうとしている……

そんな気がするんだ」


「では、正式な成人の儀は、早急に やるのか?」


「もう、サクラの力は解放されたから、急ぐ必要は無いが……

俺としては、諸々の儀式は纏めたいんだ。

王子達を何度も来させる事は出来ぬ。

大きな事を追っているのだからな。

立太子や婚約関連とかと一緒に、で、どうだろう?」


「ミドリ殿が、また大騒ぎしそぅじゃな」笑う。


「あ……忘れてた……」王達が顔を見合わす。


「コハク、夕方には何が再生出来るんだ?」


「私が謁見の間に入ってから、偽者が正体を露にした所までの映像だ。

アカが携行用の千里眼をくれてな。

それに、短時間なら記録が出来るんだ」


王笏に付けていた小さな千里眼をギンに渡す。


「アカは、そんな事が出来るようになっているのか……」しげしげ

「じゃ、城に戻るのは夕方だな。

それまで――」


「暇なら手伝ぅてくれるかの?

操られておった者達を、わんさか収容しておるからの」



♯♯♯



 彩奏の大神殿に入ると、モモの指揮で医師や兵士達がキビキビと動いていた。


「母上……流石だな……」

「ここは、俺達 必要無さそうだぞ」

「そうだな……前線を見に行くか……」


出ようとした時、ムラサキが妖狐達を連れて来た。


「天竜王様、この度は、大勢の魔人をお救い頂き、ありがとうございます。

私は妖狐王国の第三王女・桜華と申します」

美しい所作で礼をした。


「すぐにでも、皆、魔界に帰したいのですが、何分(なにぶん)、この人数でございます。

方舟が出来る迄――三日の猶予を頂けませんでしょうか?」


「慌てずとも、しっかり回復出来る迄、こちらでお預かり致します」


桜華の後ろにコギが現れ、跪き、控えた。

ギンが、どうぞと促す。


「恐れ入ります。

人界での作業は完了致しましたので、医師団を連れて参りました」


桜華は頷き、

「それでは、私も治療に当たらせて頂きます」

また丁寧に礼をし、シロの案内でモモの元に向かった。



♯♯♯



 ギンとコハクが前線であった場所に行くと、兵士達が運んでいるのは魔人だけではなく、天人も人も居た。


「天人や人は、どこに収容しているのだ?」

コハクが将軍に尋ねた。


「天人は軍医の診断後、病院か、直接 自宅に運んでおります。

人は状態により、各神殿に分けております」


携行用千里眼から着信音が鳴った。


『コハク王様、フジです』


「どうした? フジ」


『あっ、父上がお持ちでしたか。

こちらでは、聖輝水で大半の方が回復しています。

長老の山に沢山ありますので、お使いください』


「そうか。そちらも襲撃されていたのだな?

もう大丈夫なのか?」


『はい。

魔人は妖狐の方々が治療してくださいましたので、ハク兄様達が人の治療をしております。

回復された人々を竜が運んでいるのですよ』


 妖狐殿の『人界での作業』とは、

 そういう事か……


「そうか……良かったな……

人と仲良くなれる日も近いな……」


『はい♪』


「情報、感謝する。そちらも頑張れよ」


『はい!』


千里眼をコハクに返す。


「それ、便利だな♪」「だろ♪」


言ってから、二人は将軍の視線に気付き、表情を改めた。


「――と、いう事だ。

長老の山から聖輝水を運び、治療に使うように」


「はっ!」

厳しい顔で敬礼しているが、笑いを堪えているのは明らかである。


「他言無用だ」ギンが睨んだ。


が、コハクが笑い出し、ギンも笑ってしまった。


ひとしきり笑って、

「誰にも言うなよ~」揃って言った。


「勿論です!

只今、心より、素晴らしい王に仕える事が出来た幸せを感じました!」

将軍は深く礼をし、踵を返した。





 船にコギが現れた。


儀「ハク様、アオ様。

  若様と姫様をお借りしても

  よろしいでしょうか?」


青「魔人が圧倒的に多いですからね。

  こちらは、随分と落ち着きましたので

  大丈夫ですよ」


儀「ありがとうございます。

  それでは、若様、姫様――」


紫&珊「その呼び名は、おやめください!」


儀「では、如何に――ああ、それでは、

  紫苑様、珊瑚様――」


紫&珊「『様』も要りませんのでっ!」


儀「それは流石に……」


青「俺も、そうだから、よく解るけど、

  紫苑殿、珊瑚殿、そこに生まれてしまった

  んだから仕方ないよ。

  コギ殿も困っているから、ね?」


紫&珊「では、そこまでは……」ため息。


儀「何故、不服そうなのでございますか?」


青「うん、気持ちは解るよ」紫苑の肩をぽんぽん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ