天地乱7-終結
そろそろ、プロローグの章に相関図とか
地図とか人物紹介とか纏めた方がいいのかな……
でも、ズレるらしいから、工夫しないと……
う~ん……
「ギン王、一体 何があったというのだ!」
前線から急ぎ城に戻ったコハクは、玉座のギンに詰め寄った。
「竜宝兵器を全域で使えなどと!
国を滅ぼす気か!!」
コハクはギンに迫りながら、その気を探る。
「戦果は上がらず、王子達も来ぬではないか。
どうして勝利など得られよう……」
巧妙にギンの気を纏ってはいるが……
「コハク王よ、こんな所に居ていいのか?
ああ、そうか……
前線の指揮、交代して欲しいのだな?
俺が直ぐに終わらせてやろう」フッ
コハクは疑っていることを覚られぬよう、歩調も表情も変えず近付き続けており、ちょうど飛びかかれる間合いになっていた。
「その必要は無い!
お前の王命を破棄しに来ただけだ!!」
コハクは王笏を掲げた。
「コハク=エレ=シャルディドラグーナと天竜王家長老会の総意に依り、一連のギン王よりの命を無効とする!!」
「させぬ!」ギンが立ち上がる。
コハクは王笏を掲げたまま身構えた。
ギンが王笏を振り翳し、何事か唱えようと口を開いた時――
王笏の守護珠から光が迸り、持っているギンを包んだ。
勿論その光は、本物のギンが放ったもので、光は偽りの姿を剥ぎ取り、消し去った。
闇黒竜が、その姿を露にした。
ギンと王子達が一斉に踏み込み、間合いを詰めたので、闇黒竜は己の背後に闇の穴を穿とうとした。
「させないよ~」
闇黒竜の背後には、全王子の守護珠を抱えたサクラが、悪戯っぽく微笑んでいた。
全ての守護珠から光が放たれ、闇黒竜は目を押え、膝を突いた。
一番近くにいたコハクが捕り押さえようとした、その時――
闇黒竜は、突然 悶絶躄地し、断末魔の絶叫を残して、かき消えた。
「お、俺じゃないよぉ」サクラが たじろぐ。
「解っている。魔王に抹殺されたんだ」
ギンがサクラに寄り、ぽふっとして頭を撫でた。
「ギン……それと……」コハクが王子達を見回す。
「非常事態だ。許してくれ」
「ああ。ただ、説明してくれ」
「勿論だ。
しかし、人界任務中の王子が城に居るのは掟に反する。
ちょうど、偽者が厳重な人払いをしているようだから、それを利用させてもらう。
その上で――」
王の顔で皆を見回した後、悪戯っぽい目をしてニヤッと笑い、
「掟もヘッタクレも無い♪
今から、ただの親子と伯父で頼む」
「それは嬉しいな」コハクが笑う。
ギンはコハクに全てを話した。
アオが行方不明となり、力も記憶も封印されていた事も、全て――
息子達は、バレまくりだ……と、観念して補足した。
「で、親父が、あんな所に穴を開けたんだ」
玉座の後ろにある、王子達の笏杖立てを指す。
兄弟達が、笏杖立ての後ろの壁を外し、控えの間の明かりを灯すと、偽物の守護珠を着けた笏杖が、控えの間に転がっていた。
「そんな所に穴を……」コハクはハッとした。
「だからサクラが、そこに現れたのか!」
「うん♪ 穴から入った~♪」ホントは曲空♪
そして、コハクはアオに、
「本当に、もう大丈夫なのか?」
本当に、ただの伯父として尋ねた。
「はい。ここに、こうして居りますから」
心からの安堵と喜びを以て答えた。
「良かったな……本当に良かった……」
甥っ子達を見回して言った。
「はい!♪」兄弟達が一斉に応える。
「ところで、クロは人を娶るのか?」
「なんで父上までっ!!」焦るクロ。
「止めはせんぞ」
「止めてもいいですっ!! 無いんでっ!!」
「そうなのか? 残念だな。
再び人と仲良くなるための懸け橋となるか、と思ったのだが……」
「結婚は、ともかく……姫とは、竜と人との懸け橋になろうとは約束しましたよ」
「それなら、それでいい。
クロが思うように、やってみろ。
ま、本当に人界の殿様になってもいいんだからな。
で、フジの方は、どうなんだ?」
「私は、彼女との結婚を考えています。
ただ……まだ、竜だとは言っておりませんので……」
「そうか。だが、フジが選んだ女性なら真心が通じる筈だ。
悔い無きよう、フジの言葉で話してみろ」
「はい。ありがとうございます」
「キンとハクは、もう留保する理由が無いだろ。
進めるか?」
「はい。宜しくお願いします」
「んじゃ、俺も。一緒にお願いします。
でも、あの派手派手な市中引回しだけは勘弁してくださいよ~」
「……それは、ミドリに言ってくれ」
「……それは、もっと嫌かも……」
「だいたいなぁ――」
ギンがハクの肩に手を回し、皆に背を向ける。
「アイツが、俺の言う事なんて聞くと思うか?
だからな――」
ゴニョゴニョ話す濃淡の銀色の背中を眺めながら、皆がクスクス笑っていると――
二人が振り返り、ニヤリ。
「サクラ、説得 頼む♪」ハクが掌を合わせた。
「なんで!? 俺がっ!?」
「俺達が やったら、皆 やらなきゃなんねぇだろ♪
だから、なっ♪」
「それなら、フジ兄の方がっ――むぐっ!」
クロに口を塞がれた。
「私も、ご遠慮いたします」にっこり
「ついでに今回の事も、なっ。
サクラの話なら聞くだろうから、許可は出す」
「そんなぁ~ 父上まで~」
コハクが吹き出した。
「今回の事は、手を打ってある。
アカ、早速 役に立ったよ。ありがとな」
「何の事だ?」
不思議そうなギンに、コハクは微笑み、
「どのくらい待てば、再生できるんだ?」
「……半日。次は、もっと改良する」
「何かはわからんが、楽しみだ♪
で、アカは……まだ、好きにさせろと顔に書いてるな」笑う。
アカが紅い頬を更に染めて、そっぽを向き、皆の楽しげな笑い声が響いた。
「結婚に関しては、王子だとか何だとか考えなくていい。
お前らには生きるに当たって、何かと窮屈な思いをさせるが、それだけは自由にしていいからな」
息子達が嬉しそうに頷く。
「ギン、これから嫁が来て、孫ができる。
賑やかになるのが楽しみだな」
「そうだな。楽しみだ」目を細める。
「父上~
シロ爺みたいな顔しないでくださいよぉ」
「親父みたいだったか?」
一斉に頷く。
そして、また明るい笑いが起こる。
そこに騒々しい足音が迫って来た。
皆、気を消し、臨戦態勢をとる。
正面扉が――ドンバンドンッ!!――壊れそうだ。
『あなたっ!! ギン王様っ!!!
こちらにいらっしゃるのでしょう!?!
ここをお開けくださいませっ!!!!!
どうしてアオが死罪などとっ!!!!!
一体どういう事なのかっ、
説明して下さいませっっっ!!!!!!』
ドンドンッ!! バンバンバンッ!!!
「うわわ~」
「スゲーな……」
「どうする?」
「逃げるしかないでしょう?」
「無いな……」
「サクラ、行けよ」
「ハク兄が呼んじゃったんでしょっ」
「父上だよっ」
兄弟達は、ひそひそしながら後退る。
「マズイな……お前ら! 逃げろ!」
息子達を逃がすのかと思いきや、ギンは先に立って飛翔台に向かった。
コハクまで一緒に 、皆で笑いながら天界の門まで逃げた。
「では、元気でな」
「はいっ!」
若い竜達は、父と伯父に見送られ、人界へと飛び立った。
楽しそうに じゃれ合いながら、陽の光を受け、煌めきながら小さくなっていく。
雲の向こうに見えなくなっても、二人は下を見ていた。
が、背後に気配を感じ――
兄弟が恐る恐る振り返ると、父が居た。
「親父かよ~」
「気を消さないでくれよ~」
ミドリでなくて良かった……
「親父が、ここに来たって事は――」
「あんなもん、赤子の手よりも容易く捻れたわぃ」ニヤッ
「そんな事より――
皆で楽しそうに何しとったんじゃ?
何で、あの子らはワシに顔も見せずに行ってしもぅたんじゃ?」
拗ねた振りをしているが、目は笑っている。
今度は、こっちで、久しぶりの親子の会話が始まった。
船の上空も静かになった。
儀「若様、姫様、魔人と天人は社に運びます。
人を船にお願い致します」
紫「そうですね。人だけは別にせねば、
姿を見て恐れるでしょうからね」
儀「では、先ずは、こちらをお願い致します。
その後は、社の方にと三の姫様が
仰っておりました」
珊「行ってもよろしいのですか?」
儀「今回は特別、と……
これも修行の一環と存じます。
では、また後程、お迎えに上がりますので」
二「はい! よろしくお願い致します!」




