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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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天地乱5-解放

 竜宝が沢山ですが、気にしないでください。

大きな術ほど、補助竜宝が沢山必要らしいです。


 サクラはアオの部屋に曲空した。

そこに有った壺は全て封がされており、姫は壁にもたれて眠っていた。


(どしたの? アオ兄?)


ついさっき普通に話していたアオが難しい顔をしていた。


(サクラ……

ヒスイが返事してくれないんだけど……

本当に俺の力を解放してもいいのかい?)


(うん。今は返事できないよ。

ヒスイは今、神界の深層に行ってるんだ。

これから神に成るために。

でも、術の時には来てくれるからね)


(神に……成る……?)


(うん。神竜は最初から神なんじゃなくて、条件が整って初めて神に成る事が出来るんだよ。

やっとヒスイも条件が整ったんだ)


(条件?)


(ヒスイにとって最後の条件は、俺が成人する事だったんだ)


(サクラ……まさか……)


(うん♪ 宣詞 受けたよ♪

また、これも最年少記録更新かなっ)ニコッ♪


(サクラ……俺の為に……)


(ううん。俺、早く成人したかったんだ♪

だから、もう大丈夫。

アオ兄の封印を解いても、ちゃんと護れるからね)ニコニコ♪


(サクラの封印は?)


(一部 鍵が必要なんだけど、ほとんど解いて貰ったよ)


(いろいろ すまない……ありがとう、サクラ)


(言いっこナシ♪

アオ兄は俺で、俺はアオ兄だからっ♪)


(それは、どういう――)

(サクラ、術を行う場所を探して欲しい)


(は~い♪ キン兄、ちょっと待ってね)

(クロ兄、壺 片付けてよ~)


(あ……忘れてたっ)


 クロが慌てて入って来て、壺をひと纏めにし、姫を掛布ごと布団に移し、頭を撫でると、大壺を抱えて出て行った。



(アオ兄、術する場所 探そ♪)アオの両手を取る。


サクラが何かの術を唱えた。


(最適な場所へ……せ~のっ!)


浮遊感……そして着地。


「寒っ!!」

サクラが両腕を擦りながら、ぴょんぴょん跳ねる。


二人は、だだっ広い荒野に居た。


「ここなら、誰にも迷惑かけそうにないね」

アオが、掌に光を集め、上に放った。

夜明け前の冷えきった空気が暖かみを帯びる。



「誰にも見られず、少々破壊しても問題無さそうな、良い場所だな」


キンの声に二人が振り返ると、五色の竜が人姿になった。


「始めよう」




 モモとウェイミン、そして翁亀、リ姉弟が加わり、解読した古代の術は、

神竜に依って成された術を解く為に、神竜を召喚し、更に、召喚した神竜の力を増幅する強力なものであった。

それだけの強力な術ともなれば、唱術者にも、それ相応の力が求められ、当然、命懸けの危険も伴う。

しかも、その術を人界で行うならば、人姿で実行しなければならない、という条件付きであった。


 竜にとっての人姿は、消耗を抑え、俊敏に動ける反面、力が半減してしまう状態である。

天竜王子達は尋常でなく鍛えており、人界に慣れているとはいえ、竜体の七割の力が出せるかどうか、という状態であった。

その為、天界で行うより遥かに危険が増す――


 な~んてこと解ってるけど!


(絶っっっ対! 成功させるからねっ!

大船に乗っちゃってね♪ アオ兄♪

術を受け入れやすくしなきゃだから、気を鎮めててねっ)


サクラはアカから竜宝が入った袋を受け取り、中を見た。

竜宝の紐や(ふさ)などの装飾品が、真新しい物に付け替えられていた。


 ワカナさんが持って来てたの、コレなんだ~

(アカ兄、ありがと♪)(うむ……)


サクラは、竜宝短剣・槐陽(カイヨウ)を自分の帯に、対となる橡陰(ショウイン)をアオの帯に差した。

(これが、アオ兄と俺が『ひとつ』なんだって示してくれるんだよ)


そして、兄達の手首に、招召(ショウショウ)鐘鈴(ショウレイ)と、珪化羅黒と芳輝石で出来た楽器を模した装飾・招召の奏器(ソウキ)を通した組紐を結んでいった。



 ハク、クロ、フジが、聖輝水を気に乗せて放ち、地面を浄化する。

三人は向かい合い、三方に後退しながら、浄化した領域を拡げていった。



 サクラがキンとアカに光を当てた。

二人は離れて向かい合い、キンが神以鏡(カムイキョウ)・月を、アカが神以鏡・陽を両手で掲げた。

鏡が各々の鱗色の光を帯び、その光が強まっていった。

鏡から溢れ出た光は、やがて互いに向けて伸びる線状に収まった。


 二人は、鏡面を地に向けた。

浄化され、光を帯びた地面に、鏡から放たれる光で魔法円を描いていく。


大きな二重の同心円。

その内円に接する正五角形。

その頂点を対角線で結び、星形を成す。


各頂点と外円の間に、そこに立つ者の個紋。

星形の内側に出来た五角形の中に、向かい合わせで、アオとサクラの個紋を描く。


そして、解放の鍵となる古代文字を配していく。


最後に、魔法円の中央に神竜を表す古代文字を描いた。

サクラが、中央の古代文字に至冀(シキ)の璧を重ね、瑠璃色の芳小竜(ホウコリュウ)を乗せた。


「アオ兄を助けてね」なでなで


芳小竜が、きゅる♪ と鳴いて片手を挙げた。




 キンは弟達に頷いた。


 天竜王子達は各々の個紋の上に立ち、守護珠を掲げた。


サクラが解放の術を唱え始める。

澄んだ声で澱み無く。

まるで、幼い頃から知っている歌を歌っているかのように――


鐘鈴の音が、サクラの声に寄り添う。

奏器から美しく厳かな音色が流れる。


七人の守護珠が光を帯びる。


守護珠の内にも個紋が浮かび上がり、その輝きが増していく。



♯♯♯



 長い長い解放の術を唱え終わると、サクラは白い光に包まれた。

どこまでも続く、真っ白で、あたたかな光の世界をサクラは浮遊していた。


【サクラ……】


淡くて優しい緑の神竜がサクラに近付く。


(あ……ヒスイ♪ 来てくれて ありがと♪)


【サクラ……鍵は合っていたよ】


(うん。ちゃんと当たりだったね♪)


【スミレが神になるまで……

やはり、猶予は無かったね……】


(そうだね……もう少し待ってて欲しかったね。

でも、こうなったら頑張るしかないよね)


【そうだね。私も頑張るよ】


(一緒に、ねっ♪)


【ありがとう、サクラ。

では……アオを解放しよう】


(ありがと♪ ヒスイ大好きっ♪)


【私もサクラが大好きだよ】


(うん♪)


ヒスイが右手を天に伸ばし、術を唱える。


【呼神の力に依り、アオの力を解放する!】


サクラの周りの白い光が飛び散った。


【サクラ……また会おうね……】


(うん♪ ヒスイ、ありがと♪ またねっ)



♯♯♯



 同じ時、アオも、あたたかい白い光の中を漂っていた。


その光が弾け飛び――


【アオ……】


朦朧とした意識の中に声が響いた。


 この声……知っている……


 そうだ……間違いない。この声は――


(ヒスイ……)


声の主がヒスイだと判った瞬間、霞がかった意識が鮮明になり、

記憶が、竜の力が、アオの内に溢れ出し、身体の隅々まで満ち渡っていった。


そして、ヒスイの想いがアオに伝わった。

人界の任に赴く途中で、囮となって兄弟から離れ、地に降りた時、何があったのかも――


(ヒスイ……)


【許して……アオ……すまない……】


(俺を護るためだったんですから、謝らないでください)


【……ありがとう】


(俺の方こそ……ありがとうございました)


ヒスイは、神竜にしか見えない、アオの溝尾に未だ鮮明に残る傷に、両手を重ねて添え、

【禍々しき者よ……

もしも、この者に(わざわい)成すならば、神を敵にする事と心せよ!

光輝神雷(コウキジンライ)!!】

強い光を注いだ。


【さあ、アオ……飛ぶがいい!】



♯♯♯



 アオとサクラの心が白い光の中を浮遊していた時、


それは、実際には、ほんの一瞬だったが――


 周りを囲む兄弟には、アオの頭上に光輪が、サクラの背に翼が、そして、中央には翡翠色の神竜が見えていた。


星形の内側が光で満ち、アオとサクラを包み込み、鍵となる古代文字が宙に浮き上がり、その光を囲んだ後、弾け飛んだ時――


光の中から、瑠璃色に輝く竜が天に昇った。


兄弟達は、次々と竜体になり、アオを追った。


サクラは疲れきって、人姿すらも保てなくなったのか、竜体に戻り、竜宝を抱いて眠っていた。


ハクはサクラを抱き上げ、

「頑張ったな……ゆっくり休めよ」

起こさないよう、そっと回復の光を当てた。


そして、サクラを抱えたまま、白銀の竜(ハク)も、瑠璃の竜(アオ)を追って、明けの空に昇った。





凜「あ! ヒスイ、待って!」


翡【え? あ……】


凜「大丈夫? 疲れ? ぼんやりして~」


翡【アオの解放……終わったの?

  サクラに声掛けて……記憶が……】


凜「あれ? 神憑ってると思ったら~」


翡【うん……

  あの術は、神竜でも一時的に神化するんだ。

  だから……私であって私ではないよ】


凜「じゃあ『アオ、飛ぶがいい!』は?」


翡【えっ…………】真っ赤。


凜「ヒスイらしくないと思ったわ~

  おどおどしてなくて神々しかったもん」


翡【あの……それ……酷くない?】


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