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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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天地乱4-青い卵

 前回まで:サクラは成人しました。


♯♯ 天界 ♯♯


 リ姉弟とアカが竜宝を再現している工作室に、サクラは曲空した。


「アカ兄、何に時短すればいいの?」


「竜宝の卵だ」

青い石で出来た卵をサクラの掌に乗せた。

「大至急、孵化頼む」


「ふ~ん……」顔の前に掲げて、覗き込む。

「アオ兄のトコに持ってくよ?」


「ああ」


(アオ兄、手 ひっぱって~♪)

「いってきま~す♪」手を振って消えた。



「そちらは順調ですか?」ネイカに尋ねる。


「あっ、はい。

あの、最後に術が必要らしいのですが……分かりますか?」

紙を差し出す。


「ふむ……形は出来上がっているのですか?」


「はい。製作手順通り全て完了しました」


「ご尽力、感謝します。後はお任せ下さい」

扉に向かう。


「この御恩に報いる為、必ずや兄上殿を救出致します」

背を向けたまま、会釈して出て行った。




♯♯ 人界 ♯♯


「アオ兄♪ ただいまっ♪

うわわっ♪ 壺だらけだ~♪」きゃははっ♪


「綺麗な卵じゃな♪」


「でしょ♪ アオ兄、これも竜宝なんだ。

急いで孵化させるの手伝って♪」


サクラはアオの前に座り、卵を差し出した。


「上から、浄化の光を当ててね♪

元気に生まれてね~って♪」


アオは言われるままに光を当てた。

卵を持つサクラの掌が、桜色の光を帯びる。


「急がせて ごめんね……

早くキミと会いたいんだ」なでなで


サクラが術を唱え始めた。


桜色の光が輝きを増していく。

アオもサクラの光に合わせて、光を強くしていった。


「あ♪ 今、動いたぞ♪」わくわくな姫。


コツコツと微かな音がし、ピィ~と、小さな鳴き声が聞こえた。


殻にヒビが入る。


「アオ兄、突っついて♪」


爪で弾くと、殻がパリパリと落ち、中から小さな青い竜が顔を出した。


「アオ兄そっくり~♪」

「可愛いのぅ♪」


アオとチビ竜が見詰め合っている。


「成功だねっ♪」アオに卵を渡した。


「そろそろ、運べるくらい出来たか?」

クロが入って来た。


「何だぁ? アオの子か?」


「クロ兄、姫は いつ卵産むの?」

「ばっ! 産まねぇよっ!!」姫とクロ、真っ赤。


「ふ~ん」


(サクラ、何処に居る?)


(アオ兄の部屋だよ、キン兄♪)


(クロは?)


(いるよ♪)


(すぐ来てくれ)


(は~い♪)


「クロ兄、キン兄が呼んでるんだ。

連れてって~♪」


「サクラ、このコは?」


「アオ兄が持ってて♪」

言いながら、優しく殻から出して、アオの頭に乗せて、指で撫でる。

チビ竜は嬉しそうに目を細めた。


「解放に必要な竜宝なんだ。

アオ兄と一緒の方がいいでしょ♪」にこっ


チビ竜が、きゅる♪ と鳴く。


「サクラ、行くぞ」大壺を抱えたクロが呼ぶ。


「また後でねっ♪」手を振って、出て行った。




♯♯ 天界 ♯♯


 クロとサクラが長老の山に出ると、鮮やかな若葉色の竜が、誰かを探しているようで、辺りを見回していた。


「ワカナさ~ん♪」サクラが飛んで行った。

「アカ兄 探してるの?」


「これを届けるよう言われたんだけど――」

箱を持っている。


「ちょっと待ってね……あ、術の途中みたい。

少し待ってて――あ♪ ミカンさ~ん♪」


今度はミカンを見つけて飛んで行き、少し話して戻って来た。

「これからボタンさんとお茶するんだって♪

一緒にお茶して待っててね♪」にこっ♪




「サクラ……お前、皆……知り合いか?」


「うんっ♪」にこにこ♪

「クロ兄、ありがと♪ キン兄トコ行くね~」

飛んで行った。


 いつの間に……

 キン兄達も知らなかったワカナさんまで……

 サクラって謎だらけだな……



♯♯♯



「翁亀様、はじめまして」ぺこり

「ウェイミンさん、こんばんは」にっこり

「キン兄、なぁに?」首を傾げる。


「サクラ、アオの力を解放する術だ」

細かい文字がビッシリ書かれた紙を渡す。


サクラはサッと一読して紙を返した。


キンは魔法円が描かれた紙を広げた。

「内側の、この位置に立ち、術を唱えて欲しい」


「俺でいいの?」


「サクラしかいないだろ」フッ……


「……うん」


「アカは、今どうしているのだ?」


「竜宝の仕上げ。術かけてる。

それが出来たら全部揃うよ」


「皆の守護珠は?」


「シロお爺様が持ってる。

今……彩奏の大神殿にいるよ。

もらって来ようか?」


「ああ、頼む」


サクラが消え、守護珠を抱えて現れた。


「王都周辺に竜宝兵器を配置するよう、再三 催促されてるらしいよ……

ちゃんと対抗武器が有るのに……

だから、たとえ、この戦いが終わっても、別の理由つけられて、アオ兄は来なくちゃダメなんだと思う。

兄貴達 集めるから、術の説明 始めてよ」


「解った」


「あっ……アカ兄 終わったみたい」消えた。


(兄貴達、中庭の大池に集まって!)

(キン兄、俺は もう聞いたから、先にアオ兄トコ、行っとくね)



♯♯♯



 浄癒閃輝(ジョウユセンキ)!!


サクラは、壺を運んでいる蛟達から集縮をいくつか貰い、物陰に隠れ、強い光を込めた。


 これが、今の俺の全力……

 これで一掃できるかなぁ……


そして、その特強の壺爆弾を抱え、彩奏の大神殿に曲空した。


「シロお爺様、ムラサキ様、父上の暴走を止める事が出来るのは、コハク王様しか居りません。

父上の王命を廃して頂きたいので、前線の指揮をお代り頂けますか?」


前王達が頷いた。


「本来ならば、私達が向かうべき所、誠に申し訳ございません。

この中に入れている壺爆弾は、特別 強力な物です。

それでも一掃出来るのか……

自信は御座いませんが、お使いください。

それでは、アオ兄様の解放に向かいます」

深く頭を下げたまま曲空した。



「あのサクラに慣れるには、時間が欲しいわぃ。

まったく、妙な気分じゃ」

シロが軽く ため息をつく。


「いつも先行きを不安がっておったではないか。

安心したじゃろ?」ムラサキが笑う。


「複雑じゃよ。

安堵もしたが……それ以上に、見事に騙されておった事の衝撃が大き過ぎてのぅ」


「ほんに見事じゃのぅ」あっはっは♪

「じゃが、サクラは いろいろと記録を塗り替えてきたからのぅ。

あの方が、当然と言えば当然じゃろ」


「まぁのぅ……全ての試練も試験も、最年少かつ最短で合格しおったし……」


「学校なんぞ、三日で卒業しおったからのぅ」


「当然……か……」


「寂しぃんじゃろ?」ニヤリ


「そ……んな事ないわいっ!」


「図星じゃな?」フフン


「煩いわっ!

ここをモモさんに頼んで、移動するぞ!」



♯♯♯



 サクラは王都上空に曲空していた。


 たぶん……城に居るのは偽者。

 王の気に、微かな違和感が有る。

 父上は……どこに……


祇竜(ギリュウ)の神殿……だと思うよ)


(アオ兄!? わかるの!?)


(なんとなく……ただの勘だけどね)


(結界だらけで父上の気が掴めないよ……

でも、この厳重さは怪しいよね。

ん~~

この結界……すっごく似せてるけど……

天竜のモノじゃないよ!)


(確定……かな?)


(俺、行ってみる!)


(駄目だよ!

いくらサクラでも、ひとりでは行ってはいけないよ。

無事って事だけは感じるから、大丈夫だよ。

父上なんだから)


(そぉだね♪ 父上だもんね♪

ぜ~んぶ そろったから、そっち行くねっ)





凜「サクラ、『時短』って?」


桜「術だよ。時間変化を加速するの。

  アカ兄も別のを時短してたよ~」


凜「アカも出来るのに、卵はサクラに?」


桜「同じ加速じゃないからだよぉ。

  失敗できないんだからね~

  それに、あの孵化にはアオ兄が必要だから」


凜「アカは何を時短してたの?」


桜「招召の奏器。蔵に無かったでしょ?

  だから作ったんだよ。

  羅黒檜を珪化木にしなきゃなんないんだ」


凜「珪化木……って化石!?」


桜「うん。だから時短」


凜「サラッと言うよね~」


桜「アカ兄は凄いからね~

  キン兄とアカ兄は、力を隠しているんだ。

  それを知ってたら、魔王は俺達に猶予なんか

  与えなかっただろうね」


凜「なんで猶予なんか……」


桜「竜宝兵器で天竜王国を壊滅させる為だよ。

  魔王にとって竜は邪魔でしかないんだからね」


凜「やっぱり、アオが憑依してる?」


桜「こっちがホントなんだってばっ!」


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