天地乱3-成人の宣詞
場面転換、とても多いです。
慌ただしくて、すみません。m(__)m
♯♯ 天界 ♯♯
ムラサキは、シロとサクラを連れてコハク王の傍に曲空した。
「父上、ムラサキ様……それに、サクラ……」
「まだ、伝令は来ておらぬようじゃな」
「ムラサキ様、何か有ったのですか!?」
「治癒の手を持つ者全てに召集の命が下された。
しかも、明日の正午迄に来られぬなら死罪と――」
「でも、人界でも襲撃を受けてて、アオ兄が来れそうにないんだ!」
「それでは……アオが……」
「だから早く終わらせたいんだ!」
サクラは壺を置き、一度 目を伏せたが、意を決し、真っ直ぐコハク王を見た。
「集縮の壺に、治癒の光と増幅鏡を入れた物です。
投石器で放てば、現状では最強の爆弾になります。
医師の方々には、安全な場所で、これを作って貰ってください」
初めて見るサクラの真剣な眼差しと、しっかりした口調に、コハク王は驚きつつ頷いた。
「それと……
今、ここで、私に成人の宣詞をお願い致します!」
王と前王達は驚愕し、サクラを見詰めた。
「私の年齢を除けば、条件は整っていると思います」見回す。
前王達が頷いた。
「年齢も、条件として明記されてはおりませんし、産卵以降と考えるなら、私もキン兄様も同じです。
正式な成人の儀は何年先でも構いません。
私の力を解放する為に、コハク王様、どうかお願い致します!」
「サクラ……お前……今まで……」
【あなた……私からもお願い申し上げます。
アオを護る為、サクラの力が必要なのです】
「スミレ!?」
【王、王妃、前位者、いずれか三名以上の同意が必要でしたよね?
私が賛同すれば、決行できますよね?】
「私も反対はせぬ。ただ……驚いただけだ」
【良かった……】
箱を抱えたムラサキが現れた。
「シロ、祭壇を組むぞ」
(ありがとうございます。スミレ様)
【いつものように呼んでくださるかしら?】
(ありがと♪ スミレ♪)
【うふふ♪ はい♪】
【サクラ……これから大変ですが、あと少しの間、アオを宜しくお願いします】
(任せて♪ 俺、頑張るよ)ニコッ
【サクラ……私の為に……】
(ヒスイ♪ そんな風に思わないで。
ちょっと早くしてもらうだけだから♪
それに、正式な儀式を受けるまでは、内緒にしてもらうからっ♪
今までと変わらないよ)にこにこ♪
【ありがとう。サクラ】
「お~い、サクラ、始めるぞ」シロが呼ぶ。
「はいっ」
祭壇中央の台座には、サクラの守護珠が置かれ、その両側に、始祖の角笛と聖水に生けられた桜の枝があった。
「必要最低限で、すまぬのぅ」
「いえ、無理を申しましたのに、ここまでして頂けるとは……
ありがとうございます。ムラサキ様」
「せめてもの祝いじゃと、翁亀様より桜の枝を頂いたからの」にっこり
「さ、始めようかの」シロがコハクを招いた。
コハク王の両側に前王達が立つ。
サクラはコハク王の正面に立ち、深く一礼し、跪いた。
コハク王が宣詞を述べ、始祖の角笛を手に取り、サクラの額に当て、王笏を掲げた。
王笏から、あたたかい光が降り注ぐ。
その光に応えるように、ヒスイの欠片から光が迸り、サクラを包む。
サクラの守護珠も、呼応するように輝いた。
サクラの背に翼が現れ、大きく広がり、羽ばたくのが王達にも見えた。
やはり、サクラは神の子であったか……
王達は一様に、そう思った。
【サクラ、ありがとう。
サクラの封印も、出来る限り解くからね】
ヒスイとスミレの掌が角笛に重なる。
無数の小さな光の球が弾け飛び、弧を描いてサクラの体に吸い込まれた。
サクラは頭を垂れ、ゆっくり息をつき、顔を上げ、強い眼差しで王達を見た。
「これより、王族として、成人として、恥じぬ行いに努めます。
コハク王様、ムラサキ前王様、シロ前王様、ありがとうございました」
胸に手を当て、礼。
立ち上がり、もう一度 深々と一礼し――
顔を上げると、いつもの悪戯っぽい瞳で、
「でもねっ」にこっ
「訳有りだから、もう少しだけ、このままでいさせてくださいねっ♪
この事は、どうか御内密にお願いしますっ!」
腰直角の礼!
「じゃ、俺、爆弾作りに戻るねっ♪」消えた。
「曲空しおった……」
「訳有り……とは……?」
【あなた、ありがとうございました。
サクラの『訳』は、私の為なの……
私と……同腹のヒスイの為……】
「解ったよ。誰にも話しはしないさ」
【ありがとう、あなた……
また、参ります……それでは……】
うっすらとスミレの姿が見えた。
スミレは、桜の枝を手に取り、微笑んで消えた。
祭壇を片付けていたシロとムラサキにも、桜の枝が消えるのだけは見えた。
「全ての戦場に、この壺爆弾での応戦を知らせ、医師達の手を早く空けてくれ」
シロが壺から壺を出す。
「儂らは、これから、助ける事が出来た者の為の収容所を作るからの」
ムラサキが仙竜丸を口に入れた。
「じゃから、一刻も早く終わらせてくれよ」
「勿論、アオが来られるようにもするが……
戦いが終われば何の問題も無いじゃろ」
「とは思うが、何やら、ギンこそ『訳有り』な気がするのじゃ。
魔王がアオの命を狙ぅておるのではないかと……そう思えて仕方ないのじゃ」
「とにかく、先ずは、この戦いを終わらせる。
後は、その魔王とやらが、どう出るか、それ次第だからな」
コハクは、そう言って、伝令兵を集めた。
シロとムラサキは、王都に近い、彩奏の大神殿を収容所に決め、準備を始めた。
♯♯♯
(サクラ、手伝ってくれ)
(アカ兄、竜宝 苦戦してるの?)
(苦戦などしていない。時短、出来るんだろ?)
(うん♪ すぐ行くねっ)
♯♯ 人界 ♯♯
船の上空に紫苑と珊瑚が現れた。
「ハザマの森は?」
「古狸軍に加え、魔犬軍が来てくださいましたので、私共も、こちらで戦います」
「慎玄殿、こちらに。
二手に分かれましょう」
紫苑と珊瑚が離れた時、コギが現れた。
「キン様、アオ様にお話が御有りなのでは御座いませんか?
こちらは妖狐軍にお任せください」
「ありがとうございます。
急ぎますので、御言葉に甘えます」
キンは降下した。
キンがアオに全てを話し終えた時、クロが大壺を抱えて部屋に入って来た。
「アオ、落ち込んでるヒマなんて無ぇからな。
壺爆弾 作ってくれよ。
アオの力が必要なんだ」
言いながら、大壺から次々と壺を出す。
「壺は、まだ入ってる。
これに治癒の光を込めてくれ。
後はオレ達がやるから」
(姫、手伝ってくれ。アオの部屋だ)
姫が扉から、ぴょこっと顔を出す。
クロが手招きする。
「アオから壺を受け取ったら、鏡を入れて、蓋をしてくれ。
次の壺を持って来る。キン兄、行こう」
部屋から出、クロはキンに魔法円が描かれた紙を渡した。
「説明してくれるって。
だから、アオの事はオレに任せて」
成人の宣詞の後、ヒスイを迎えに来たスミレに、
サクラは、もう一度 来るよう頼んでいた。
要件を伝えた後、宣詞の時の話になり――
桜「スミレ~、またカッコつけなのぉ?」
菫【せっかく行ってあげたのに、
その言い方って何よぉっ!】
桜「伯父上に会いたかっただけでしょ」
菫【うっ……そりゃあ、会いたいわよ……
でも、それが何?
サクラだって、カッコつけじゃないのっ】
桜「あっちが俺だから。普通だよ」
菫【――とは思えないわよ】
桜「桜の枝、返してよ」
菫【もう必要無いでしょ?】
桜「貴重な木なんだからね。増やすんだよ」
菫【もう一度『様』付けて呼んでくれたら
返してあげるわ♪】
桜「ふぅん。
では、スミレ様、お返し願えますか?」
菫【いいわよ~♪ はい♪】渡す。
桜「ん♪ ありがと♪ 伯母上様♪」
菫【それは、何かイヤ!】




