天地乱1-闇雲
転載だから余裕?
――いいえ、手直ししていますので自転車です。
それでも、投稿後に誤字を見つけます。
♯♯ 天界 天竜王城 ♯♯
シロは控えの間でギンを待っていた。
もちろん、王子達の守護珠は、全て すり替え済みで。
城内が俄に ざわめき始めた。
窓に寄ると、宵闇が訪れたばかりの遠くの空に、気の翳りが見える。
謁見の間の飛翔台に、伝令兵が降り立つのが見えた。
シロは急いで謁見の間に向かった。
「コハク王! 何事じゃ!?」
「父上、ハザマの森より、魔物の襲来です。
境界の警備兵軍が応戦していますが、敵数が多いようです。
ギンが戻るまで、城をお願いしてもよろしいですか?」
「任せよ。
闇黒色の魔物は、傀儡とされた魔人や操られておる魔人じゃ。
治癒の光で応戦せよ」
「ありがとうございます。ではっ!」
コハクは、精鋭兵と軍医を率いて出陣した。
「コハク王軍が出たならば、王都の結界を強化せよ!
見習いも含め、医師を集めよ!
治癒の手を持つ者ならば、誰でも構わん!
国中より、出来る限り多く集めるのだ!」
シロの命で、近衛兵達が散った。
♯♯ 人界 船 ♯♯
姫がリリスの腕輪に、三日月型の飾りを付けていると――
「魔物襲来!」物見が叫んだ。
姫が、航海士の部屋を気密し、甲板に出ると、船の上空は魔物で覆われていた。
まるで闇の雲じゃのぅ……
大きな魔物も混ざっておるな……
妖狐達が天に駆け昇る。
背にはアオと慎玄が乗っていた。
「姫様! こちらをお使いください!」
爽蛇が大きな放水器を渡した。
爽蛇は大樽に聖輝水を入れ、鏡を入れた。
たちまち聖輝水が樽に満杯となる。
「この水を魔物に放出して下さいませ!」
放水器と樽を繋ぎ、二人は放水器を構えた。
一際 大きな魔獣が、咆哮を上げながら降下して来た。
「たんと浴びよ!!」姫が放水する!
大きいが速い!!
躱される!? また!?
当たらぬのかっ!?
角度を変え、宙を蹴った魔獣が迫る!
近くなれば、こちらのものじゃっ!
聖輝水が掠め、動きが鈍ったところに、正面から当てた!
聖輝水をたっぷり浴びた魔獣は、動きを止め、色が戻り、小さくなりながら落下した。
「わん太郎!?」駆け寄る。
倒れたままのタォが、首だけ上げた。
「姫さま~♪」尻尾ぶんぶん♪「ありがと♪」
♯♯♯
上空では、アオの治癒の光と、慎玄の浄化の光に、紫苑と珊瑚が妖力を加えて込め、強化し、拡散していた。
コギが現れた。タォを乗せている。
「タォを追って参りました。
一先ず、社に戻し、参じます」
言って、光の矢となり、魔物の群れを突っ切って消えた。
コギの配下達が、海上に念網を拡げた。
♯♯ 天界 天竜王城 ♯♯
大広間に集めた、天性・治癒を持つ者達に、シロが対処法を説明していると、ギンが帰城した。
「前王、ありがとうございました」
「山からも、治癒を持つ長老達を、王都の結界に向かわせておる。
あとは頼んだぞ」
「はい。
くれぐれも御無理なさいませぬよう」
「年寄り扱いしおって」笑う。
「ここが違うからのぅ」頭を指す。
「無理なんぞせんでも戦えるわい」ニヤッ
「では、な」シロは飛翔台から飛び立った。
ギンは医師達を各所に配置し、玉座に着いた。
親父……また、守護珠を持って行ったな……
♯♯ 人界 船 ♯♯
クロは知らせよと言ぅておったが、
なんとかなりそぅじゃから、
言わずとも構わぬじゃろぅのぅ……
姫が、そう思った時、アオを乗せた紫苑が降下して来た。
アオが部屋へと走る。
「如何したのじゃ?」紫苑に問う。
「回復薬が少なくなりましたので」
アオが薬袋を持って甲板に出ようとした時、
アオの耳元に闇の穴が開き、拡がり、アオを引き込み、即、閉じ始めた。
「アオ!」姫が飛び込む。(クロ!!)
闇の穴が塞がると同時に、クロが現れた。
「姫っ!!」キョロキョロ「――は、どこだ?」
「アオ様と姫様が闇の穴にっ!!」
「どういう事だっ!? 爽蛇!!」
♯♯ 天界 天竜王城 ♯♯
玉座のギンは、夜が更けても尚、報告を聞き、指示を出す事を繰り返していた。
それが途切れた時、すぐ目の前に、闇の穴が穿たれ、闇黒色の靄が吹き出し、視界が歪んだ。
ギンが見回すと、謁見の間に居た全ての者が静止していた。
穴から魔物が出て来て、穴に向かって恭しく一礼すると、闇の穴が大きく拡がり、闇黒竜が姿を現した。
「天竜王様、私の指示に従って頂きます」
魔物が、今度はギンに向かって、恭しく礼をした。
「何故?」
ギンは立ち上がろうとしたが、動きを封じられていた。
「貴方様には、発言権は御座いません。
勿論、拒否権も……」ほっほっほ……
ギンは気を高め、呪縛を解こうとした。
「実力行使に出ると仰るのでしたら、貴方様の愛する王子――竜に戻れない王子様が、どうなっても知りませんよ」ほ~~ほっほ♪
ギンは高めた気のまま、王子達の気を探った。
……アオが……蒼牙も見つからない……
まさか!?
魔物がギンの表情を見て、ほくそ笑む。
「解った……」
「御理解頂けまして光栄に存じます。
それでは、早速、動いて頂きましょう」
♯♯♯♯♯♯
闇の穴に引き込まれたアオに向かって竜血環が迫る!
「アオ!」
穴に飛び込んだ姫が立ち塞がった。
「姫!!」
「構わぬ! 下がれっ!!」
竜血環が姫の体に触れる寸前、妖狐の護札の文字が、姫の前に紅く浮かび、三日月型の飾りが紅く輝いた。
竜血環が弾け散る。
「へ!?」きょとん
続いて迫った環も弾け散った。
この護札と御守の力……
共鳴しておるのか!?
(クロ!)
(姫!? 無事か!?)
(生きておるぞ♪)
(どこに居るんだ?)
(わからぬ)
(アオも居るのか?)
(居るぞ。この御守、あの輪を壊すぞ♪)
(そっか……アオを護ってくれてんだな)
(任せおけと申したからの♪)
(無理すんなよ)
(解っておる♪)
クロと話ながらも、姫は次々と竜血環を破壊しながら、発射元に近付いていた。
(調子に乗るなよぉ)
(調子は良好じゃ♪)斬!
発射台を、朱鳳で真っ二つにした。
(大丈夫かよ~)
(魔物が……居らぬ?)
(罠かもしれねぇぞ)
(うむ……)ん!? アオは!?
振り返ると、アオは魔物に囲まれている中で、剣に光を集めていた。
「アオ!」
姫が叫び、踏み出すと同時に、アオは剣を払い、光の円弧が放たれた。
光に包まれた魔物達が塵となって消える。
……静寂……
「もう、居らぬのかのぅ……」
魔物の有無を確認ついでに見回すが、出入口らしきものは無い。
引き込まれた部屋は、魔物が消滅した後、次第に暗くて何も無い、ぼんやり、のっぺりとした空間になっていく。
ただただ灰色の、境も何も無い空間に――
(アオ兄! 俺と手を繋いで!
離れて行ってる! 早くっ!!)
(サクラ? 手を?)
(まだ聞こえてるよね?
アオ兄、朝やったのと、おんなじだよ。
心で繋がれば飛べるからっ)
アオは目を閉じてみた。
(サクラ……あ……見えたよ。ありがとう)
「姫、脱出するよ」手を伸ばす。
姫がアオの手を取った時、アオは、心の中のサクラの手を掴んだ。
(アオ兄、船のクロ兄にっ! せ~のっ!)
一瞬の浮遊感……
そして、船に降り立った。
「アオ兄~♪」サクラがアオに抱きつく。
「姫っ!?♪」クロに姫が抱きついた。
伊牟呂の鉱山地帯では――
白「サクラ!?」
藤「クロ兄様に続いて……ハク兄様! 船に!」
白「フジは、その石、頼む!
奪われたらオシマイだからなっ!」
藤「はい!」
白「もっと集めといてくれ!」曲空!
私も……曲空したい……会得せねば!
でも、今は集めねばなりませんね!




