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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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西航行23-二人旅

 前回まで:大陸が近くなり、

      フジとリリスは恋人になりました。


 工房でアカと話した後、フジが洞窟の自室で薬を調合していると――


(フジさん、どちらにいらっしゃいますか?)


(今、洞窟で薬を調合しています。

リリスさん、何かありましたか?)


(いえ、なんにも……あの……

フジさんの竜さんに乗せて頂けますか?

一緒にも乗りたいのですが……

私ひとりでも大丈夫でしょうか?)


 一緒に……それは……どうすれば……

 その問題も有りますね……


(まだ少し、こちらでしなければならない事が有るのです。

ですので、一緒に乗るのは、また今度お願いします。

これから、竜だけ向かわせますので、乗ってください。

アオ兄様にお願いしておきますので)


(はい♪ ワガママ言って、すみません)


(いえ、嬉しいです)ぽっ


(えっと……でしたら、もうひとつ……)


(何でしょう?)にこにこ♪


(あの……『さん』無しで呼んでください……)

 言っちゃったぁ!


(え……?)真っ赤。


(あっ、無理ならいいんです!!)あわっ!


(あ! いえ、嫌とか無理とかではなくっ!

その……)赤面しまくりで深呼吸~(リリス……)


(はいっ♪ 嬉しいっ♪

ありがとう! フジさん♪)


(私には付けたままなのですか?)


(えっ!? それは……)


(無しにするなら一緒がいいです)むぅ


 なんか……かわいいっ♪

 フジさんも拗ねちゃうのねっ♪


(じゃあ……フジ……)

 きゃあっ! 恥ずかしいっ!


(はい♪

恥ずかしいですけど嬉しいですね♪ リリス♪)


(はい♪ 恥ずかし嬉しいですね♪ フジ♪)


フジは、幸せに浸って微笑みながらも、手際よく薬を梱包し、道具を片付け、古文書を閉じた。


(では、竜だけ向かわせますので、待っていてくださいね)


洞窟から駆け出て、飛び立った。


(フジは、どうやってこっちに?)


(誰かの竜を借ります。夜には戻りますので)


(フジ……その……丁寧な言葉遣いは……)


(あっ! あの……

他の話し方を知らないので……

これから努力します……)


(あっ、でも、そのままがフジらしいから、やっぱり変えないでっ!)

笑っている。


(はい♪ ありがとうご……ぃぇ、

リリスは、話し易い言葉遣い、で、、ね?)

それでも、崩して話そうとしてみた。


(無理しなくていいわ♪)笑い続けている。


(……私の普通で許してください)早くも降参。


(はい♪)


(アオ兄様に、誘導をお願いしますので、少し待ってくださいね)(はい♪)

(アオ兄様、薬が出来ました)


(早いね。もう、こっちに向かっているの?)


(もうすぐ着きます。

それで……リリスさんが、おひとりで乗りたいそうなんです。

『竜呼び』お願い出来ますか?)


(うん、解った。甲板で待っているね)



♯♯♯



 アオが甲板に出ると、紫の光は、既に、かなり近くに有った。


 物凄く速いな……会いたさ強過ぎだよ。


甲板に居たリリスに気付かれないようクスリと笑うと、アオはフジとの距離を測り、指笛を鳴らし、片手を挙げた。


藤紫の竜が甲板に降りた。


竜の首に下げてある袋を貰い、リリスを乗せ、鼻先を撫でて、

「行ってらっしゃい」見送った。


そして、アオは薬を持って、空龍の部屋に向かった。



♯♯♯



「竜さん、行きたい所があるの。

涅魁(ネカイ)の国、わかる?」


竜が小さく鳴いて、頷く。


「よかった♪

北方の、海辺の小さな港町が、私の故郷なの。

もう何年も帰ってないし……

家が有るのか確かめておきたいの」


きゅるる、と鳴いて、北に飛び始めた。


「もぉっ♪ かわいいんだからぁっ♪」ぎゅっ♪


 リ、リリス!? あのっ、それはっ!


リリスは藤紫の竜(フジ)の背に、ぴったり伏せたまま、鱗をそっと撫で、

「竜さん……あの、ね……

私……幸せ過ぎて、夢の中にいるみたいよ♪

でも……やっぱりね……

本当に、私でいいのかな? って、恐くなるの……」


 リリス……


「あのご兄弟は、高貴な方々ではないのかしら?

そう思ってしまうの……

そう! 王子様みたいな!」


 えっ!? 隠せていないのですか……?


「私は……

学校にも、ちゃんと通えなかったし……

だから、仕事も選べなくて……

生きていくために仕方なく……


あ、でもね、踊る事、それ自体は大好きよ♪

……踊るだけならね……

酔客が嫌いで、触られて、ブッちゃって、クビになった事 何度もあるわ」あははっ


「踊る以外の事を要求される度に、お店を転々として……

だんだん故郷から離れてしまって……

お金かかるから帰れなくなってしまって……

何年帰っていないかなぁ……

お母さん……生きてるかしら……」手が止まる。


きゅる……


「慰めてくれてるの? ありがとう」なでなで♪


くるる~


 くすぐったいです……困りました……


「ん~♪

竜って、こんなに可愛いのに、どうして、みんな知らないんでしょ!

他の人に言ってもいいのかしら?」


きゅるきゅる~♪


「いいの!?

ひっそり生きてるから、隠れてないとダメなのかと思ってたわ!」

また撫でる。


 !! リリス! やめ、てっ……

 逆鱗、近いのでっ! そこはっ!


リリスが起き上がり、手を打つ。

「あ♪ フジも舞踏できるのかしら?

クロさんもサクラさんも、本物の舞踏してたのよね~

あ! だから、王子様だ! って思ったのねっ♪

フジと一緒に踊りたいなぁ~」


 はい♪ それでしたら、いつでも♪


 !? あれは……まさか!!


前方に黒い影が見えた。


(護竜甲殿! リリスに展開出来ますか?)


【この位置であれば大丈夫です】


(落ちないようにも?)


【勿論でございます。フジ様】


(では、リリスに展開お願いします!)


【畏まりました。フジ様、御存分に】


光がリリスを包む。


(リリス、魔物を察知しました。

しっかり、竜に掴まって、伏せてください!)


(あっ、はい!)


(安心してください。絶対、私が護りますから)


(はい)




 藤紫の竜(フジ)は気を消し、豪速で魔物の背後に接近した。

掌に出した紫炎に、瓶の口を当て、聖輝水を炎に乗せて放った!


背後から聖輝水を浴びた魔物は消滅した。


 これでも……戻せないのですか……あっ!


サッと降下し、落下している檻を掴む。


「竜さん! 後ろ!」


振り返ると、闇の穴から魔物が出てくるところだった。


 もう一度!


出きっていない魔物に、正面から紫炎に乗せた聖輝水を浴びせた。


闇の穴が塞がり、魔物が色を取り戻す。

落ち始めた魔人の背に膜翼が現れ、宙に留まった。


 この違いは?


 ……考えるのは後ですね。


 ウェイミンさんと同じように、

 この方とも、お話し出来るでしょうか?


フジは魔人に近付いた。

「ご無事ですか?」


「……はい。これは一体……」


「後程、説明致します。

ここは危険ですので、一先ず移動しましょう」


「分かりました……

あっ、ありがとうございます!」


「いえ、そんな事……

とにかく、お乗りください」


檻を見る。

淡い紫の光を纏った天使が入っているが、気絶しているようだ。


聖輝水を紫炎で霧にし、吹きかけると、天使が起き上がった。


「安全な場所に移動してから開けますので、少し我慢してください」

軽く頭を下げる。


(リリス、すみません。船に戻らせます)


(はい。フジ、ありがとう)

「竜さんも、ありがとう」ぎゅっ


(急いで戻らせますから、もう少し、そのまま我慢してくださいね)


(はい)


「魔人殿、しっかり掴まってください!」


(護竜甲殿、船まで、リリスを宜しくお願いします。

あ、魔人さんもお願い出来ますか?)


【畏まりました。フジ様】


フジはアオと話しながら、豪速で船へと飛んだ。





凜「クロはグズグズしてるけど、

  フジはトットコ仲良くなっちゃったな~

  すっかりバ――」カップル……


 殺気を感じ、振り返ると――


藤「…………」メラメラメラメラ……


凜「フジ!?」


藤「そこまで書いていいとは言っていません!!」


凜「アオ! 助けてっ! 水!

  笑ってないでっ!!」


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