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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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西航行22-竜宝との絆

 長老の山は、天界で最も強固な結界で護られています。

翁亀様は長老の山にお引っ越しされたようですね。


♯♯ 天界 長老の山 ♯♯


 翌早朝、ウェイミンが書庫に入ると、中庭の大池の真ん中で、満開の桜の大木が風に揺れていた。


「桜なんて……ありましたっけ?」呟くと、


「あれが、物知りの亀さんよ」モモの声がした。


「亀さんの朝食を運ぶのだけれど、お手伝い、お願い出来るかしら?」


「はい!♪」


「今日は、亀さんと存分にお話してはいかがかしら?」


「解読は……?」


「滅多に無い事ですもの」にっこり

「それに、解読の為にも良いと思いますよ」


「ありがとうございます!♪」満面の笑み。




♯♯ 人界 船 ♯♯


 アオの部屋には、フジとサクラも居た。


「アオ兄様、こちらを。

アカ兄様から預かって参りました。

三眼と四眼を交差させて背負えます。

腰の留め具には、蒼牙を差してください」


装着し、剣を差し込む。


「おっ♪ いいな、ソレ♪」ハクが戻って来た。


「キン兄さんは?」


「洞窟に戻った。

今、空龍さんに会ったんだが、明後日の午後、伊牟呂(イムロ)の港に着くらしい」


「竜で送るんですよね?」


「アオが決めたんだろ。

なんで聞いてんだよ」ハクが笑う。


「俺は飛べないから……」


「だから、気にすんなって~

んじゃ、兄貴風に決めてやる」また笑う。


「フジが、空龍さんとリリスさんを、

サクラが、俺とアオを乗せて飛べ。

フジとサクラは、後で人姿になって顔を見せろ。

クロの竜に送って貰った事にしてな」

キンを真似て言った。


部屋が明るい笑い声で満たされる。


「アオは、その格好でな」アオが頷く。


「フジは、それで大丈夫だな?」フジも頷いた。


フジは二つの輪を取り出した。

「アカ兄様から頂きました。

これが有れば、離れていてもリリスさんと話せるそうです」


「サクラみてぇだな」


「ええ。

サクラが話せる原理と、ほぼ同じだそうです。

サクラは、いくつかの竜宝の力の相乗効果で、ヒスイ様の欠片を通じて、私達と話しいているそうです。


この腕輪には、複数の竜宝の欠片が込められていて、埋め込まれている結晶石が、ヒスイ様の欠片の代わりだそうです。


アカ兄様は、前々から、これを作ろうとしていたそうで、私達で成功すれば、兄様方の分も作るそうです。

これからリリスさんに渡して試します」


「アカって……凄ぇよな、いろんな意味で……」


「そうですね」苦笑。


「アオ兄、たぶん、もぉ出来るよ。

やってみて♪」にこっ


「え?」


「俺と話す時と、おんなじだから」にこにこ♪


「ああ、やってみるね」

(フジ、聞こえるかい?)


「はい! あ……」(アオ兄様、聞こえますか?)


(本当だ……話せるね)にこっ


(話せますね。驚きました)にっこり



(ハク兄さん、聞こえますか?)


(ああ、聞こえた。お前らって……便利だなっ♪)


(便利って……)苦笑。



(アオ兄、俺にも気を拡げて♪)


(こうかな……?)


(うん♪ そのまま誰かと話して♪)



(クロ、聞こえるか?)


(アオ!? びっくりした~

どうなってんだ?)


(どっちも聞こえた~♪)きゃはっ♪


(サクラ!? だからっ!

どうなってんだよ!!)


(後で、ちゃんと説明するよ)

(クロ兄、あとでね~♪)


(あ? ああ……後でな)



(今度は、キン兄とアカ兄、同時にねっ♪)


(やってみる)二人の気を掴む――

(キン兄さん、アカ、聞こえますか?)


(アオか?)(腕輪は五つだな?)


(うん♪

アオ兄も、兄貴達みんなと話せるんだよ~♪)


(そうか)(解った)


(アオ、サクラを通じているのか?)


(いえ、単独で話せます)


(うむ、解った)



「ねっ♪」


「竜宝の力は凄いな……」


「あ♪ あとでキン兄に護竜盾(ゴリュウジュン)渡しに行こ♪」


「乗せて行ってくれるのかい?」


「うん♪ 一緒にねっ♪

ハク兄、いいでしょ?」


「ああ、行ってこい」




 フジは部屋から出、アオはクロと話し始めた。


(ハク兄は護竜剣で合ってると思うから、今のうちに仲良くなっといてね)


(主になれって事か?)


(うん。

護竜槍の本体 見つけたら、魂は返すからね)


(それも、お前が持ってんのか?)


(うん)


(本体は、どこに有るんだ?)


(翁亀様が言ってた所。

そこに行くには、護竜剣が必要だから)


(解った)「……ん?」

(何で翁亀様が言った事を知ってんだ!?)


(だからぁ、いろいろ知ってんだよ~)ニコッ


 恐ろし過ぎる……



「アオ兄♪ クロ兄と話し終わった?」


「終わったよ」振り返る。


「じゃ、キン兄トコ行こっ♪」アオに おぶさる。


「おいおい」あはは……


(このまま、キン兄の気 掴める?)


(ん? ……掴んだよ)


(じゃ、飛ぶよっ♪ せ~のっ!)


「消えやがった……」ハク、呆然。


 しかも、アイツら、人姿のまんまで……




「ハク兄♪ ただいまっ♪」


「曲空……なのか?」


「ん~~、たぶん違う。相乗効果♪」


「なんかズルいぞ! んな簡単にっ!」


アオとサクラは顔を見合わせて笑った。


「たぶん、兄貴達のトコにしか飛べないし~

アオ兄と一緒じゃないとムリ~」ケラケラ♪


「毎回ああやって飛ぶのか?」おぶさる真似。


「一番ラクなの探さないとねっ♪

アオ兄、どぉしたい?」にこっ♪


「サクラに任せるよ」


「じゃ~ね~ お姫さま抱っこ♪」


「えっ!?」さすがに、それは……


ハクが爆笑する。



♯♯♯



 前日、フジが告白した場所では――


(リリスさん、聞こえますか?)


(はい! 凄いですね♪)瞳キラキラ~


(よかったです)にっこり



(これで、どこに居ても話せます。

これから、私のせいで危険が付き纏う事になると思います。

躊躇わず私を呼んでください)


(はい……)瞳が潤む。


(あっ、泣かないでください。

いつも繋がっていますから。

どこからでも、すぐに飛んで行きます。

私が、絶対、護りますから)抱きしめた。


(幸せ過ぎて……私なんかが……)ひとすじ流れる。


(ご自分の事をそんな風に言わないでください。

私は……過去のひとつひとつを積み上げた、今のリリスさんが好きなんですから)


(幸せで……嬉しくて……)ぽろぽろ溢れる。


リリスはフジの胸に顔を埋め、

フジはリリスが落ち着くまで髪を撫でた。


暫く、そうして、

(すみません……泣かせてしまって……

かける言葉もわからなくて……すみません)


リリスがクスッと笑って顔を上げた。

(フジさんらしいです)にっこり


フジは、その言葉に照れながらも微笑み、

そして見詰め合い……顔を寄せた。


(私も……フジさんが大好きです)



♯♯♯



(やるなぁ、アイツ♪)


(ハク兄さん、部屋に戻りましょう)


ハクの袖を引っ張る。


(薬の事は後にしましょう。ハク兄さん!)


アオはハクを引きずって部屋に戻った。



♯♯♯



 部屋に戻って来たフジに、アオは薬の相談をした。


「確か……

それに当たる竜宝薬が有ったと思います。

アカ兄様に腕輪の報告もしたいので、洞窟に行ってきます」



♯♯♯



 フジは豪速で飛びながら、

(護竜甲殿、よろしいですか?)


【はい、フジ様】


(護竜甲殿は、竜の鱗の様に見えますが、鎧か兜なのですよね?)


【鎧兜、両方の役目を果たす事が出来ます】


(どのようにすれば……?)


【フジ様が竜体である時は、必要ありません。

人姿である時、または、人を護りたい時に『展開』と御指示ください】


(人を護る……

リリスさんを護る事が出来るのですか?)


【はい。護りたい方に向かって放ち、御指示くだされば、竜の鱗に等しい鎧兜となります】


(ありがとうございます!)


【いえ、ところで、フジ様】


(何でしょう?)


【私を、フジ様の背に向かい(はな)って頂けますか?】


(はい)取り出し、上に放つ。


護竜甲は一瞬 輝き、フジの背の一枚の鱗に重なり、同化した。


(そこは……逆鱗……)


【はい。持ち運びは、このように】


(手に取りたい時は、どのように?)


【そう思うだけ、でございます】


 手に……?


護竜甲が手の内に現れた。


もう一度、背に放つ。


【人である時も同様でございます】


(鱗が見えなくても、私の背にいらっしゃるのですね?)


【はい。それと、もうひとつ。

私がお手元から離れましても、私の力は変わりなく御使用頂けます。

フジ様を主と認めました時より、絆で結ばれておりますので】


(絆……ですか……

絆を結ぶのは、神竜様とだけではないのですね)


【はい。神竜から生み出されました私共、竜宝とも、絆を結ぶ事が可能です。

絆を深めれば、出来る事が増えて参ります。

変化がありましたら、また、お知らせ致します】


 アカの工房に着いた。


(護竜甲殿、展開してください)


背中の一点が輝き、その光が体に沿って拡がり、淡い光に覆われた。


(重さを全く感じません……)


【普通に動く事が出来るように作られておりますので】


(これなら、リリスさんも動けますね!)


【御自身を護る事もお考えください】


(護竜甲殿が気付かせてくださったのですよっ!

……私自身などよりも、ずっとずっと護りたいのです)


【畏まりました。

その強き想いに、全力で応えさせて頂きます】


(ありがとうございます。護竜甲殿)


【戻す時は『還鱗(カンリン)』と御指示ください】


(還鱗お願いします)


纏っていた光が、背の一点に吸収された。





 長老の山を出た所で、団子をつまみながら、

キンの話を聞き終えたハクは、

何か思い至ったらしく真顔になった。


白「なぁ兄貴、サクラにゃあ、まだ早いが、

  アオは……どうなんだ? 居るのか?」


金「……私は知らぬが……

  そっとしておいてやってくれぬか?

  今のアオは、まだ記憶を封じられている

  のだからな」


白「……確かに、そうだな」


金「ただ……今は居ないのだと思う。

  ボタン達を長老の山に招いたのは、

  アオだからな」


白「マジかっ!? いつ!?

  ミカンもかっ!? いつからヤマに!?」


金「出立の儀の直前だ」


白「ずっとヤマに居たのか……

  まさか、狙われる事を想定して……か?」


金「そうであろうな」


白「アオって……やっぱ……凄ぇ……」


金「だからこそ、アオは狙われ、

  封じられる事になったのであろうな」


白「そっか……」


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