西航行19-進める
前回まで:皆でフジを後押ししてます。
♯♯ 天界 長老の山 ♯♯
大婆様の部屋から出、シロはキンに問いかけた。
「いろいろ、いっぺんに起こって大変じゃが……
こんな時に始めてもよいのか?」
「ああ……あの件ですか?
そちらも時間が掛かるでしょうから、進めて頂けますか?
ただし、単独で進められる範囲内で。
儀式などは先延ばしで、お願いします」
「ふむ……
人界から、皆、揃って離れる訳にはいかん、という事で徹しておくわい。
しかし、そうなると……
モモさんが付く事は無理かのぅ……
解読を急がねばならんからのぅ」
「大丈夫ですよ。ウェイミンがおりますから。
それに、時間を調整するには、どちらも私の方がよろしいでしょ?」
「モモさん……どこから現れたんじゃ?」
「厨房から出たら、二人が見えたの」ふふっ♪
「キン、今日は団子がありますから、持って行ってね」にっこり
「ありがとうございます、モモお婆様」にこっ
あら、キンが自然に笑顔を……
この様子なら、心配要らないわね。
「それでは、シロお爺様、モモお婆様、色々とお願い致しまして申し訳ございませんが、宜しくお願いします」
丁寧に頭を下げた。
♯♯♯♯♯♯
アオは部屋に戻り、眠っているサクラを見ていた。
(アオ兄、心配しないで。
ちょっと疲れただけだから)
(起こしてしまった?)
(ううん、起きたらアオ兄がいたんだ♪)
(そうか……
サクラ、クロを呼んだって事は、フジが危ない、って事を察知したのかい?)
(うん……フジ兄、すっごく困ってたから)
(そうか……ありがとう。サクラは凄いな)
(俺じゃないよ。
俺の中の竜宝達が、ヒスイの欠片を通じて教えてくれるんだ。
あ、四眼もアオ兄が持っててね)
(サクラが使うんじゃないのかい?)
(今はアオ兄の方が必要でしょ?
その必要がなくなったら、両方ちょーだいねっ)
(解った。ありがとう、サクラ。
俺も、サクラと同じように竜宝の力で戦うからね。
もう、無理に抉じ開けないから、安心して)
(うん♪ 竜にはなれないけど、我慢してね)
(そうか……それは出来ないんだね。解ったよ)
(三本あれば、水竜 呼べるから、それで、ね?)
蒼牙の欠片ぜんぶ集めたら、
一本だけで出せるはず。
だから、これから蒼牙も探さなきゃ……
(水竜? ああ、あれか……
なら、姫の剣も竜宝なのかい?)
(うん。朱牙って、蒼牙の仲間の欠片と、鳳雅って、華雅の仲間の欠片が入ってる)
朱牙……何か引っ掛かる……
俺は、朱牙も使っていたのか?
……いや、違うな……一体 何が……
とても大切な……大切な事な筈なのに……
(アカ兄が、蒼牙と華雅との相性を考えて、もちろん、姫に合わせて作ったんだ。
それで、朱鳳って名前なんだ)
(よく知っているんだね……)
(アカ兄が教えてくれたんだ)
(アカ……サクラには喋るんだね……)
(アカ兄も普通に話すよ~)きゃははっ♪
サクラが起き上がった。
(キン兄が、こっち来てるよ♪ 団子 持ってる♪)
(そんな事まで分かるのかい?)
(キン兄は特別♪ アオ兄とは違って、特別♪
キン兄は、俺を通じて、俺が見聞きしてる事を感じ取れるんだ。
なんか、そんな技 覚えたみたい。
だから、俺もキン兄が見聞きしてる事、伝わってきちゃうんだ)
(逆流?)
(そんな感じ。
たぶんアオ兄も、竜宝いっぱい使ってたら、キン兄と繋がっちゃうよ♪)
兄貴達と話すの、もうできるかな?
まだビミョーかな……う~ん……
(そうなったら……なんか、嬉しいな)
(うん♪ 調整も出来るからね。
あ、それでね、護竜盾はキン兄にあげてね。
それは、アオ兄と俺には、必要無いから)
(解った。
サクラ、話し方が、いつもと少し違うんだね)
(あ……つい……)
(なんとなく解っていたから、俺には力抜いていいよ)
ああしてるのも、俺の為なんだろうな……
きっと……
(アオ兄には解っちゃうよね~)あはは……
(だんだん、はっきり伝わってくるようになってきたからね。
無理しなくていいよ)にこっ
(ありがと。アオ兄)にこっ
♯♯♯♯♯♯
フジが垣立にもたれて空を見ていると、今度は姫が来た。
皆さんに心配かけてしまってますね……
「のぅ……フジ……」
「クロ兄様は、上に戻りましたよ」
「怒っておったか?」
「表面は……でも、本気では怒っていませんよ」
「然様か……
それより……のぅ……
フジは、何故、リリスに気持ちを伝えぬのじゃ?
好いておるのであろ?」
「それは……そんな……こと……無い……」
「ワラワでも分かる程に隠せておらぬぞ」
「えっ!?」
「リリスも、じゃが……
二人とも、自分の気持ちから目を背けおって、互いに伝えぬなどと……
まったくもって、そっくりじゃな」
「そんなに……分かる程……」ため息……
「知らぬは互いのみ、ではないか?」フフン♪
「そうですか……」もう一度、ため息……
ああ……ですから、
ハク兄様も、アオ兄様も……
「リリスは、自分が踊り子じゃから、生きてきた世界が違い過ぎるからと……
それに年上じゃから言えぬと、言うておったぞ」
「なぜ、そんな事を気にするのです?」
「そぅ言うと思ぅとったわ。
オナゴじゃから気にするのじゃ」
「なぜ職業で? 年齢など……どうして?」
「フジは純粋じゃからのぅ。
それが、リリスには辛いのじゃ。
フジには相応しくない、と思ぅとるのじゃ」
「そんな……そんな傷つき方……」
「じゃから、リリスからは決して言わぬぞ。
フジから言ぅてやらねばのぅ」
「それは…………出来ません。
私の想い人だと敵に知られれば、また、危険な目に遇わせてしまいます。
これから魔界に進めば護りきれません」
「ならば、早ぅ平和な世にするまでじゃな」
「えっ?」
「そぅじゃろ?
敵さえ、おらぬよぅになれば、問題無いのじゃろ?」
「確かに……そうですね」
「ならば、とにかく気持ちを伝えよ。
大陸に着き、話す機を逸する前にのぅ」
「リリスさんを送ってからでも、私には伺う口実はありますから」にっこり
あ、笑いおった……
「薬も運びますし、あの物語もありますから。
キン兄様が、誰か書き留めてくれるか?
と言った時は、無意識……と言うか、リリスさんの目を見なくてすむので、手を挙げたのですが……
おかげで、渡した後も話せる口実になりそうです」にこにこ
ワラワもクロの目を見るのは恐いからのぅ。
心の臓が早鐘のよぅになるからのぅ。
竜も同じなのじゃな……
「後でも、会いに行くのか?」
「修正は無いか、とか、新たに思い出した話は無いか、とか……」
頬を染める。
フジ……可愛ぃぞ♪
「とにかく、リリスを安心させてやらねばの。
おそらく本心では待っておろぅからな」
「私の気持ちは、既に、リリスさんに伝わってしまっているのでは……?」
「知らぬよぅじゃったぞ。
ワラワも思うに、全部が全部 流れてきた訳では無さそぅじゃからの」
とは、嘘じゃが……
やはり、しかと言葉にして欲しいもの
じゃからの。
「そうですか……
まだ、知られていないのですね……」
「じゃから、早ぅ伝えておけ。
待って欲しいとだけはのぅ。
さもなくば、新たな幸せを探す、と言ぅておったぞ」
「えっ!?」
「さすれば、会いに行った時も楽しかろ?」
「あ……」おもいっきり赤面。
「ではな。しかと伝えるのじゃぞ♪」
姫が、サッとフジの背後を指す。
そして、素早く逃げた。
リリスがクロへの伝言を頼もうと、船室の角を曲がった時、
フジはリリスの方を向いて微笑んでいた。
隠しきれない緊張を 、少しばかり溢れさせて――
凜「キン様♪ 以前、仰っていた事を
進めるんですね?」
金「そうだが、何か言いたげだな」
凜「書いてもいいですか?」
金「それは……私は脇役だから、その必要は
無いと思うが?」
凜「脇役だなんて~
メインはアオ、サブがサクラですが
その場その場では、どなたも主役ですよ」
金「だとしても、書く必要は無い」
凜「書きたいから、という作者の気持ちは
必要云々より強いんですよ?」
金「面白くも無い話だ」
凜「面白くしますからぁ」
金「しなくていい!
そもそも書かなくていい!」
凜「そこまで仰るなら書きませんけど、
その代わり――」ふっふっふ……
金「……何だ?」
凜「ひとつ、お願いがあります」にやり
金「脅すと言うのか?」
凜「いいえ、『お願い』です」
金「ふむ」脅迫確定だな。「先ずは聞こう」
凜「では――」




