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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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西航行15-助けたい!

 そういえば……航海編は、

GREEに投稿した時も真冬でしたので、

できるだけ海感をなくしたような……

同じ失敗をしています。


 どうすりゃいいんだよ……


フジが泳ぎ去った方を向いたまま、クロは途方に暮れた。


(クロ兄、間に合った?)


(ああ、サクラ、ありがとな。

とりあえず、フジも、姫も無事だ)


(よかった~♪)


(まぁ、あんま慌てなくてもいいぞ。

なんか、お前……ハク兄もだけど、すんごく疲れてるんだろ?)


(うん♪ ありがと、クロ兄♪)



 サクラに助けられたな……


 ハザマの森の修練場で、

 ムラサキ様に、ご指導頂いてたら――



♯♯♯♯♯♯



(クロ兄! フジ兄が危ないんだ!)


(何があった!? )


(詳しいことはわかんない。

でも、すぐ行って! お願いっ!!)


(フジだな? すぐ行く!)

「ムラサキ様、すみません。

下で何かヤバい事になってるみたいなんで、行ってきます!」


 そんな遠くまでは曲空できないよな……

 知ってる場所か、誰かの気を掴まなきゃ

 まだ行けないから――


 まずは、天界の門!


 次、サクラ!


 んで、アオ!


 からの~、フジ!


 って、フジ!? 何やってんだ!?


目の前の光景に、クロは固まってしまった。


 でも……いい雰囲気とは……

 とてもじゃないが、言えねぇよな……


熱い抱擁をしている人魚の後ろに曲空で回り込み、気を込めた手刀で気絶させた。



♯♯♯♯♯♯



 まさか、姫だったとはな……


まだ気絶したままの姫を見る。

首元までもが煌めいていた。


 なんか……コレ……も、鱗か?

 ……増えてってねぇか?


 ヤバいな……

 魔魚になっちまう前に、何とかしねぇと……


クロは護竜杖を取り出し、見詰めた。


 護竜杖……応えてくれないか?

 姫を助けたいんだ。


念じてみる。

気を高めながら……

護竜杖に向けて、鋭く尖らせ、研ぎ澄ませながら、

何度も何度も――


 お願いだ! 護竜杖!


【新しき主様……】


(オレはクロだ)


【クロ様、この方を元に戻したいのですね?】


(ああ、どうすればいい?)


聖輝水(セイキスイ)をお持ちですね……】


(って、コレか?)小瓶を取り出す。


【はい。それを――】


その時、姫が目を開け、掴みかかってきた!


クロは、手から離れそうになった瓶を掴む方を優先した為、避けきれず捕まってしまった。


「クロ……会いたかったぞ……」

艶めいた瞳で迫って来る。


 姫に、そんな顔させるなよぉ……


「寂しかったのじゃ……抱いてはくれぬのか?」


 んな事、言わせやがって……


「クロ……愛しておるぞ……」


唇が触れる寸前、曲空で後ろを取り、羽交い締めにした。


「オレの姫は、んな事ぁ言わねぇっ!!!」


怒りの気を風の刃に変えて、中の魔物にブチ当てた!


【聖輝水を飲ませるのです!】


(どうやって!?)


【水中ですから、口移ししかありません】


 んな事サラッと言うなよ~


【早く!】


 わかったよ!! ったく~


口で小瓶の蓋を取り、聖輝水を口に含み、姫の体をくるっと回して――


【私を間に挟んで密着して下さい】


 へ???


思わず聖輝水を飲み込みそうになる。


(何だって!?!)


【申したままですが……

お二人の体を密着させ、私を挟んで下さい】


 あ~っ! くそっ!!


(こうか?)


【はい。聖輝水を――】


 わ・か・り・ま・し・たっ!!

 やりゃいいんだろっ!! やりゃあっ!!


護竜杖が、ずり落ちないように、しっかり姫を抱きしめ、

聖輝水が漏れないように、後頭部を支え、口で口を塞ぎ、注ぎ込んだ。


魔物は暴れたが、すぐに静かになった。


【もう大丈夫です。魔物は滅されました。

ですが、その方の心は閉じ込められております。

このまま、心の中にお連れ致します】


護竜杖が輝く。



クロの意識は、暗闇に浮遊した。


 ここは……?


【姫様の心の中です】

小さな光の球が、明滅しながら答えた。


(姫は、どこにいるんだ?)


【深層に閉じ込められております】


(連れて行ってくれるか?)


【はい】


光の球が進み始める。

クロは、それを追い掛けた。



♯♯♯♯♯♯



 フジは、巻貝の最奥で、リリスと対峙していた。


リリスが、床に無数に転がる髑髏を、ひとつ手に取り、その眼窩をフジに向けると、無い筈の目が赤く光り、鋭い光線が放たれた。


フジが光線を躱す度に、背後の壁に小さな穴が増えていく。


 あれは魔物……魔物なんです!


フジは、鼓動が速くなるのを感じつつ、光線を躱しながらリリスに近付いていた。


 あと少し……必ず助けますからっ!


そう思った時、リリスの背後に闇の穴が穿たれた。


闇の穴から闇黒色の手が伸び、リリスの腕を掴む。


「助けてっ! フジさん!」


 言ったのは、魔物……ですよね?

 いずれにせよ渡せませんが!!


「リリスさんに触れる事は許しません!」

フジは紫炎の鞭で闇黒色の手を断ち切る。


 人の姿で技を使うのは、

 やはり、厳しいですね……


 ですがっ!


壁を蹴ってリリスに向かって跳び、手を引いて闇の穴から離した刹那――


穴から刃のごとき小魚の群れが噴射されたが、フジは空かさず劫火を放ち、闇の穴もろとも消し去った。


――のと同時に、

リリスが背後から覆い被さった。


が、


 二度も捕まったり致しませんよ!


フジはスッと身を躱し、


 そこですねっ!


リリスの内に巣食う魔物、ただ一点だけに細く鋭い気の刃を放った。


 あっ!!


それでも弾かれてしまったリリスに、慌てて近寄った。


掌を翳して、魔物が気絶している事を確認し、急いで外傷が無い事を確かめる。


 大丈夫ですね……良かった……

 あの攻撃では、魔物を倒すまでは無理ですね。


護竜甲(ゴリュウコウ)を取り出す。


 翁亀様は、護竜宝は気を確かめる

 と、仰いましたね……


気を高める。


(護竜甲殿、お返事頂けますか?)


少し間があり――


【清々しい気をお持ちの我が主様……】


(ありがとうございます。フジと申します)


【フジ様、如何用にございますか?】


(この方の中の魔物を排除し、元に戻したいのです。

方法をお教え頂けますか?)


【治癒系の術技は会得されていないのですね……】


(はい。申し訳ございません……)


【いえ……聖輝水をお持ちなのですね】


(聖輝水と、お認め頂けて嬉しいです)


【フジ様が、お作りになられたのですか?】


(はい。まだ試作品ですが……)


【確かに、それは聖輝水です。

自信をお持ちください。

聖輝水を飲ませれば、内なる魔物は、滅する事が出来ます】


(飲ませる……の、ですか……?)嫌な予感……


【水中ですし、他に道具などは、お持ちではございませんので……

口移ししかございませんね】


 リリスさんに……ですか!?


フジは頭を抱えた。

鼓動が落ち着かない。


【フジ様、如何なさいましたか?】


(いえ……何でもありません)


リリスを起こし、向き合う。

自分の鼓動が煩くて仕方ない。


【私を、お二人の間に挟んでください】


 !? ……いや、落ち着かなければ……


(挟む? 護竜甲殿は浮きますか?)


【当然、沈みます。ですので……

肌を密着させて、私を挟んでください】


 え!?


……赤面……再び頭を抱える。


【フジ様、魔物が息を吹き返しますよ?】


(あ……はい。解りました……)


深呼吸……しかし、手の震えが収まらない。


リリスを見詰める。


 助けたい……必ず助けます!!


意を決し、リリスを抱き上げ、護竜甲を挟み込んだ。


【私が落ちれば失敗しますよ】


(……はい)


 リリスさん、空龍さん、すみません!


【聖輝水が少ないので、漏れないよう、お気をつけください】


聖輝水を口に含み、姫にされたようにリリスの頭を支え、一気に注ぎ込んだ。


 すみません……


 すみません!


 すみませんっっ!!


護竜甲が輝く。


【魔物は滅されました。

この方の、心の内にお連れ致します】


 えっ!? まさか、このままですか!?


誰も来ない事をひたすら祈りつつ、フジの意識は連れて行かれた。





黒「この話は何なんだっ!」


藤「凜殿! お願いが有るのです!」


黒「凜! どこ行きやがった!!」


藤「出て来ませんね……」


黒「クッソー! 逃げやがったなっ!

  面白がってんだろ! 出て来やがれ!!」


藤「出て来ませんよ……きっと……」


黒「フジ、諦めるなよ。この先、遊ばれない

  ように、バシッと言っとかねぇと!」


藤「私は……誰も来ない事を祈るのみですよ……」


黒「凜! おいっ!

  フジが落ち込んじまったじゃねぇかよ!

  出て来ーーーーいっ!!」


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