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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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西航行14-魔獣化

 前回まで:姫とリリスが発熱しました。


「上空に魔物!!」物見の声が響いた!


アオが甲板に駆け出ると、無数の黒い点が迫っていた。


妖狐が宙を蹴り、跳ぶ。


ガシャッ!! バシャッ!!


船室の窓硝子が飛び散り、何者かが勢いよく海に飛び込んだ。


「リリス!!」空龍の叫び声が続いた。


 連れ去られたか!?


アオは海に飛び込んだ。


前を行く影を追っていると、別の影が追い越し、瞬く間に小さくなった。


 何っ!?


藤紫の竜(フジ)が並ぶ。

「姫様です!」


アオがフジの背に掴まった時、


「アオ様! 慎玄様の術力が()ちません!」

爽蛇が向かって来ながら叫んだ。


「兄様、姫様達は私が追います!」


「頼んだぞ。すぐ合流するから。

フジ、今の二人は――」


「ええ、姫様とリリスさんではありませんね。

心してかかります」強い眼差しで頷いた。


フジは、小さくなっていく二人を全力で追った。


アオが背に乗ると、爽蛇は海を飛び出し、上空へと向かった。




 アオと爽蛇は、慎玄を乗せた紫苑に並んだ。


「慎玄殿! これを!」仙竜丸の袋を渡した。

「これで術力を回復してください!」


「ありがとうございます。

魔物達は皆、魔人の子供です。

おそらく、タォ少年のように……」


「解りました。治癒の光で応戦します!」


珊瑚が念網で捕らえた魔物に、アオは掌を当て、極大の治癒の光を放つ。


――が、


 これでも、まだ弱いのか!?


(アオ兄、四眼が呼応してる!

三眼に治癒の光を込めて(はな)って!)


少し離れ、気を高める。


 治癒の光を両掌に溜め……三眼へ……


 そして放つ!


魔物は色を取り戻し、凶悪な姿から子供に戻り、眠った。


(ありがとう、サクラ)


(向かってるから、も少し頑張ってねっ)


(大丈夫。おかげで、なんとか出来そうだよ)


アオは更に気を高め、三眼を横に薙ぎ払った。

強い光が太い弧を描いて拡がり、色を取り戻した魔人の子供達がポロポロと落ちる。


紫苑と珊瑚が下に念網を拡げ、受け止めた。


「念網は私が保つから、行って!」

珊瑚が紅の光を帯びる。


紫苑は、咥えていた念網の端を船に着け、上空へ跳んで行った。


珊瑚は、更に念網を拡げた。



♯♯♯♯♯♯



 どうやら二人は、獣化ではなく、

 魔物に乗っ取られているようですね……


魔物の気を明確に感じ取ったフジは、一定の間隔を保ちながら追っていた。

姫とリリスの身体を乗っ取った魔物は、海底へと泳ぎ続けている。


 闇の穴を穿つでもなく、泳ぐとは……

 間違いなく罠ですよね。


そうは思っても追い掛けるしかない。


 あれは? 足が煌めいていますね……



海底が近くなり、巨大な巻貝が見えてきた。


 目的地でしょうか……?


フジは二人との距離を詰めた。



 二人が巻貝の中に入って行く。

竜体のまま入るには狭すぎるので、フジが人姿になり、追い掛け入ると、入り口が塞がった。


 想定内ですよ。


フジは、二人の姿がギリギリ見える距離を保ち、追い掛け続けた。


 壁自体が光っているようですね……


ぐるぐると三周程 追った時、姫が立ち止まり、振り返った。

リリスは、そのまま泳いで行った。


フジは身構え、ゆっくり近寄った。


 足の煌めきが増えましたか?

 もしかして、鱗でしょうか?

 という事は、乗っ取りと同時に獣化も?


「助けて……ワラワを……助けて……」


 魔物確定ですね。


『フジ、何をしておる?

 早よ、ワラワを助けるのじゃ!』


 姫様なら、こうですよね……


フジは心の内で苦笑を浮かべ、警戒を覚られないよう、近付き続けた。


姫が切なそうな表情で手を伸ばす。


 闇の穴に 逃げ込まれるよりは、

 罠でも確保ですよね。


フジが手を差し伸べかけた時――


姫が素早く動き、フジにガッシリ抱き付いた。


 えっ!? この力!?


力は魔物のものだが、身体は人である。

竜の力で振り解けば、姫の身体はバラバラになってしまうだろう。


躊躇っているうちに、フジは全く身動きがとれなくなってしまった。


向かい合い、絡み付かれ、後頭部を押さえ込まれた。


至近距離で見詰められる。

艶かしい瞳で――


目の前の唇が動く。


「会いたかったぞ……クロ……」


 !!


姫の唇が迫って来る。


 致し方ありませんっ!


フジは、加減して振り解こうと足掻こうとした。


が、足が絡め取られている。


 何に!?


視線をどうにか下に向ける。


 魚の尾!?


唇が触れる――


 !!!


ぎゅっと目を瞑り、口を閉じる。


しかし、強引に抉じ開けられてしまった。


熱く深い口づけ――


 クロ兄様っ……すみませんっ!!

 これは、クロ兄様と間違えての事ですからっ!


 !? ……!!!


毒気が流れ込んで来る。


すぐに末端から痺れ始める。


 この毒気……かなり強いっ!

 このままでは……


薬の効果を試す為に、毒を呑む事も多く、毒には慣れているフジを以てしても、耐える事が出来ない程に強い毒気が流れ込み続ける。


 仕方ありません! もう振り解くしか――


 え!?


唐突に姫の力が抜け、崩れ落ちた。


「フジ、悪ぃ。いい所を邪魔して――

おいっ! 大丈夫か!?」


フジは解放された途端、崩れ落ち、四つん這いで、闇の毒気を吐き出した。

肩で息をしながら頷く。


「姫は……どこだ?

微かな気が有るんだが……」


フジは解毒の丸薬を口に含み、クロが抱えている人魚を指した。


クロが腹を支えているので、グッタリと二つ折りになっている人魚を起こし、その顔を確かめる。


「うわっ!」放り投げそうになる。


「それは、あんまりですよ」弱々しく笑う。

そして、立ち上がった。

「姫様は、私をクロ兄様と間違えて、ああしたのですから……」

深呼吸~


「姫の……この格好は?」


「種に乗っ取られると魔獣化するようです。

護竜杖殿の指示に従って姫様を助けて下さい」


薬袋から小瓶をいくつか取り出し、残りをクロに押し付けた。


「これは聖水の強化版のようなものです。

聖水が使えるなら、これも使える筈です。

姫様をお願いします。

私はリリスさんを追います!」


フジは早口で捲し立てると、物凄い勢いで奥へと泳ぎ去った。


とにかくクロから逃げたくて――


 クロ兄様っっ!!

 本っ当に! すみませんっ!!





凜「あ、フジ――行っちゃった……

  豪速で泳ぐ距離かなぁ……」


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