西航行13-四眼復活
主役は誰?
――一応、アオですが、その時その時です。
キンは長老の山に向かう為に、ハクとサクラは船に向かう為に、一緒に竜ヶ峰を飛び立った。
上昇しながら、ハクはサクラに声を掛けた。
(アオとフジに、姫様とリリスさんの様子、聞いてくれるか?)
(うん♪ ちょっと待ってね~♪)
…………
(変わりないって~
熱出てないって言ってたけど、病気?)
(ありがとな。ああ、まぁ病気だ。
シロ爺は、何で兄貴を呼んだと思う?)
(四眼が見つかったから~♪)
(やっぱりか……なら、俺達も上に行くか)
(うんっ♪)
(四眼……復活させてくれるか?)
(あ……うん。やってみる)
「兄貴、俺達も付いて行っていいか?
四眼が見つかったんだろ?」
「そうだ。何か知っているのだな?
一緒に行こう」
「俺もいいの?」
「サクラが必要なのだろ?」ハクを見る。
「ああ」
天界の門で、
「曲空するから掴まってくれ」
「うむ……」「わ~い♪」
シロ爺の気を掴んで……曲空!
「おっ!?
ハクも出来るよぅになっとったかの!?」
書庫の中庭で、四眼を持って待っていたシロの目の前に出、危うく組み敷きそうになった。
「まだ精度が……」あはは……
「それが……まさか、四眼……?」
「――の、抜け殻じゃ」
(サクラ、急いで頼む)
(は~い♪)
(ヒスイ、手伝ってねっ)
【もちろんだよ。サクラ】
「シロお爺様、それ、貸して♪」
サクラはシロから四眼を受け取り、両手で しっかり抱きしめ、柄に額をつけた。
目を閉じ、呼吸を整え、気を高めていく。
サクラが光を帯び……次第に輝きを増し……
スミレ様は、サクラとヒスイ様が協力して
四眼を目覚めさせるような事、仰ってたな……
もし、アオが、この場に居れば、
ヒスイ様の御姿と
サクラの翼が見えるんだろうな……
色を失い、生気の欠片も感じなかった四眼が、サクラの光に呼応するように、淡く明滅し始めた。
徐々に、サクラと四眼が光を増す――
サクラが顔を上げ、四眼を掲げた。
同時に地面から光が射した。
魔法円!?
いつの間に!? 誰が描いた!?
サクラ……何か唱えているのか……?
四眼から光が迸った。
辺りが真っ白に輝いた後、色とりどりの光の球が現れ集まり、チラチラと瞬き漂い、スッと四眼に吸い込まれ、白い輝きが弾けた。
色彩が元に戻る。
サクラが掲げていた四眼は、玉の色と輝きを取り戻し、艶やかに陽光を照り返していた。
「サクラ……」
「うんっ♪ カンペキ♪」にこっ
「また、寝るかと思った」ホッとして笑った。
(姫、熱出たって。行かなきゃでしょ?)
(すぐ戻ろう!)
「爺さん、色々ありがとう」ぺこり
「今、急いでるんだ。改めて来るからっ!
サクラ、掴まれ!」
「うんっ!」
ハクとサクラは消えた。
「連続しとると倒れるぞ……」
「種を植え付けられた者に、何か有ったのでしょう」
「じゃろうな。その袋は何じゃ?」
「これが例の檻です」ひとつ取り出す。
「ふむ。後で王には見せておく。
さて、大婆様の所へ行こうかの」
「はい」
♯♯♯♯♯♯
ハクとサクラは天界の門近くに出た。
「悪ぃ……連続曲空は無茶だったらしい……」
「ハク兄、休も。
境界 越えたら乗せてくから」
「サクラも、今、いっぱいいっぱいだろ。
すまなかったな。引き戻してくれたんだろ?」
「あはっ♪ バレてた~?」
四眼が輝く。
「ん? 四眼、なに? ……うん♪
ハク兄、四眼 持って♪」
ハクが押し付けられた四眼を抱くと、四眼からの暖かい金緑光に包まれた。
「そのままね……」
サクラが両掌を合わせ、ゆっくり離した。
掌の間に光の球が生まれ、成長する。
その光の球をハクに向かって優しく投げた。
サクラの力が抜け、後ろに倒れ――
――かけたが、止まった。
そして、やわらかな淡い緑の光がサクラを包んだ。
サクラが目を開けた。
(ヒスイ、ありがと)ニッコリ
【無理させてしまうけど……】
(大丈夫♪ ありがとう)にこにこ
【休むのは後で、だね。支えるよ】
(うんっ!)
「ハク兄、飛べる?」
「ああ、ありがとな。
サクラ、さっきの光は?」
「え~っとね…
治癒と浄化と回復と~
なんか、いろいろ混ぜたヤツ……かな?」
「かな? って、お前、自分の技だろ」苦笑。
「だって、コレも成長を封印してるから」
肩を竦めて笑う。
「ん? 治癒……まさか、天性か?」
「どぉだろ? よくわかんな~い」きゃはっ♪
「そっか……まぁいい。
行けるか? 無理なら休むぞ。
船にはアオとフジがいるんだからな」
「俺、だいじょぶ。ヒスイに治してもらった♪」
「んじゃ、行こう!」
「うんっ!」
「曲空は、まだムリだがなっ」
「俺も~」きゃはは……
「体力温存で回復しながら飛ぶかぁ」
「ん♪」
♯♯ 船 ♯♯
アオとフジは、姫の部屋に居た。
姫の熱は上がり続けていた。
(アオ兄、治癒の光、めーいっぱい上げたら、種 消えるかもだって!)
剣の力を補充していたアオに、唐突にサクラの声が響いた。
「アオ兄様、薬が効きません」
姫の様子を見ていたフジが振り返る。
アオが姫の肩に両掌を当て、治癒の光を極大まで強めていく。
「駄目だな……発芽したって事か……」
それとも、俺では駄目なのか……
「リリスさんも発熱しました!」
睦月が駆け込んで来た。
「すぐ行く! フジ、姫を頼む!」
「はい!」
アオが姫の部屋から出た、その時、
「上空に魔物!!」物見の声が響いた!
凜「サクラって凄いのね~」
桜「アオ兄は、もっと凄いよ♪」
凜「じゃあ、サッサと解放すれば、
自分で護れるんじゃないの?」
桜「それ、できるなら、封印してないよぉ」
凜「魔王って、そんなに強い敵なの?」
桜「たぶんね~
だって、神様が何万年も戦って倒せて
ないんだよ」
凜「何万年って?」
桜「ん~~とねぇ……
神話では、三十六万年くらいかな?」
凜「それ……倒そうとしてるの?」
桜「してる~♪」
凜「そ……ぅ……」
桜「魔王が恐れているのは、竜と神竜が
手を結ぶ事なんだ。
それが叶えば、魔王を倒す事が
出来るんだよ」
凜「サクラ……アオが憑依してるの?」
桜「あのねぇ……」




