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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【泡沫汀の集合体、火花】
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 皆で夕食を食べた後、八巻さんが差し入れてくれた花火をやろうということになり、私たちは宿の前で存分に楽しんだ。花火は小さい頃の盆ににやったぐらいで、身体が育ってからは全くやっていなかった。そのせいもあってか、「花火ってこんなに綺麗だったっけ?」なんて訝るほど、次々に目まぐるしく変わる、一つひとつの火花に見とれてしまっていた。火が消えればもう一つ、また消えた、じゃあもう一本と手持ち花火を次々に消化していった。


 蝋燭(ろうそく)が消えれば手持ち花火から手持ち花火へと火が移った。隣の人へ隣の人へと火が移っていき、だんだんと全体が色付いていく。煙なんてたいしたことなかった。赤い発光の上に煙が漂い、その隙間から見える友人たちの顔がなんとも言えなかった。彼らの頬やおでこに花火の光が映るのだ。赤。黄色。橙。顔が青みがかったと思って彼らの手元を見ると、やっぱり光は青くなっていて。首藤でさえこの花火を楽しんでいるのだ。ねずみ花火で足を浮かせ、女性陣は身を寄せ合って素早い足踏みを繰り返す。


 最後はやっぱり打ち上げ花火で、桑原が火をつける役を買って出たのだが、導火線に着火して急いで逃げる際に、彼は筒を倒してしまうのだ。急いで戻って立て直す姿はやっぱり私たちを笑顔にした。そして、数十メートル上空に上がった色のない球は、薄い雲の広がる空に割れて、大輪の花を咲かせた。そこにあったのもやっぱり笑顔で、首藤も微笑んでいて。なんだか花火と彼ら以外のすべてを忘れてしまったような感覚だった。


 今日初めて花火を綺麗だと思った気がするのだ。それはきっと、誰と一緒にするのかっていうことが大きな役割を果たしていたのだと思う。今までの花火は、「綺麗だ」という概念に囚われてやっていた。そういうことなんだろう。


「ああ楽しかった。久々に青春って感じ」


 雨月の雨だけを吹き飛ばして訪れる青い春は、季節関係なく訪れるようだった。


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