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それからそろそろ歩き出すかと言って進みだした訳なのだが、出発してからこの方参加者と出くわしていないことに気づく。もちろんそれは嘘だ。出発した当初は多くのチームと同じ番号を目指した。近場にあった番号を自分のチームの紙に書き、また後ろから来たチームが同じ番号を紙に記す。チームごとに分かれているとはいえ、多くのチーム同士が団体行動をしているような状態だった。それに嫌気がさしたのか、「もっと違うとこ行きたい」と謙輔と楓は言ったのだ。その意向を尊重すべく、私は分かれ道に差し掛かったときに、なるべく人が選ばない方向の道を選んだ。それは単に人が左に進みやすいから右を選ぶということではなく、人が歩きたくなさそうな道を選ぶということ。結果その選択が功を奏したわけなのだが、この島の人間は野生児並みの生態だとさきほど三好から聞いてしまったので、単に運がよかったに過ぎないのだろう。
「このあたりのはずなんだけどなー」
抽象的な地図はこの辺りを刺しているはずだった。道はだんだんと人が踏むことを予測してつくられたような、キャンプ場でよく見る木馬道にも丸太道にも見える歩道に変わっていた。おそらくこの辺にあるということは確かだった。
「あ、あれじゃない?」
三好の目の先に、古びた白い看板が立っていた。番号を探そうとうろうろしていた謙輔と楓は、素早く三好の背後に近寄って行った。私も歩いて近づく。
「八十点だ」
そう呟いた謙輔につられるように看板を見ると、塗装がはがれかかった黒い数字が、誰かに見つかることを待ち望んでいたかのように書かれていた。
「八十点って高いんだっけ?」
「相当高いと思う。八巻さんも言ってたけど、百点が一番高いから。見つけられないで終わるグループも中にはいるみたいだし」
私と三好がそんな会話を交わしていると、楓が紙に番号を書き入れていた。
「楓ちゃんやること早いね」
そんな私の言葉に黙って彼女は頷くのだった。