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話し込んでしまったようで、ここに着いてから一時間を過ぎようとしていた。「二人、遅いですね」ということを三好と話していると、ちょうどこちらに走ってくる姿が見えた。
「先に片付けておきますか」
「ええ」
私と三好は謙輔の広げたままの空の容器を、ビニール袋に入れてまとめ、広げていたお菓子を鞄にしまった。
「飛鳥ー、いたいー」
声のする方へ顔を向けると、謙輔の膝が赤く染まっていた。
「転んだの?」と心配そうに声をかける三好。「走ってたらこけた」と謙輔は笑いながら照れる。
やっぱり大人びてるなあとじっくり感じた後、私は謙輔に駆け寄った。
鞄に入れてあった水を無言で膝にかけると、たまらず「いてええ」と謙輔は言った。
「ふふ、痛いか痛いか。もっとかけてやるー」そう言って悪役にでもなったように水をかけると、謙輔は反射的に飛び跳ねていた。
「やめろー奏太ー」
「やめませーん」
そんなくだらない茶番を止めたのはやっぱり三好で、いい加減にしなさい、と謙輔の膝が動かないようにとがっちりつかんだのだった。
ついでに私も軽くお叱りを受け、「さっさと砂落としちゃって」と促され、いてえー、と叫ぶ謙輔の声を片耳に、水をかけながら洗った。赤黒かった血は次第に薄くなり、砂も落ちていった。
三好の持っていたマキロンで消毒し、大きめのばんそうこうを貼り、ひと段落した。