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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【蛍の欠片】
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 ようやく八巻さんが号令台から降り、グループ通しでまとまり出した。見ると、子ども二人に対し大人三人着くグループが多く見られた。大人が入る訳はこういう意味も込められているようだ。


 私は八巻さんに手招きされ桑原たちと別れた。八巻さんの元にたどり着き、


「ここに入ってください」


 と言われた。小三ぐらいの男の子と女の子が一人ずついた。そして、


「あ」


 上下スポーツメーカーのジャージに身をくるんだ女性がそこにいた。


 その私と三好の空気を察したのか、「あれ、お知り合いでしたか?」と八巻さんが聞くのに対し、三好が、「いえ、家の近くで見かけた程度です」と答えていた。ああ、じゃあちょうどよかったですねえ、なんて溢して八巻さんは近くのグループに混ざっていった。


「じゃあ、お弁当を持ったら各自始めてください」


 その掛け声とともに、子どもたちは一斉に号令台の横に置かれた弁当とペットボトルのお茶めがけて走り出した。素早く取って、「早く行こうよ」「おじさん遅い」なんてことを叫んでいる子も見られた。そのせいか、私のグループの子どもたちはたいそうおしとやかに見えた。


 三好が「走らなくていいの?」なんて聞いても響かない。「後半疲れちゃうから」と二人とも答えていた。いい意味で大人びていた。


 男の名前が、御薗(みその)謙輔(けんすけ)。女の子の名前が、比留間(ひるま)(かえで)。そして、


「飛鳥ちゃん今日もかわいいね」


「そんなことないよー。楓ちゃんもその服可愛い」


 なんて三好は楽しそうに話す訳で。私の立ち位置はと言うと、


「飛鳥ー。この兄ちゃんと知り合いなの?」


「このお兄ちゃんはね、一緒に回ってくれる人なの。謙輔君のパシリかな」


 は? と言うも、謙輔は「パシリだパシリだー」なんて小学生らしくはしゃいで、「お前をリーダーに任命する」なんて言われてしまった。一応自己紹介だけした。


 事あるごとに「奏太ー、面白いことしてー」なんて言ってきて厄介だった。そのたびにやったこともないような物真似をしては似てないと蔑まれ、一発芸をすると沈黙が続いた。だが、数撃てば当たるという言葉通り、いくつかうけたものもあった。そのたびに笑う三人の姿を見ると、こんな人間でも彼らのために笑わせてやろうなんて勘違いしてしまう。次に指名されたときのためにと、私は歩く間ひたすら一発芸のことを考えていた。


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