表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【体裁と生きやすさと自分の感情と】
77/128

 残された野郎三人。何か話そうかなと話題を探していると、不意に桑原が話し出す。


「新平さん」


 首藤に何か言いたいみたいだった。この二人も初対面で、私は二人が話している姿をまだ見ていなかった。もしかすると、これが初めての会話かもしれない。


 改まったように正座をしていた桑原。そんな彼とは対照的に首藤はスマホ片手に寝ころんだままで「ああ?」と呟く。相変わらずで、そんな光景を見て安心した。安心したと思ったら、


「どうすればあんな風に女を手名付けることができるんすか! 教えてください先輩!」


 また何を言い出すかと思えば。さっきまでの女性陣への反逆は何処へ消えてしまったのか不思議でならない。


 首藤は「しらん」と一蹴。「そんなこと言わないで教えてくださいよー」と寝ている首藤の肩をゆっさゆっさしている。(しま)いには、「もしかして先輩、今、女とラインしてるんすか! 見してください!」と首藤のスマホを取り上げる。


「返せ!」


 さすがの首藤も怒りを覚えたのか起き上がって桑原の手に自分の手を伸ばしていた。


「教えてくれたら返しまっす!」


 必死にスマホを取りに行く首藤だが、それを掻い潜るように桑原が腕を振っている。ああ微笑ましい光景。首藤もついに相澤の立ち位置になったのか。感慨深い。傍から眺めて、湯飲みで温かいお茶を飲んでいる気分だった。


 そんなくだらない時間はあっという間に過ぎ去っていった。気づいたらすぐそこに美菜の顔があって、「起きた?」と聞こえた。ぼやけた視界にピントを合わせると、彼女は胸元の(たる)んだTシャツを着ていた。しかしすでに耐性がついているせいか欲情はしなかった。注意すらしなかった私。


 起き上がった私は、美菜の髪が濡れていることに気がつく。周りを見渡すと、相澤がヘアオイルを塗っていた。明日香は顔にペタペタと化粧水を縫っている。


「あがったから入ってきていいよ」と火照った赤みを頬に残し、美菜は言った。


 自分が寝てしまっていたのはわかっていたので、「桑原と首藤はもう行った?」と聞くと、「あんな感じ」と美菜の指さす先に視線を映せば、未だにじゃれ合う二人がいた。


「桑原と首藤、もう仲良くなったんだ」


 私がそう言うと、「でしょ?」と「違う!」の混ざった声音が聞こえた。


 似た者通しなのだろう。きっとそう神様が私に伝えている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ