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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【体裁と生きやすさと自分の感情と】
72/128

 私はとりあえずこの島を散策したかった。民家、森、離れ孤島等。とにかく自分の目で見て確かめてみたかった。この島のどこかにいるであろう千紘のことではない。ただ、いつからか憧れたこんな島に、どっぷりと浸っていたかったのかもしれない。


 美菜を誘おうとした。しかし、


「ごめん。明日香ちゃんたちとの話してるの面白くて」


 見れば、女四人スマホ片手に何やら盛り上がっていた。美菜がこんなに楽しそうに話しているのは珍しかった。私が知らないだけなのかもしれないが、この雰囲気をぶち壊してやるほどの勇気もなければ、美菜への独占欲も多くはない。美菜が楽しいのならそれが一番いいと、私は一人で歩くことにした。


 スマホでFPSを一人黙々とやっている桑原を部屋に残し、私は襖を静かに閉めた。渡り廊下を通って玄関に着く。扉のない靴箱から使い古したサンダルを取り出してつっかける。砂利と玄関のタイルが擦れる音。外に出ると日は落ちかかっていて、辺りは橙に明るく染まっていた。


 足音が一つ増えたような気がして後ろを振り返ると、案の定、人間がそこにいた。


「よう、どこ行くんだ武田」


「ん? ちょっと別件でね」


 近づいてきた首藤は私の隣に並んで、


「本件の間違えだろ」


 そんなことを言った。


 首藤は何か知っているような言い草だった。明日香から聞いたのか、もしくは裕子と関係がまだあって、そこから聞いたのか。どちらにせよ、興味もない見知らぬ孤島に首藤がついてくるなんておかしいとは思っていたが、その理由がわかった気もした。


 少し微笑みたくなる。


「じゃあ一緒に歩こうよ」


 私はそう言って首藤の腕を引いた。


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