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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【体裁と生きやすさと自分の感情と】
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 中に案内してもらった。


「ここに泊まっていただきます」


 そう八巻さんが言って(ふすま)を開いた部屋。畳二十畳ぐらいはある広い和室だった。


「えと、部屋はここしかないと?」


 そう訝しげに私が聞くと、迷わず八巻さんは、


「はい、ここだけです」


 と朗らかに歯切れよく言った。


 よく考えれば来客も来ないような島に、宿があるはずもない。需要がなければ供給などあっても無意味。無収入。


 年に何人かは旅人が訪れるとは聞いたが、多分ホームステイのように島民の家、もしくは八巻さんの家にでも泊まるのだろう。旅人は多分少ない。っていうかほぼいない。我々は多い。それが珍しいの上をいって希少と誇張されたのだろう。


「普段のここは一応集会場として使っています。月に一回島民がここに集まって、意見交換という名義の宴会をやるんですが、今月はもうすでに終わってしまっているので存分に使っていただいて構いません。お手洗いはそこを左に……」


 我々は八巻さんからお手洗いと浴場の話を聞いて、とりあえず和室に取り残された。これから二泊三日の旅が始まる。いやもう始まっている。遊びに来たのではない。遊びという名義の試練だ。先ほどの八巻さんの声が嫌に耳に残っていた。


 皆の目当てともいえるオリエンテーリングは明日行われる。一日中使って島内全域を使って行われる。


 小学生の頃に憧れた秘密基地。テレビ番組として広く親しまれていた大掛かりな鬼ごっこ。壮大な島。適度な人口。


 私の中にまだ幼き心はあるようだった。テレビではなく、小さな学校でもなく、ありふれたもう幾度となく幼少時代に通った学校の校庭でもない。現実にこんな大きな島を使ってゲームをするのだというのだから、興奮しない訳がなかった。


 何度も自分に言い聞かせる。遊びに来たのではないと。


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