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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【体裁と生きやすさと自分の感情と】
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1

 朝にしては比較的早く出た方だったが、何やかんや乗り換えなどで、未明島についたのは夕方になってからのことだった。飛行機でも寝て、船の上でも寝られた首藤は別として、私は船に酔ったせいですこぶる体調が良いという訳ではなかった。


 私に代って明日香と紗江は好調のようで、島の沖の輪郭がはっきりし始めた頃、初対面だった相澤と美菜ともすでに親交を深めたように話している姿が見受けられた。取り残された桑原はというと、


「やばい、紗江さんめっちゃタイプ! 島ついたら一緒に寝ようよ!」


 なんて、相変わらずだった。その誰にでも声を掛けられる精神、本当に心から尊敬する。と私が尊敬している間にも、「あんたさてはスケベね」と一言で見透かした明日香からお叱りを受け、相澤に関しては「その誰にでもナンパする癖どうにかならない訳?」と桑原の背中に蹴りを入れていた。


「いたいっつーの! やめやがれー」と逃げ惑う桑原を船上で追う相澤。


 誰にでも声をかけるとは言っても、誰でもいい訳ではない。理不尽な、と思えども、それは私がここ数か月間感じてきたもどかしさと同じなのだろうなと思った。手が届く距離にいるのに遠い。何もできない。張りつめられた先を急ごうとする心は、そわそわし続ける。


 そのそわそわをやっと発散できるところまでやって来たというのに、私はどうしてこうも体調がすぐれないのだ。待ち望んでいたのだろう? 謝りたいんだろう? 明日香とは口を交わさない。


 この島を出るときには、すべての蟠りが消え去っていればいいなと、単純な期待に乗せて私はこの島に降り立った。


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